審査委員長

鎌倉女子大学 家政学部長
吉田 啓子 教授
 

最優秀賞 奈良県・奈良女子大学附属中等教育学校
荻野 瑛穂さん(中高一貫 4年生)

「リモート授業で頑張っている姉」へ「栄養満点!メンチ”喝”」弁当

パンデミックで始まった今年、不安や困惑の中で社会も私たちの生活も一変しました。思うように外出できず、生活に制約のある毎日を過ごす中で、身近な人とじっくり向き合う時間ができたために、普段と違った視点が持てたという作品が多かったと思います。

 この作品は、リモート授業という高いハードルに対抗しようと、迫力あるメンチカツが目に飛び込んできます。そして、お姉さんに対する愛情たっぷりの激励が、見た瞬間に伝わってきます。家にあるポピュラーな食材を用いて、健康に気を使いつつも、激辛のきんぴらやハートの玉子焼きを添えるなど、ユーモアーがたっぷりです。励ましあい、競い合う仲の良い姉妹の日常生活が目に見えるようです。喝を入れ、単調で重い空気や疲れを一気に吹き飛ばし、苦境を楽しみながら乗り越えようと、元気で明るく若さが溢れる素晴らしい作品になりました。お姉さんの感想を是非聞きたいものですね。

最終審査会の様子
 
 

鎌倉女子大学 家政学部

髙橋 ひとみ 教授

 

優秀賞 東京・東洋高等学校
町田 美央莉さん(1年)  

「新郎新婦」へ「夫婦円満」弁当

優秀賞受賞おめでとうございます。とても夢のあるかわいらしい作品だと思います。

最初に目を引くのは白くて丸いサンドイッチで、ウエディングケーキを表現しているのですね。サンドイッチとして考えると形が斬新で、上にのったハートがアクセントになっています。その回りに花型のゆで卵やハート形の紅白かまぼこがあり、目にも楽しいです。

お節料理が代表的な例ですが、日本では使用する食材に意味を持たせることがあります。「ツルを巻き、実を結ぶことから、夫婦円満と商売繫盛を叶える」ということからぶどう、他にもえびや枝豆など選んだ食材それぞれに新郎新婦への願いが込められており、喜びや幸せを願う想いがあふれているのを感じるすてきなお弁当です。

そして将来の夢を込めた作品とのこと、あたたかな想像力豊かな町田さんの夢を応援しています。

審査委員のみなさま
 
 

鎌倉女子大学 家政学部

山口 真由 講師


 

優秀賞 愛知県立岩津高等学校
兵藤 緋南さん(3年)

「人見知りな新入生の子」へ「一緒に食べよ…!!お結び」弁当

お弁当のおかずはどれも奇をてらっていないものの、工夫されたメニューで彩どりよく、見ているだけで食欲がそそります。入学したばかりの高校生活、早く誰かと仲良くなりたい、という思いがこのお弁当から伝わってきます。特に全体のアクセントにもなっているおむすびの三ツ葉の結び目に、作り手の強い願いが感じられました。人見知りだとなかなか自分から話しかけられませんが、お弁当の蓋を開けた瞬間、「おいしそうだね!」とお隣さんが思わず声をかけてくれそうなお弁当。これだけおいしそうなお弁当であれば、人見知りでも「一緒に食べよう!」と声をかける勇気が出てきそうです。おむすび、鶏つくね、卵焼きは2つずつあるので、お互いのおかずを交換して同じ味を楽しむのもいいでしょう。この食事をきっかけに楽しい高校生活が始まる予感がします。このお弁当は人と人とを結びつける物語を感じました。

特別審査委員の阿部了さん・阿部直美さん
 
 

特別審査委員

阿部 了 (写真家)

ANA機内誌「翼の王国」人気No.1エッセイ「おべんとうの時間」著者。NHK「サラメシ」にてお弁当ハンターとして出演中

特別審査委員賞 広島県立広高等学校
沖田 あまね さん(1年生)
 

「日本食が好きな外国人」へ「お手軽ぜいたくナスの蒲焼き」弁当

豆腐ステーキやイワシの蒲焼など代用料理がある中、ナスをウナギの蒲焼にみたてて弁当にした。ナスの蒲焼を食べたり作った事はあったのか、この弁当を誰が食べたのか。その辺りは「沖田さんどうなんですか」と聞きたい所ではある。しかしナスという手軽な食材で、贅沢な気分になってもらえる弁当を作って、外国人に食べてもらう。ウナギではなくナスで日本食を好きになってもらいたい。良いおもてなしじゃないですか。私も食べてみたくなり、作り方を想像してみました。ナスの白身のところ、皮の黒っぽさがウナギに思えてきた。タレも染み込みやすそうである。山椒とも相性が良さそうだ。あー気分はウナギ、いやいやナスの蒲焼である。沖田さんも日本食が好きな外国人や、ウナギの蒲焼を想いながらナスの蒲焼を作ったのでしょう。弁当の面白さは作る事や、食べる事だけでは無いと思います。そんなことを感じるいい弁当でした。また沖田さんの作った弁当を見てみたいです。

 
 

特別審査委員

阿部 直美(ライター)

ANA機内誌「翼の王国」人気No.1エッセイ「おべんとうの時間」著者。近著「おべんとうの時間がきらいだった」

特別審査委員賞 広島県立五日市高等学校
西村 帆七海さん(1年生)

「母」へ 「いつもの」弁当

初めて作った弁当、ということがストレートに伝わってきました。献立はきっと、普段お母様が作ってくれるものですね。たこさんの足と唐揚げが弁当箱からはみ出しているのは、ご愛敬。蓋は閉まりましたか? 弁当は、品数が多すぎても詰めきれないし、詰め方も難しい。お母様の言う「いつもの弁当」は、普段通りの何でもない弁当、というニュアンスのようでいて、いつもいつも作っているからこそ、のものですよね。2時間かかってどっと疲れが出た帆七海さんは、そのことに気づいたのですね。このお弁当甲子園では、「美味しかったと喜ばれて良かったです」という内容が多いのですが、今回お母様のダメ出しが効いていました。醤油が足りない、砂糖が足りない。そうなのです。いつもの味、は簡単には再現できません。正直なお母様と、その言葉を素直に受け入れる帆七海さんがいいです。素敵な親子関係が見えてきました。次はぜひ、お母様をあっと言わせる弁当を!