10月21日(日)、澄み切った秋晴れの空の下、鎌倉女子大学で「第7回 お弁当甲子園」の表彰式が行われた。表彰式当日に集まったのは、全国199校5,831作品の頂点に立った最優秀賞をはじめとする優秀賞、入選の受賞者や学校関係者たちだ。保護者や先生に見守られ、表彰式に臨んだ。
開会の挨拶では、審査委員長・吉田啓子教授(同学家政学部長)が「説明の文字だけでなく、お弁当の写真からも思いが伝わってきました。家庭科の宿題で課されたとしても、食や家族って何だろう、食材はどこから来ているのだろうなど、そういう考えの広がりをもってくれたらと思います」と高校生たちに語りかけた。
表彰状授与の後、最優秀賞の三枝千春さん(静岡県立伊豆総合高校3年)の作品についての発表を行った。三枝さんは亡くなった父への弁当を、地元の食材や父親の好物で彩った。亡き父との思い出も詰めたお弁当だ。「父のために栄養満点のお弁当を考えました」という三枝さんの発表に会場からは大きな拍手がわいた。
その後行われた、審査委員講評では、高橋ひとみ准教授が「伝えたいことがどう表現されているかを見ました」と審査のポイントについて語り、一人ひとりの作品を講評した。最優秀賞の三枝さんには「納得するまで何度も試作を繰り返す様子が思い浮かんだ」とコメント。
続けて優秀賞にもふれる。長い海外赴任から戻った父へのお弁当を作った山下笑さん(愛知・南山国際高校2年)には、「彩りが美しく、味を想像するとワクワクする」。もう一人の優秀賞はアメリカ在住のため、この日は欠席だったが、やはり父へのお弁当。上位3名が父への感謝を込めたお弁当という結果だった。
また、「お弁当ハンター」として知られる写真家・阿部了氏も特別審査委員として講評を行った。「もっとストーリーがほしかった」と話し、受賞者に「お弁当は誰が食べた?」など突っ込んだ質問をしながら感想を述べる。ユーモアたっぷりのトークに会場は笑顔に包まれた。
途中、欠席した優秀賞の広瀬エリカさん(アメリカ・Aragon High School1年)からのメッセージが代読された。「食べ物と写真を撮ることが好きで、友人たちとインスタグラムに食べ物の写真を投稿することがある。写真のコンテストにも挑戦したりしており、日本にも何かコンテストがないか調べてお弁当甲子園を見つけた」「卵焼きが難しかったけれど、母の作る料理を真似た」などのコメントからは、インスタ好きの今どきの高校生の一面と、家庭の味を大切にする古風な一面が見られた。
講評で各審査委員もふれていたが、今回は栄養バランスにこだわる応募が目立った。しかし、栄養をとるための食事というだけでなく、お弁当というツールを使った大切な人とのコミュニケーションやそこから生まれる物語もまた審査では求められているようだった。 料理は「作る」ことで気づくことも多い。受賞者をはじめ、応募した高校生には、これを機に「食」やそれを食べる「人」への興味を広げてほしい。