今年で13回目を迎える多摩大学主催の 「高校生小論文・スピーチコンテスト」の応募が 7/1(木)から始まりました。コロナショックにともない、「コロナショックを超えてどう生きるか」「私の志」の2テーマからの選択式で、受験小論文の多くよりは長めの1600字で小論文・スピーチを募集しています。ここでは、長年このコンテストの審査に携わる柚木利志先生に小論文を書くときのコツを聞きました。

どんなコンテストですか?

今年で13回目を迎える多摩大学主催のコンテストです。コロナショックにともない、「コロナショックを超えてどう生きるか」と「私の志」の2テーマから選択式になりました。

字数は1600字と、受験小論文の多くより少し長めの字数制限で小論文を書きます。例年女子の応募が多い傾向です。

全国から集まった作品から選び抜かれた受賞作品は優れた作品ばかりで、その作品集を読むだけで受験小論文の良い勉強になります。同年代の高校生の考えに触れ、刺激を受ける良いチャンスですので、ぜひチャレンジしてみて下さい。

興味を持ったら詳しい募集要項を見てみよう 小論文部門はこちら

自分の得意な方でチャレンジできる スピーチ部門はこちら

※スピーチ部門は、小論文部門の応募規定と同様のスピーチ原稿が必要です。

昨年同様2つのテーマがありますが、全体的にどちらの方が多い印象ですか?

「コロナショックを超えてどう生きるか」のテーマの方が多い印象です。

昨年度の応募作品は、「コロナ」が全体の約3分の2、「私の志」が約3分の1でした。それだけコロナが高校生にも大きな影響を持つ問題であったということでしょう。

応募の少なかった「私の志」のテーマですが、優れた作品の割合が高かった印象です。「志」は自分自身の問題なので、熱意ある作品が集まりました。「コロナ」もより当事者意識を持って論じることで、さらによい論が展開できると思います。

小論文を書くときにおちいりがちなNGポイントを教えてください

 

NGポイント1:字数が短すぎる 

指定字数の半分以下の分量の作品を時々見ますが、どんな小論文の名人でも、その短さで力のある論は展開できません。説得力ある論は、多くの言葉を尽くして初めて生まれます。

実際に書いてみると1600字の指定字数が意外と短いことにすぐ気づきます。ギリギリまで書きましょう。受験小論文でも指定字数の9割以上書くことが暗黙の了解なのです。

NGポイント2:小論文ではなく作文になっている

「コロナ」のテーマでは、コロナの影響で体験した出来事を並べたり、「志」のテーマでは、部活動の出来事を並べる作品が、「作文型」の典型です。

出来事だけでなく、出来事を通して考えたこと、自分の主張したいこと、すなわち「論」を作品の中心としましょう。受験小論文でも自分の考えを論じることが大切で、そこが絶対の評価ポイントなのです。

NGポイント3:論点がたくさんある

「私の志は3つある」「コロナで私が感じたことは4つだ」。こうした書き方をしている作品はほぼアウトです。論点は一つにしぼりましょう。

受験小論文も含めてこれが小論文の鉄則です。論点を並べると一つ一つに割ける字数が少なくなり、浅い内容になります。一つの論点にしぼり詳しく掘り下げて論じている作品には勝てないのです。

NGポイント4:調べもの作品になっている

今はネットの発達で、調べものには便利な時代になりました。しかしその結果、調べたことを並べるだけの「借り物小論文」「コピー小論文」が増えています。

大事なのは自分の論を書くことです。上手い下手以上に、自分の頭で考えられているかどうかが価値を持ちます。恐れずに、自分が本当に考えたことを書きましょう。

NGポイント5:社会性がない

自分の身の回りのことだけを書いて、社会との結びつきの弱い作品もNGです。受験小論文でも、社会についてどう考えているかという視点は必ず見られています。

「コロナ」ならば、コロナによりどんな社会的問題が明らかになってきたのか、「志」ならば、自分の志や目指す職業は、どのように社会に貢献できるのか、考えてみましょう。

評価の高い小論文に共通することを教えてください

「コロナショックを超えてどう生きるか」と「私の志」で、評価の高い作品も傾向が異なります。

「コロナ」の場合、「鋭さ」がカギとなります。コロナに揺れる世界のあり方、コロナ後の世界の行く末をどう見て、考え、論じるか。切れ味ある鋭さが必要です。

一方、「私の志」の場合、「熱意」がカギとなります。読み手が思わず感動してしまうような情熱を伴った志をどう伝えるか。心を震えさせる熱意が必要です。

優れた作品との出会いは、私たち選考者にとっても喜びです。今年もその出会いを楽しみにしています。