ひもを巻き付け、くるくると回転させるヨーヨー。小さいころに遊んだことがある人もいるのではないだろうか。三浦元君(東京・八王子桑志高校1年)は、世界を舞台に活躍する「競技ヨーヨー」のトップ選手だ。競技ヨーヨーは、おもちゃのヨーヨーとは違い、より多彩な技を繰り広げ、観る人を魅了する。世界大会で6連覇を達成した三浦君の日々を教えてもらった。(文・写真 中田宗孝)

鮮やかな手つきでヨーヨーのスゴ技を繰り広げる

小学5年生で世界1位に

友人たちと一緒に、「ハイパーヨーヨー」で遊んだのが小1の頃。

小2で「競技ヨーヨー」と出会い、ヨーヨーのスゴ技の数々を目にした。「こんなかっこいい技を自分もできるようになりたい」と虜になった。

誰が見てもカッコいいと思えるパフォーマンスを追求し続ける競技ヨーヨーの世界チャンピオンの三浦君

本格的に競技ヨーヨーを始めて、わずか3年。小5の時に、米国で行われた競技ヨーヨーの世界一を決める大会「WORLD YO-YO CONTEST 2014」(国際ヨーヨー連盟主催)の3A(ツーハンドストリングトリック)部門で世界1位に輝いた。

高校生となった現在まで同部門6連覇を果たしている。

2個のヨーヨーを自在に操る

競技ヨーヨーの大会で、選手に与えられる演技時間は3分間。選手自ら選んだ音楽に合わせて、さまざまなヨーヨー技を披露し、その技術力や芸術性などがジャッジされる。

三浦君が主戦場とする3A部門は、2個のヨーヨーを操り自由演技(フリースタイル)を行う。

両手でヨーヨーを跳ね上げる技「ツーハンド・イーライ・ホップ」

毎日技のアイデアを考える

演技の内容は自由。どんなヨーヨー技を組み合わせるか、選手自身が技の構成を考える。

三浦君は毎大会、誰もやったことのない新技の開発に力を注ぐ。

「できるだけ多くのオリジナル技を演技構成に取り入れて、観客や審査員を驚かせたい。夏の世界大会を終えると、1年後に向けて技のアイデアを考える毎日です」

ヨーヨーと紐が固定されていない「オフストリングヨーヨー」を難なく巧みに操る三浦君。このヨーヨーを扱う世界大会4A部門でも2018年に世界チャンピオンに輝いている

中学の頃に、数学のテストで出題された図形問題から発想を広げて新技を思いついた経験があるそうだが、アイデアが閃くのはもっぱらヨーヨーの練習中。

「既存の技をミスした時に偶然思いつくことがあります」

音楽とヨーヨーの調和が大事

世界が度肝を抜く新技に加えて、「ヨーヨーと音楽の調和」が自分の持ち味だと語る。

「楽曲中、一定のビートを刻むところでは、ヨーヨーの動きとビートを合わせたり、ブレイクに合わせてヨーヨーを一瞬止めたり。音楽、ヨーヨーの技、自分の動きが一体となるような演技構成を考えています」

日常生活に音楽は欠かせない。洋楽を中心に愛聴しながら大会用の選曲を日頃から行っている

近年は「テーマ」を決めて競技に臨み、表現力に磨きをかける。

「テーマを決めると演技に気持ちが乗る。ステージ上ではテーマに合った表情や歩き方も意識します」

舞台立つ姿は王者の風格

昨年の世界大会では「Heart Beat(心臓の鼓動)」をテーマに掲げた。

テーマに合わせて選んだ、心臓音が挿入された楽曲が流れる中、王者の風格漂う圧巻のパフォーマンスで会場を沸かせた。

「演技中は、ダーク、シリアス、そして『ラスボス感(ボスキャラのような存在感)』を心の中でイメージしていました」

昨年8月の世界大会で演技する三浦君。自ら掲げたテーマ「Heart Beat」に合わせて、心臓の波形がデザインされたTシャツを着用して大舞台に臨んだ(一般社団法人日本ヨーヨー連盟提供)

世界チャンピオンゆえ、常に他の選手から追われる立場だ。周囲の期待、勝利が当たり前の雰囲気といったプレッシャーと対峙しなければならない。

「重圧は、練習量で打ち消すしかない。ただ、無理に緊張をなくそうとは思っていなくて、ある程度、緊張感を持った方が人間味のある演技ができます」

SNSで海外選手と交流

世界的ヨーヨー選手として海外でも知られる三浦君。外国人フォロワーの多い自身のインスタグラム(@hjm_mur)では、写真に英文を添えて投稿。好きな授業も英語だ。

指の上でヨーヨーを回転させる技「フィンガースピン」

「自分の気持ちを英語で伝えられるように、もっと英会話力を身に付けたい」と、語学力のレベルアップが目標だという。

競技ヨーヨーを通じて親しくなる、海外選手との交流は楽しいひととき。LINEなどでメッセージのやりとりをしている。

「相手からのメッセージの中で分からない英単語があったら、意味を調べて返信してるんです」と、大人びた表情をほころばせた。