演技や歌手活動など、表現者として多方面で活躍する女優の森七菜さんに高校生記者がインタビュー。「自分らしくありたい」「緊張をほぐすには?」といった、現役高校生から寄せられた悩みを解決するヒントとなる言葉を伝えてくれました。(取材・石川里菜=高校生記者、構成・中田宗孝、写真・幡原裕治)

無理に自分らしくしなくていい

―高校生たちから寄せられた質問です。「私は自分になかなか自信が持てず、いつも一歩引いて周りに合わせてしまいます。どうしたら自分らしくいられますか」

私は無理をしてまで「自分らしくいよう」としていないかも知れません。私自身、家族や友人たち、仕事関係の方々……その一人ひとりに見せる“自分の顔”がちょっとずつ違うんだろうなと思っています。

森七菜さん(スタイリスト:申谷弘美(Bipost)、ヘアメーク:池田ユリ(éclat))

友だちには言えないことを、家族にだったら言える。その逆で、友だちにしか言えないことだってある。みなさんもそんな感覚ってありませんか。私はこれが本当の自分のような気がしているんです。自分を見失わず、自分らしくいようと強く思いすぎず、自然体のまま人間関係を築いていくのが自分のためでもあると思います。

緊張よりも夢中が勝つ

―続いての質問です。「大きな舞台や出演者オーディションなど緊張するとき、どのように気持ちをほぐしていますか」

私は以前も今もずっと緊張したまま撮影やオーディションに入っちゃうから、自分で言うのもですが、初々しいよね(苦笑)。でも、いざ本番が始まると、緊張を感じないほどお芝居に夢中になっていることが多いんです。

私はお芝居がすごく好き。人前でお芝居ができる喜びも感じています。お芝居が好きという気持ちが、緊張する自分を忘れさせてくれるのだと思います。

―緊張がおさまらない状態から、どうやって自分の力を発揮しているのでしょうか。

大舞台になればなるほど、緊張は必ずしてしまうもの。私の場合は、熱意を持ってお芝居に取り組むことで、緊張よりも夢中のほうが勝っているように思います。

そして、力を発揮するためには自分を信じるしかない。「絶対に成功したい!」「私ならうまくできるんだ!」なんていう強気の心持ちを抱くことも大事にしています。

漫画の切り抜き台本に貼って

―出演する映画「君は放課後インソムニア」は、同名漫画の実写化。同作で不眠症に悩む女子高校生の伊咲を演じています。

私も原作漫画がとても好き。原作で描かれる物語の良さが(出演する実写化)作品への信頼感になった一方で、伊咲というキャラクターを演じる大きなプレッシャーを感じていました。

森七菜さん

原作の伊咲はいろいろなしぐさがとってもキュート。まさに漫画のヒロイン的な。そんな伊咲になりきるために、原作漫画の伊咲のページを印刷した切り抜きを台本に貼っていました。このやり方は、先輩の役者の方がやられていて、いいなと思って私も取り入れたんです。台本をめくれば、そこにいつも伊咲がいるような感覚になれます。

―監督とはどんな話し合いを重ねたのでしょうか。

監督には、「役という基盤が守られていれば自由に動いていい」と感じられる現場の雰囲気を作っていただきました。私自身、役を作り込んで撮影に入るというよりも、撮影現場で演じる役として感じることにもっとも神経を使うタイプなんです。

現場で「これやってみるか」「こうして欲しいんだな」と、反射的に浮かんだことを演技で実践してみる。役者たちに演技を任せてくれる、そんな監督の姿勢がうれしかったです。

もり・なな

2001年8月31日生まれ。大分県出身。2016年から芸能活動を始める。2019年に劇場アニメ「天気の子」のヒロインの声を演じて注目を集める。主な出演作は、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」、映画「ライアー×ライアー」。2020年には、歌手デビューを果たし、女優業と並行して活動を続ける。

映画「君は放課後インソムニア」

校舎内の使用されていない天文台で出会った高校生の曲伊咲(森七菜)と中見丸太(がんた)(奥平大兼)。2人は、“不眠症”という共通の悩みを抱える同士だと知る。そして天文台で一緒に睡眠をとるようになるが、秘密の行動を倉敷先生(桜井ユキ)に気づかれてしまう。伊咲と丸太は、自分たちの事情をくんでくれた先生からの提案を受け、廃部していた天文部の復活に向けて動き出す。配給:ポニーキャニオン。6月23日(金)から全国公開

(C)オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会