バレーボールの全日本高校選手権(春高バレー)で2大会ぶりに頂点に立った就実(岡山)。3連覇を逃した昨年の悔しさも力に、ノーシードから勝ち上がった。全員がチームのために、と奮闘する中、誰よりもトスを呼び、仲間と自分を信じて打つ。たくましいエース・福村心優美(こゆみ・2年)の姿があった。(文・田中夕子、写真・中村博之)

「全部トスを持ってきて!」

「絶対決める、全部トスを持ってきて!」

福村は、セッターの河本菜々子(3年)を呼び続けた。就実の背番号「4」を背負うプライドと、エースとして何が何でもチームを勝たせるという強い意志。迷わず河本も福村に託し、福村は腕を振り抜いた。

2年生エースとして躍動した福村

「信じた場所へ、腕を振り抜くだけ。思い切って打ちます」

「これぞエース」圧倒的な実力見せる

決勝進出を決めた時から公言していたように、高い打点から放つ渾身(こんしん)の一打は大会屈指の高さを誇る下北沢成徳のブロックに対しても屈せず、次々と決まった。優勝までのポイントが1点、また1点と近づいていく。就実が2対0とリードして迎えた終盤には、後衛の福村がフライングレシーブでつないだボールを自ら呼び、バックアタックで決める「これぞエース!」とうならせるようなシーンもあった。

できるなら優勝を決める最後の1点も自分で決めたい思いもあったが、下北沢成徳のスパイクがアウトになり25対21、3対0の完勝で2大会ぶりの優勝を決めると、コートの中央で跳びはねながら福村は全身で喜びを表現した。

「おめでとう!!」

スタンドの応援席最前列には、去年卒業したOGたちの姿も見えて、大歓声の中でもしっかり声が聞こえた。

「スパイクを打つ前にも先輩方の声がスタンドから聞こえてきて、追い上げられても『ここ1回!』という声にも励まされた。先輩方に絶対恩返しをする、そのためにも結果を出す、と去年の悔しさを全部ぶつけたので、勝って恩返しすることができて本当によかったです」

コロナに奪われた大会出場

2023年1月、福村にとって最初の大会になるはずだった春高は、コートに立つこともかなわなかった。試合直前にコロナ陽性判定が出た部員が出たため、大会規定により延期を余儀なくされたのだ。

チームとして体調管理には万全の注意を払い、事前に検査も受けてきた。陽性判定を受けた後も独自でPCR検査をして、陰性であることを証明したにも関わらず、大会出場は認められず、ただ悔し涙を流す3年生たちの姿を、心が潰れそうな思いで見ることしかできなかった。

攻撃だけでなく守備面でも勝利に貢献した

誰が悪いわけでもない。だがぶつけようのない悔しさは消えない。だからこそ―。エースナンバーを背負う福村は、2年生で迎えた自身にとって初めての春高に格別の思いを持って臨んだ。

国体3位という好成績を残しながらも、春高はノーシード。初戦でいきなり数多くの優勝を誇る強豪の東九州龍谷(大分)と対戦する激戦ブロックに入った。

だが、目指す全国制覇をかなえるためには、すべてのチームを倒さなければ頂点に立てない。初戦からエースとして奮闘し、準々決勝では国体準優勝の金蘭会(大阪)も撃破。準決勝の誠英(山口)戦も両チーム最多の49本のスパイクを打ち20得点をたたき出す活躍を見せた。

激戦ブロックで覚醒「どんどん持ってこい」

まさにエースと呼ぶにふさわしい姿だが、最初から強かったわけではない。むしろ大会を迎えるまでは不安のほうが多かった、と福村は言う。

「練習でも怒られることが多かったし、実際に自分でも課題ばかりでした。『決められなかったらどうしよう』と思ったし、怖さもありました」

払拭されたのは大会に入ってから。激戦ブロックに入ったことが、むしろ福村を覚醒させ、初戦を終えた後には「やればできる、と今までに感じたことのない気持ちになれた」と振り返る。

「どんどん持ってこい、と思えるようになったし、(準々決勝の)金蘭会戦も打てば全部決まると自信を持ってプレーできました。(決勝は)私の見せ場。苦しい場面が増えると思うけれど、だからこそ逃げずに勝負したいです」

エースの苦悩を乗り越えて

試合を重ねるごとにたくましくなる姿を、誰より心強く感じていたのがセッターの河本だ。

「相手のブロックが高いとシャットされてしまうことも多いし、止められるとスパイカーは嫌なイメージが残る。でも、だからこそ『もう1回行くよ』と声をかける。『勝負するんだよ』と後押しするように、打ちやすいトスを上げることだけ自分は意識して、上げれば本当に全部決めてくれた。頼もしかったです」

昨年はコートに立つこともできないまま春高を終えた悔しさを優勝で晴らした就実

コートに入れば学年は関係ないとはいえ、「エース」の重圧を一番近くで見ているのもセッター。大会前に苦悩する福村の姿を、河本も見てきた。

「1年生の時からずっとエースと言われて、本当にしんどかったと思うし、いろんな悩みを抱えながら頑張っているのを見てきました。でもその中ですごく頑張って、最後まで自分のトスを打ち切ってくれたのがすごくうれしかった。『ありがとう』っていう思いでいっぱいです」

「ありがとう」の思いは、福村も同じだ。

「セッターの河本さん、リベロの井上(凜香、3年)さんを日本一のセッター、日本一のリベロにしたかった。1年間、一緒に頑張ってくることができて、支えてもらって、感謝の気持ちしかないです」

悔しさも乗り越え、つかんだ最高のフィナーレ。まだまだ進化を止めることなく、来年もまたここで、よりたくましくなった姿を見せるだろう。

ふくむら・こゆみ 2006年6月29日、東京都生まれ。埼玉・越谷栄進中卒。小学4年からバレーボールを始め、中学3年時には全日本中学バレーボール選手権に初出場し、ベスト8進出。優秀選手賞も獲得した。177センチ。