フットワークに優れ、コートカバー力の広さが持ち味の緑川

緑川大輝(埼玉・埼玉栄3年)は、昨年8月の全国高校総体(インターハイ)バドミントンで、学校対抗とシングルス、ダブルスを制し、3冠に輝いた。毎日のハードな練習で養われたスタミナと、高い意識を持つことで得られたメンタルの成長が栄冠につながった。(文・写真 小野哲史)

苦しくても諦めない

バドミントン部の練習は実戦形式が多く、丸1日練習する日は5試合近くこなす。最後にノック(レシーブ練習)やランニングが加わることもある。「毎日ハードでしたが、それで体力がつきました」

高校3年間を振り返ると、技術や体力以上にメンタルが成長したと感じている。「以前は苦しくて諦めたり、ラリーで逃げたりしていました。でも『きつくてもシャトルを返す』という意識で練習するようになってから、試合で自信を持ってプレーできるようになりました」

顧問の大屋貴司監督も「我慢強くなってミスが減り、この1年で一気に力をつけた」と話す。

「後輩に示しがつかない」

昨夏のインターハイのシングルス決勝で「次世代の日本のエース」とも呼ばれる奈良岡功大(青森・浪岡2年)を下した。小学生時代の初顔合わせで勝って以来、一度も勝てていない相手だったが、「強いけれど学年は1つ下。負けてばかりでは後輩に示しがつかない」と持てる力を全て注ぎ、白熱の消耗戦を制した。「練習量の差で勝てた気がします」

小柄な体格も武器に

自己分析する性格は「マイペースでポジティブ」。肩を痛めてスマッシュを打てなかった時期には「(ネット際に落とす)ドロップや(相手コート奥に返す)クリアの精度を高めたり、フットワークを磨いたりすることができました」と、決してネガティブな気持ちにはならなかった。バドミントンは長身や手足の長い選手が有利とされるが、「運動量でカバーできる」と、小柄な体格もむしろ武器と考えている。

春には早稲田大学へ進学する。「インターカレッジで2連覇しているチームなので3連覇に貢献したい。個人的には1年目は新人賞を取りたい」と意気込み、さらにその先の未来も見据える。「2024年の五輪に出場したい。そのためにはフィジカル強化や運動量のアップが不可欠。全てのレベルを上げないといけません」

Q&A 燃え尽きるまで全力

Q 好きな食べ物や音楽はある?

A 何でも食べますが、強いて挙げれば抹茶味のものが好きです。

Q 好きな音楽や漫画は?

A 試合前に集中するために聴くのは「back number」。好きな漫画は王道ですが「ONE PIECE」や「ドラゴンボール」です。

Q 競技前に緊張しないようにやっていることはある?

A 「俺ならできる」と自分に暗示をかけます。団体戦ならみんなを盛り上げつつ、自分も盛り上げていきます。

Q 好きな言葉、座右の銘はある?

A 「夢は近づくと目標になる」。イチロー選手が言っていた言葉です。

みどりかわ・ひろき 2000年5月17日、埼玉県生まれ。埼玉栄中卒。両親や姉の影響で小学1年からバドミントンを始める。中学3 年の全国中学校大会で団体戦優勝、シングルス準優勝。17年全日本ジュニア選手権ダブルス優勝。18年世界ジュニア選手権出場。19年日本B代表。161センチ、56キロ。