SDGs(持続可能な開発目標)を学ぶ高校生が増えている。ESD(持続可能な開発のための教育)を実践する神戸大学附属中等教育学校(兵庫)でも生徒たちが食品ロスの解決に向けて活動している。高校3年間を通じてひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第24回「高校生新聞社賞」を受賞した、同校「ESDフードプロジェクト」のメンバーに活動内容を聞いた。(文・中田宗孝 写真・学校提供)

食品ロスをテーマに課外活動

神戸大学附属中等教育学校(兵庫)では、2016年度から毎年、有志の中高生による課外活動「ESDフードプロジェクト」に取り組んでいる。約1年間にわたり、「食を通して考える持続可能な生活と社会」を学んでいくものだ。

課題解決に向けて話し合い

栗本彩晴さん(6年=高校3年)がプロジェクトリーダーを務めた2020年度は、「食品ロス」をテーマに掲げ、約9カ月にわたり食品ロスの問題解決に向けて活動した。

農林水産省によると、令和元年度は年間570万トンの食べられる食品が捨てられ、日本人一人当たり年間約45キロ。毎日茶碗一杯分のご飯を捨てるのと近い量になり、問題となっている。

経済と環境保護…エビ養殖から考える

月1~3回のペースで生徒同士ミーティングを重ねながら、「講義」「ワークショップ」「グループ別活動」「調理実習」の4つを柱として活動した。

ワークショップで理解を深める

「東南アジアのエビの養殖により、マングローブ林が破壊されていると講義で知りました。エビの養殖は『SDGs』の14と15番『海や陸の豊かさを守ろう』に反している。でも一方で、エビの養殖を仕事にする現地の方にとっては重要な収入源。はたして良くない行いなのか、解決策はあるのかと話し合いました」(栗本さん)

余った食品をNPOへ寄付

グループ別活動では、食品ロスを減らすためのレシピを考えて調理実習した「食品ロス班」、給食の残りを課題として解決策を話し合った「地域の課題班」、家庭で余った食品を必要とする福祉団体や施設に届ける「フードドライブ班」の3グループに分かれた。

フードドライブ班は、余っている食品を在校生から募り、地域のNPO法人に寄付する活動を毎年行っている。

栗本さん(中央)と活動メンバー

「フードドライブに協力してもらうため、校内に毎年掲示するポスターをより内容が伝わるデザインで制作。また、余った食品を集めていた前回の場所からもっと目立つ玄関ロビーに変更しました」(栗本さん)

37キロの食品を寄付

フードドライブに寄付できる食品は、賞味期限が1カ月以上あり未開封、常温で保存できるもの。お米、パスタやそうめんなどの乾麺、インスタント食品、缶詰などが推奨される。フードドライブの活動の中で、栗本さんは一つの疑問が浮かんだという。「お米やパスタって家庭で余ってしまう食品ではないんじゃない? お米やパスタを寄付することが本当に食品ロスの削減に繋がるのかなって」

この問題提起が班内に広がり、メンバーたちと「フードドライブの意義、このまま続けるかどうか」の議論に発展した。「食品ロスは実際にある。食べ物に困っている人もいるのも現状。その共通認識をメンバーの間であらためて確認しました。そして、私たちのプロジェクトのテーマ『食品ロス』を在校生に広く知ってもらうには、フードドライブが最適であるという結論に至りました」

集まった食品たち

昨年2月、校内でフードドライブのための食品を募った。実施前には、お昼の校内放送を利用して、一週間にわたり食品の寄付を呼び掛け、計37キロの食品が在校生たちから寄付された。