高校生活最大のイベント・文化祭。明治学院東村山高校(東京)の文化祭、通称「ヘボン祭」では、長らく飲食模擬店やお化け屋敷の出店が禁止されていた。実行委員会は今年、「文化祭を変えたい」と一歩を踏み出した。(文・椎木里咲、写真・学校提供)

「文化祭を変えたい」

11月3日から4日、明治学院東村山高校と併設する中学校の「ヘボン祭」が行われた。コロナ禍を経て4年ぶりに通常開催となった今年は、コロナ前の文化祭ともう一つ変わったことがある。これまで禁止されていた「飲食模擬店」と「お化け屋敷」の企画が登場したのだ。

文化祭は中学生も参加するが、実行委員会は高校生で組織されている。実行委員長を務めた中村陽太さん(2年)によると、飲食企画は約20年前から、お化け屋敷は約5年前から禁止されていたという。

文化祭実行委員会のメンバー

企画以外にも制限があった。例えば段ボールの持ち込み禁止だ。かつて必要以上の段ボールを持ち込み廃棄代がかさんでしまったことがきっかけで、文化祭で使用する段ボールは学校で購入することになっていた。予算には限りがあるため、一企画あたりに割り当てられる段ボールは少なかった。

実行委員の下村涼真さん(3年)によると、そんな状況が、生徒にとっては「生徒主体で運営できていない」という思いに変わったという。いろいろな制限をクリアして、生徒が主体となって文化祭を運営したい。そんな思いが生まれてきた。

「コロナによる制限のない文化祭ができるのは、僕たち3年生にとっても初めてだったんです。だから今までの文化祭よりレベルアップしたものを作りたかったんです」(下村さん)

中村さん(左)と下村さん

生徒を守るために 

しかし文化祭担当の大内俊介先生は、教員としては「生徒主体の文化祭をやらせたくない」という気持ちで制限をかけていたわけではないと話す。「これまではすべての企画団体がトラブルや金銭的な無駄をクリアして参加するような仕組みが整っていなかったんです。『トラブルを避ける』という守りの姿勢が、結果的に生徒にブレーキをかけていたのかもしれません」とこれまでを振り返る。

下村さんを含めた実行委員の3年生4人は、5月に大内先生に相談。文化祭「改革」に向けた道のりが始まった。

20校の文化祭を見学

文化祭のルールを変えるには、教員の会議で先生にプレゼンをし、了承をもらう必要がある。どうやったら認めてもらえるのか。改革を進めるにあたり、まずは他校の文化祭がどうやって運営されているかをリサーチ。8月には他校の生徒会に連絡を取って文化祭の運営について取材を行い、9月には下級生も含めた実行委員会のメンバーで手分けして、約20校の文化祭を見学した。

段ボールは実行委員会で一括管理する仕組みを作った。通常の教育活動で出る段ボールを実行委員が回収・保管。各団体から希望個数を受け付け、配布した。「足りない」と声が上がった団体には二次エントリーを行い、再度配布するという流れだ。

文化祭のパンフレットと企画や運営に関する書類

教員の会議で認めてもらうのに、一番苦労したのは飲食模擬店だという。20年間飲食企画が禁止されていたため、運営のノウハウが同校にはなかったのだ。

「他校に話を聞きに行ったときに、仕入れ数や販売の仕方など、ノウハウを教えてもらいました。保健所にも2~3回通って、衛生面について相談して。一カ所だけだと職員会議に通すときに説得力が低いかなと思って、地元の保健所と東村山の保健所に相談に行きました」(下村さん)

実行委員の努力が実を結び、プレゼンは成功。飲食とお化け屋敷が教員の会議で認められ、今年から復活することになった。実行委員以外の生徒も文化祭を楽しみにしており、「実行委員が頑張っているから頑張れる」という声も届いたという。

20年ぶりの飲食店は売れ行き好調

ついに迎えた当日。飲食模擬店は3年生の1クラスが行い、チュロスを販売した。1日目の午前中に売り切れてしまい、2日目には急遽仕入れ数を増やすほどの大盛況を見せた。

お化け屋敷は高1、高2クラスそれぞれで企画があり、こちらも大盛況。実行委員会が生徒を巻き込むために今年から始めた、優秀な企画を表彰する「ヘボン杯」では1位に輝いた。

文化祭当日の様子。垂れ幕も他校の文化祭を見学し取り入れたものだ

大内先生は「半分くらい、そんな簡単には変わらないだろうと思っていた」という。しかし、「前例のないことをやれるだけやった。文化祭が終わった後も、来年に向けてのことをすぐに話し合っていて、とても感心しました」と話す。

「中には職員会議に通らなかった企画もあるんです。きっと後輩が引き継いでくれる。来年以降も、さらに活発な文化祭にしてほしいです!」(下村さん)

改革は、初めの一歩を踏み出したばかりだ。