外務大臣賞
「オークン」カンボジアが教えてくれたこと
佐久長聖高等学校2年 斉藤 舞

 

私はこの夏、「トビタテ!留学 JAPAN」の留学支援を受けカンボジアへ行きボランティア留学をしてきた。カンボジアの農村部での公衆衛生活動を通じて、途上国の恵まれない地 域の人々の暮らしと医療の実情を知ることが留学の目的だ。

私には目標がある。将来JICAで途上国経験を積み、どんな環境にも適応して働ける国際協 力のできる医師になることだ。それを叶えるためには、日本のような最先端な医療だけで なく、医療貧国と言われる国の医療の現状を知り、広い視野を身につけることが大切だと 考えている。カンボジアは約40年前の内戦の影響で、東南アジアで最も医療の発展が遅れ ている国である。そのことが、私が留学先にカンボジアを選んだ大きな理由だ。

カンボジアでは、現地の子供達や大人の方々に健康診断や訪問診療、そして健康啓発活 動をした。健康啓発活動は主に手洗いのレクチャーや指導、泥と虫だらけのトイレの掃除 等を行った。衝撃的だった事は、小学校の飲み水用の水道から出てくる水が茶色く濁って おり、子供達は喜んでその水を使用していたことだ。元々途上国では綺麗な水が無いこと は知っていたものの、日本の澄んだ水に見慣れている私はその事実を簡単には受け入れら れなかった。また子供達の健康診断を行った際、彼らの手足の細さ、固くこびり付いた汚 れで真っ黒になっている爪や耳、ハエが集まっている傷跡、そして髪の毛の周りに沢山の コバエが飛んでいるのを見て思わず目を疑ってしまった。これが途上国の現実なのかと。信じられなかった。気付くと私は一心にその汚れをとり傷跡を消毒し、髪にしらみがつかないよう丁寧にブラッシングをしていた。子供達がこの先ずっと健康で衛生的に暮らせることを願うのみだった。綺麗な水も空気もなく、医療設備も学習環境も整っておらず、空の色も違う。全てが日本とは違っていた。途上国の子供達が食料不足で苦しんでいるまさにその時に、安全で物が溢れ、恵まれすぎている国日本で、今まで大した悩みもなく無頓着に日々を過ごしてきた自分がとても情けなくなった。私は、この二週間で自分が行ったことが誰かの役に立ったのかは分からない。だが診療後や活動後、地元の人が私に微笑みかけ、オークンと言ってくれた時の笑顔や、子供達がとびっきりの笑顔で駆け寄りハグしてくれた姿は幸せに満ちていた。その姿を見て私は、たとえ一時的ではあったとしても現地の人の役に立つ事ができ、やらないよりはやってよかったと心から思った。と同時に、このボランティアがこの先も続いていけばどんなに素晴らしいことだろうかと思った。私 は、世界の幸せのために私たちができることは、こうしたボランティアのバトンを繋げていくことだと思う。もし私達のようなボランティアがいなければ現地の状況はいつまでも変わることなく、飢餓や感染症に苦しみ幸せな人生は送れないかもしれないが、自分達が絶えず現地に入り活動し続けることでその国は徐々に発展し、人々は幸せに近づくことができるだろう。そのバトンを繋げていくために、私はまず学校で途上国についての理解を深めてもらえるよう、活動報告会や講演会を企画している。帰国後、周りの人と接してみて、途上国に対する無関心さと、無知ゆえに起こる極端な偏見に愕然とし、まず身近な人の意識から変えないと、世界全体が幸せになる日は当分訪れないだろうと感じたからだ。 私には、カンボジアで見た人々の笑顔が忘れられない。「ボランティアのバトンを繋ぐ」という強い使命感を持ち、人々の意識を変えるため前に進んでいきたい。

私が、国際協力への関心を持つきっかけを与えてくれた、カンボジアの明るい未来のため に。そして、笑顔の絶えない幸せな世界にするために。