国際協力特別賞

努力宣言

横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 2年 塚本 仁子

広告プランナーになることが夢である私は、新しい広告をチェックする習慣がある。特に記憶に残っているのが、ある全国展開された雑貨店のバレンタインのプロモーション企画である。企画の動画内で「うちのカレシマジカッコよくない?」「わかるぅ~超イイ人そうだよね~」とい う女子同士の会話がなされ、気まずい沈黙のあと「ズッ友!」と大きく文字が表示される。視聴者からは「女性は陰湿だという偏見が読み取れる」といった意見が寄せられた。私も同感だが、 企業にとっては想定外の事態だったと思う。企業の目的と視聴者の受け取り方に溝があるように感じた。

偏見は差別につながる。この広告は女性差別を助長する原因の一つだったかもしれない。

そのあとも相次ぐ様々な広告の炎上を見ていて、私には将来、誰も傷つけないが人の心に留まる広告を作る、そして偏見やそこから生まれた差別をこの世からなくすという大きな目標ができ た。

何かできることはないかと、AIG 高校生外交官プログラムという、アメリカに留学して社会問題や国際社会について学ぶ活動に参加した。そこで、ステレオタイプが偏見を生み、その偏見が差別を生むことを学んだ。私の目標の達成にはステレオタイプの撤廃が欠かせないと思った。大人の確立した考えを改めさせることは難しいが、ステレオタイプが形成される前の幼い子供たちが、偏りのない価値観を育める環境を作る手助けは私にもできるはずだ。例えば、幼児が初めに触れるおもちゃや絵本なら学生でも作れるだけでなく、幼稚園に寄付することができる。そう考えてプログラムのグループメンバーに提案した。そして、プログラム内でのプレゼンをきっかけに支援していただけることが決まり、多様性に重きを置いた絵本を作り始めることができた。多様性に重きを置く、と言っても既存のものをマイノリティが主人公の話に作り変えるわけではない。登場人物全員が多様性に溢れているというだけの絵本である。そうすれば、幼児の世界に多様性を自然と取り入れることができる。

幼少期の経験はその後の人生に大きく影響を及ぼすため、おもちゃや絵本には多様性が欠かせないと考える。例えばバービー人形は、種類が多いにもかかわらず一律して同じ細身の体型だった。影響力が強く、写真を見るだけで女児に痩せ願望が生まれることが論文で明らかになった。 その後、バービー人形はふくよかなものや低身長のもの、車いすに乗っているものなどバラエティに富んだラインナップに変貌を遂げた。ただ、ステレオタイプの一つである子供のボディイメージがそれによって軌道修正がなされたかと言えば、そうは言えない。

こうした世界的な企業の取り組みから、偏見や差別といった社会問題が地域を問わず世界中で起きていること、さらには、企業や多くの人々が多様性の受容を促そうとしていることがわかる。けれども、なかなか差別や偏見、ステレオタイプは根絶されない。

それは広告が炎上してしまう理由と同じで情報は発信者がイメージする通りに効果が得られることは少ない。なぜなら、発信者と受信者では考え方にギャップがあり、発信者は受信者の気持ちを完全に想像することはできないからだ。それぞれに異なったものさしとそれに準じた世界が見えている。

しかし、私たちの住む実際の世界は同じ地球で、見えている世界は異なっていても、傷つけないためにはお互いに考え方をすり合わせるしかない。自分にはない考え方でモノの受け取り方を想像し続けるという果てしない努力が必要だが差別や偏見による人々の苦しみをなくすためには、欠かせないことである。

私は絵本作りや広告制作など、生涯を通して相手の考えを想像し続ける。いつか私の作ったモノが差別や偏見のない世界を作ることに影響すると信じている。