人工透析に関する研究で患者の負担を軽減

山下教授は、三輪泰之助教とともに研究室で血液浄化に関する研究を指導する。血液浄化学は、腎臓の働きに代わる人工透析に必要な学問だ。腎臓のもっとも重要な役割は、尿を作って体外に排出すること。健康な人は好きなものを食べて飲んでも、血液中の老廃物や不要物を余分な水分とともに尿として排出することができる。しかし腎臓に疾患があると、それらが体に溜まり、放置すれば死に至る。そのため、血液浄化によって体内の老廃物を人工的に除去する透析が必要なのだ。

まだ臨床工学技士の資格を持たない学生たちは患者からデータを取る臨床研究が行え
ないため、研究室では実験研究をしている。例えば、人工透析に使う穿刺針(せんししん)(以下、針)の太さや長さ、形状の違いで血液流量がどのように変化するのか。形状などによっては血液の再循環(透析してきれいになった血液を再び流して透析してしまうこと)を起こす可能性があるという。

「また、透析装置が1分間に200mlの血液を流す設定でも、実際には誤差が出て200mlは流れないんです。針の形状など条件によって変わってしまう。設定に、より近づけられる針の太さや形状がわかれば、透析時間の短縮など患者にとってよりよい治療ができるようになるでしょう」

臨床工学技士を目指す人に、三輪助教は「患者さんのことを一番に考えられること。その上で、工学に興味がある人に目指してほしい」と語ってくれた。山下教授は「医師や看護師のように治療に携われるのが臨床工学技士です。また、医療機器専門の国家資格は世界中で日本のみ。研究のトップランナーです。ぜひ、オープンキャンパスに来て、臨床工学技士という仕事を正確に知って、本学を目指してください」とメッセージをくれた。

先輩に聞く

保健医療学部臨床工学科4年 金子夏実さん(東京・大妻中野高等学校出身)

左から山下教授、金子さん、三輪助教

医療と工学の両方を学べて、医療職の中でも資格を持っている人が少ない仕事を探し、「臨床工学技士」を知りました。入学してから分かったのは、遊ぶ暇がないほど忙しいこと。1年次は毎日あるテストをつらいと思っていましたが、今は学んだ内容が知識として定着し、がんばってきてよかったと感じています。

研究室では、人工透析で針を1本しか使わない「シングルニードル透析法」について研究しています。通常の透析では針を2本刺しますが、1本で行うことができれば、患者さんの負担を減らすことができるからです。さらに追究したいので、卒業後は大学院を目指しています。大学を偏差値で選ぶ人が多いと思いますが、実習内容や設備、教員数など見てもらえれば、本気で臨床工学技士を目指す人にとって、埼玉医科大学が最適な環境だと分かってもらえるはずです。