俳優の水上恒司さんに高校生記者がインタビュー。役者を目指す動機になったという高校の演劇部での体験に加え、「戦争」を伝えるために今作で意識したポイントを聞きました。(取材・海老原佑唯=高校生記者、構成・中田宗孝、写真・西村満)

高校演劇がきっかけで役者の道へ

―水上さんは高校時代、打ち込んでいた野球部を引退後、学校の先生から誘われて演劇部に入部。その演技経験が俳優の道を志すきっかけだとうかがいました。

はい。僕が芝居に興味を持ったのは高校演劇でした。そこで芝居をする楽しさを見つけたんです。芝居の楽しさ……そうですね、「人によって態度を変える」のって良くないことだと言われているじゃないですか。高校生記者の方、どう思いますか? 人によって態度を変える人って。

―……ちょっとダメなんじゃないかなと思います。

そう思うでしょ。僕は、人によって態度が変わるのは当然だと思っているんです。みなさんも先生と友だちとでは、きっと接し方は同じではないはず。ほかにも、誰かの前では見栄を張ってみたり、気に入られようとしたり。まるで芝居をしているかのように。

こんな、人には多面的な見方があることを僕が知ったのは、高校演劇での演技を通じてだったんです。この体験が、僕が芝居にのめり込む、自分ではない誰かを演じる楽しさになっていきました。

水上恒司さん(ヘアメーク:Kohey(HAKU)、スタイリスト:川崎剛史)

―演劇部での自身の演技はどうでしたか?

当時は、「せりふをかまないようにしなきゃ」とか、「他の部員が次に言うせりふを覚えておかなきゃ」という意識が前面に出ていた芝居しかできませんでした。

今は芝居の見せ方、(撮影カメラの前や舞台上で)自分がどう立ちふるまうべきなのかの意識を持てるようになりました。高校生のころに比べれば、その部分は成長したとは思いますが、それはプロの役者としては、ごく当たり前のことです。

特攻隊員を熱演、思いは胸に秘め

―戦時中の日本を舞台にした映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」で水上さんは、特攻隊員の彰を演じています。

僕は長崎で高校生活を送り、広島には親族が暮らしています。そして、高3のときに所属した演劇部では、長崎原爆をテーマにした作品で特攻隊員役として人生で初めての芝居を経験したんです。こんな経緯から、僕自身、「戦争」に深く触れる機会がありました。

ですが、今作で彰を演じるうえでは僕個人の戦争に対する思いは不要で、芝居の中では、自分が戦争や特攻隊に抱いていた感情を一切出さないようにしています。この点には苦しんだかも知れません。

 

―なぜ戦争への個人的な思いをなくす考えに至ったのですか。

作品と役に入り込むためなんです。今作は戦争を描いた映画作品ではあるのですが、彰と百合、ふたりの主人公によるラブストーリーです。彼らのドラマを丁寧に表現していくことで、戦争の残酷さがより際立つようになっています。

僕個人として戦争に対して思っていることはもちろんあるけれど、それとは別の表現方法で今作は「戦争」を伝えています。

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高校生新聞編集部LINE公式アカウントとお友達になってから、「水上恒司さん色紙希望」と明記の上、「学校名・学年・性別・記事の感想」をメッセージに書いて送ってね。応募資格は高校生・中学生に限ります。12月31日締切。当選者には編集部からメッセージでお知らせします。

みずかみ・こうし 1999年5月12日生まれ、福岡県出身。2018年、ドラマ「中学聖日記」で俳優デビュー。22年に俳優名義を「水上恒司」へと改名。主な出演作は、NHK大河ドラマ「青天を衝け」、ドラマ「真夏のシンデレラ」、映画「死刑にいたる病」「OUT」ほか。現在、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」に出演中

映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」

(C)2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

高校3年生の百合(福原遥)は、自分の卒業後の進路も投げやりに考えるほど、学校生活や母親・幸恵(中嶋朋子)との関係にいら立ちを募らせていた。そんなある日、母親と衝突して家を飛び出した百合は、近所の防空壕(ごう)跡で一夜を過ごす。やがて彼女が目覚めると、そこは1945年6月の戦時中の日本だった。そこで出会った彰(水上恒司)に何度も助けられ恋をするが、彼は特攻隊員として程なくして戦地に飛び立つ運命だった―。12月8日(金)から全国公開。配給:松竹。

(C)2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会