公開中の青春映画「クジラのいた夏」で主役を演じる野村周平さん。自身の青春は神戸で過ごした高校時代。恋愛と、始めたばかりの俳優業に全力で挑む高校生だった。(文・中田宗孝、写真・幡原裕治)

男同士の友情に憧れ

映画は、高校時代から続く仲良し男子4人組の姿を描く。友人と別れ、上京を決意する主人公チューヤを演じた野村さんは、本作への自信をのぞかせる。
「作品の中で描かれる男同士の熱い友情には『こんな関係いいなぁ』と憧れます。あまり自分の出演作を褒めることはないのですが、ストーリーも面白いし、見応えある青春映画だと思います」
撮影中は、監督も出演者もリアリティーの追求にこだわり、何度もリハーサルを重ねた。
「何げないせりふでも、友達同士の自然な会話のやりとりになるよう心掛けました」

ほろ苦い恋愛体験

劇中でチューヤは甘酸っぱい恋愛を体験するが、野村さん自身も同じような体験をしている。

「高校1年の時、付き合っている彼女がいました。でも高校2年で、芸能界の仕事の都合で僕が神戸から東京へ行くことになり遠距離恋愛に。遠く離れていても大丈夫だと思っていたんですけど、しばらくすると気持ちが離れて別れてしまいました……。ほろ苦い経験ですが、青春でしたね」

負け犬にはなりたくない

東京で始まった新しい高校生活と芸能活動。しかし、仕事で壁にぶつかり、一人悩む日々が続いた。
 「仕事が少ない時期があり、誰にも相談せずに葛藤していました。役者を辞めて地元に帰ることも考えましたが、それじゃ負け犬だなって」
 それまで、卒業後の進路を決め切れないでいた野村さんは、大学に進学せず、役者の仕事一本で頑張ろうと覚悟を決めた。すると仕事の依頼が増えていった。
 「真剣に仕事と向き合うことで、自分の芝居への姿勢や撮影現場での態度が変わり、周りが徐々に認めてくれたのだと思います」
 夢に向かって頑張る高校生にはこんなメッセージを送る。
 「やりたいことが見つかったら失敗を恐れずにチャレンジして。一度や二度の失敗、『時間を無駄にしちゃったな』ってことがあってもいいんじゃないかな。深く考えないで、まずはやってみてほしいですね。やりたいことが見つからないという人? 大丈夫、探せば必ず見つかります!」

のむら・しゅうへい 1993年11月14日、兵庫県生まれ。17歳で俳優活動を開始。NHK朝の連続ドラマ「梅ちゃん先生」など出演作多数。7月からはフジテレビ系ドラマ「若者たち」に出演。秋には主演映画「日々ロック」の公開を控える。

 

 

クジラのいた夏

地方都市に暮らす青年チューヤ(野村周平)は、ただ毎日を何となく生きていたが、ある日東京行きを決心する。幼なじみのジェイ(松島庄汰)、ギズモ(浜尾京介)、町田(松岡卓弥)は、そんな彼のために送別会を開くのだが……。

シネマート新宿・心斎橋ほかで全国公開中。
 配給:ユナイテッド エンタテインメント。

(高校生新聞 2014年5月号から)