芸能人やモデルのスリムな体形に憧れ、もう十分に痩せているのに「痩せなけば」という思いが強すぎる……。過剰なダイエットをしてしまう人は、気付かないまま心が病気になっているのかもしれない。内科医で政策研究大学院大学教授の鈴木眞理先生に、摂食障害の中でも10代が陥りやすい「神経性やせ症」について、その症状や対策を聞いた。 (青木美帆)

死亡率が高い心の病気

摂食障害とは、異常に痩せているのにもかかわらず、本人に自覚のない「神経性やせ症」、むちゃ食いと嘔おう吐とを繰り返す「神経性過食症」、むちゃ食いを繰り返してしまう「過食性障害」などを指す心の病気だ。

摂食障害の中でも、神経性やせ症は10代の患者が多く、その約9割が女性。人間関係や進路、勉強、部活動の悩みなどがきっかけで過剰な減量に陥る形で、発症する。

体重のわずかな増加を恐れて食事を拒否したり吐いたりし、体重が標準体重の80%以下に落ち込んだ結果、低体温、疲労感、不眠、無月経などから重症の合併症を引き起こし、死に至ることも。「神経性やせ症の日本での死亡率は6~11%。10代の死亡率としても異常に高く、精神疾患では最も高い数値です」と鈴木先生は話す。

患者自身は気が付かない

神経性やせ症は自分で気付き、対処できる病気なのか。答えは残念ながらNOだ。なぜなら患者は体重が30㌔台を割ってもなお「自分は太っている」と思い込んでいるためだ。「患者の大半は『私は病気じゃない』と主張するので、周りの人間が気付かなければなりません。あなたの友人に変化があったら(下欄参照)、まず保健室の先生やスクールカウンセラーなどに相談してみてください」

悩みの解決法を見つける

とはいえ、自分の身を神経性やせ症から守る方法はある。大切なのは悩みに対してダイエットという手段をとらないことだ。「患者さんは、カロリー計算をしたり体重について考えていたりする間は『つらいことを考えずに済む』ことに気付き、行動をエスカレートさせていきます。勉強がうまくいかないなら学校や塾の先生に相談する。失恋したら友達に話を聞いてもらったり、楽しめる活動をしたりしてみる。悩みに対して適切な対処(コーピングスキル)を見つけることが大切です」

 
 
鈴木眞理先生
内科医。政策研究大学院大学教授。
日本摂食障害協会の理事を務める。