高校生の「就きたい職業」としていつも上位に挙がるのが「公務員」だ。「民間企業に比べて安定している」といったイメージがあるようだが、一口に公務員と言ってもさまざまな職種がある。仕事内容などをよく理解した上で、進路選択の参考にしてほしい。

「公務員」って何?

 公務員は、民間企業のように会社の利益を追求するのではなく、国民や公共の利益のために働く。このため、給与は税金によってまかなわれている。

 公務員にはさまざまな服務義務があり、労働者に保障されているストライキをする権利なども制限されている。その代わり法律によって身分が保障されており、例えば、民間企業の従業員のように業績によって給与が大きく変動したり、解雇されたりするケースはほとんどない。また、給与や昇進、仕事内容などに関しては男女平等とされている。出産・育児休業制度なども充実しているため、女性にとって仕事と家庭を両立しやすい環境だといえそうだ。

公務員の仕事は?

 公務員は、国の職員として働く「国家公務員」と、地方公共団体の職員として働く「地方公務員」に分けられる。さらに、それぞれには下記のような「特別職」と「一般職」がある。ここでは「一般職」について説明しよう。

【国家公務員】
 主に、財務省や外務省といった中央省庁や関連機関などの職員として働く。国の経済や外交、地球環境、税金、安全などさまざまな分野に関する政策の立案をはじめ、スケールの大きな仕事に携わることができる。また、国税専門官や労働基準監督官、航空管制官なども国家公務員に含まれる。

【地方公務員】
 都道府県や市町村、東京特別区(23区)などの職員として働く。役所での窓口対応をはじめ、地域の福祉、教育、環境、産業振興、まちづくりなど仕事は多岐にわたる。地域の人々と直接触れ合う職務が多いのが特徴だ。消防官や警察官、公立学校の教職員なども地方公務員に含まれる。

 なお、国家公務員・地方公務員ともに、事務などを担当する行政系職員だけでなく、電気、機械、土木、建築といった技術系職員の採用もある。また、心理や福祉などの知識を生かせる職種もある。どの職種においても欠かせないのが、「人々や社会の役に立ちたい」という使命感だ。単に待遇面だけに目を向けるのではなく、まずは「自分はどんな仕事をして国や地域に貢献したいのか」を考えてほしい。
 

公務員の主な仕事

 


公務員になるには?

 公務員にはさまざまな職種があるため、どの学部からでも目指すことができるといえる。公務員になるには、「公務員試験」に合格するのが一般的なルートだ。

 国家公務員試験には、主に各省庁の幹部候補を採用する「総合職試験」、事務処理等の業務に従事する職員を採用する「一般職試験」、国税専門官のような専門性の高い職種のための「専門職試験」がある。地方公務員試験は、「大学卒業程度」「短大卒業程度」「高校卒業程度」という区分で試験を実施しているケースが多い。試験の名称は地方公共団体によって異なり、「上級」「中級」「初級」などとしているところもある。なお、国家公務員・地方公務員の各試験には、学歴や年齢などの受験資格が設けられている。

 試験の内容は、「大学卒業程度」の場合だと、1次試験で「教養(基礎能力)試験」と志望する職種で必要な知識を問う「専門試験」、2次試験で「論文試験」と「面接試験」などが行われることが多いようだ。

 また、消防官や警察官になるには、それぞれ「消防官採用試験」「警察官採用試験」に合格する必要がある。公立学校の教員になるには、教員免許を取得した後に、各都道府県や政令指定都市が実施する「教員採用試験」に合格しなければならない。
 

公務員の数と種類(平成27年度)

 


大学のサポート体制は?

 大学によっては、公務員を目指す学生のために支援体制を充実させているところもある。カリキュラムに「公務員コース」を設けたり、課外講座として公務員試験対策講座を開催したりして、学生を積極的にサポートしている。特定の試験区分や職種に関する対策を重点的に行っている大学もあるので、ホームページなどで確認してみよう。