演技や歌手活動など、表現者として多方面で活躍する女優の森七菜さんに高校生記者がインタビュー。「今までに一番失敗したことは?」といった、現役高校生から寄せられた悩みを解決するヒントとなる言葉を伝えてくれました。(取材・石川里菜=高校生記者、構成・中田宗孝、写真・幡原裕治)

「前に進んでる」自分認めて

―高校生から質問が寄せられました。「森さんが今までに一番失敗したことはなんですか?」

思うようにお芝居ができなかったときですね。泣かなきゃいけない演技が求められているのに、どんなに集中しても涙がでない……。こんな失敗もありましたね。

森七菜さん(スタイリスト:申谷弘美(Bipost)、ヘアメーク:池田ユリ(éclat))

そんなときに限って、「悲しい気分でもないのに涙なんて流れないよ」なんて、なぜか冷静に考えちゃう自分がいたんです。その日の夜に、現場での悔しさを思い出して、なんで今涙が出るんだよって。

―失敗して落ち込んだとき、どう立ち直っていますか。

以前はオーディションを終えるたびに、その場でうまくできなくって家で泣いていました。

あるとき、落ち込んでばかりの自分のままじゃオーディションの結果は変わらないなと思ったんです。落ち込んだりふさぎ込んだりするってことは、「自分がオーディションに対して一生懸命取り組んでいるからだ」とも考えるようになりました。

そして、まず「自分はちゃんと前に進んでるんだ!」と、自分自身を認めてあげることにしました。たとえ1回のオーディションがダメでも、「後ろに下がっていない!」って、自分を肯定してみる。そう思わないと、モチベーションにつながっていかないんです。「前に進んだよ、頑張っているね」なんて自己肯定するのはなかなか難しいことではあるのですが、そこは認めてあげてもいいかな。そう気持ちをコントロールしながら、少しずつですが、落ち込みがちな心持ちを変化させていきました。

高校生へ「全力で遊んでほしい」

―森さんが出演している映画「君は放課後インソムニア」の撮影は、原作漫画の舞台でもある石川県七尾市を中心に行われていました。撮影場所も役づくりのインスピレーションに生かされましたか。

はい。制服を着て、高校生役の共演者のみなさんと七尾市での時間を長く共有したので、本当の高校生に戻ったような感覚がありました。撮影中は、もう何をしても楽しくて笑える雰囲気ができあがっていて、その空気感は演技にも生きていて、そこにうそがないというか。私たちは「七尾市に生きる、高校生グループ」だったんです。

森七菜さん

―高校生を演じながら、自分の高校時代も思い出すことも?

そうですね。高校生の自分だったり、10代のころの感情がふとよぎったりとか。今、高校生のみなさんは全力で遊んでほしいなと思います。自分が掲げた目標や夢に向かって勉強しなきゃいけないときもたくさんあると思います。それと同じくらい遊んでください。それも高校生の今しかできないことですから。

【取材後記】努力し続ける姿に心打たれた

とても緊張していましたが、取材が始まると森さんの明るい笑顔で緊張がほぐれました。森さんは私が話しているときにも「うんうん」と優しくうなずいてくれたり、質問に対しても真っすぐ私の目を見て話してくれたりしてうれしかったです。

高校生記者の石川里菜さん

森さんはいくら緊張する場面でも、むしろその緊張を受け入れて、「ここまで頑張ってきたのだから大丈夫だ」と言い聞かせ、自分の好きなことを人に披露できるという喜びに変えていくそうです。それは森さんが、そう思えるくらいの大変な努力してきたからこそなのだと思います。自分に自信を持って好きなことを一生懸命努力し続ける大切さを知りました。

取材の中で、森さんの「失敗しても以前よりも自分が前に少しでも進んでいると認めてあげることが大事」という言葉が印象に残っています。

私は部活や勉強で失敗してしまうことが多くありますが、そのときは「失敗してもマイナスになることはなく、むしろプラスになっているんだ」と、失敗を恐れずに前向きに考えられる人になりたいです。(高校生記者・石川里菜=3年)

もり・なな

2001年8月31日生まれ。大分県出身。2016年から芸能活動を始める。2019年に劇場アニメ「天気の子」のヒロインの声を演じて注目を集める。主な出演作は、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」、映画「ライアー×ライアー」。2020年には、歌手デビューを果たし、女優業と並行して活動を続ける。

映画「君は放課後インソムニア」

校舎内の使用されていない天文台で出会った高校生の曲伊咲(森七菜)と中見丸太(がんた)(奥平大兼)。2人は、“不眠症”という共通の悩みを抱える同士だと知る。そして天文台で一緒に睡眠をとるようになるが、秘密の行動を倉敷先生(桜井ユキ)に気づかれてしまう。伊咲と丸太は、自分たちの事情をくんでくれた先生からの提案を受け、廃部していた天文部の復活に向けて動き出す。配給:ポニーキャニオン。6月23日(金)から全国公開

(C)オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会