日々の生活に欠かせないスマホ。だけど、月末に近づくと「ギガ不足」になり、通信が遅くなる人は多いのでは? テレビCMなどでも見かけるようになった「5G(ファイブジー)」が、スマホ生活にどう影響を与えるのか、東海大学工学部電気電子工学科の稲森真美子先生に話を聞いた。

動画視聴時のイライラが解消

5Gとは、「第5世代移動通信システム」のこと。現在使われている4Gと比べ、約20倍に高速化・大容量化されます。しかも4Gの約100倍ともいえるほどの大量の機器をインターネットに接続できるので、データ通信の待ち時間もほとんどなくなります。

携帯電話各社ではインフラの整備も進めており、5Gでは通信制限制度をなくすことも検討されています。これまで多くの人が悩んでいた「ギガ不足」から解放され、データ通信量を気にせず自由に通信できる日が来るかもしれません。

そのときには、外出先でYouTubeなどの動画を視聴するときに感じるイライラはまず感じなくなるでしょう。

これだけでは、「世の中を変える」とは思わない人もいるかもしれません。ところが、「多接続と低遅延」の実現によるメリットは、ものすごく大きいのです。

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5Gのすごさはもっとある!

例えば自動車の自動運転。安全に運転するためには自動車が常にネットにつながりながら、周囲を走る車と交信し、かつ走っている位置や適切な速度を判断しながら道路を走行しなければなりません。高速道路を走っているときに、通信が途切れたら大事故になってしまいます。また、医療でも遠隔地同士をネットでつないで行う遠隔手術の研究が進んでいますが、そうした技術の実現に欠かせないのが5Gなのです。

5Gが普及すると、この技術が身近な生活も変わっていきます。

さらに「IoT」という言葉も聞いたことがあると思います。これは、さまざまなものがインターネットにつながること。5Gが導入されると「IoT」がさらに加速し、実用化が進むことが予想されます。「意識しなくても情報が手元に届く時代」になるのです。

家から外出しようとすると「今から雨が降るよ」と玄関においたスピーカーから情報が飛んできたり、よく行くお店の前を通るとお得情報がイヤホンや時計内蔵のモニターに表示されたり、駅についたら次の電車の空いている号車の情報が送られてきたり……。自分の生活に情報が先回りして送られてくる、そんな近未来の世界が実現します。

 

 

通信技術の未来を担う研究とは?

このように革新している通信技術だからこそ、研究すべきことはまだまだたくさんあります。その一つが、通信の制御技術です。5G時代にはこれまで以上に大量の情報が同時に飛び交うようになる分、どの情報をどの回線で送受信するかを適切に管理することが大切になります。私の研究室では、AI(人工知能)を使って通信を制御しようと考えています。スマホのない生活が考えられないように、通信技術は人々の生活には欠かせない存在になっています。だからこそ、安全性はとても重要です。

通信網への負荷が少なく安定した通信を実現するため、端末自身が判断して自動で制御できる。私たちはそんなシステムづくりを目指しています。

 

★今回お話を伺った先生/稲森真美子先生(東海大学工学部電気電子工学科)

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