高校時代にJICAエッセイコンテストで入賞した笹森宥穂さんは、その後推薦入試で東京大学に入学。現在は積極的に活躍の場を広げている。そんな笹森さんにJICAエッセイコンテストを振り返ってもらった。

エッセイコンテスト応募までの経緯

JICAエッセイコンテストに応募したのは、高校2年生の時。その年の夏に、高校生海外派遣プログラムでカンボジアの小中学校を訪れた経験や感じたことをまとめました。エッセイの内容はカンボジア訪問時に感じた次のような出来事です。

カンボジアで訪れたある教育支援団体が、偶然にも中学時代に取り組んでいた「書き損じハガキ回収」による奨学金の送り先だったんです。「活動の成果をみられる」と楽しみにしていましたが、団体の方と一緒に現地の中学校を訪れ、自分の甘さを痛感しました。支援は全く足りていなかったのです。

自分がしていたことは独りよがりだったのではないか? 帰国後も、わだかまりを抱えていましたが、そんな気持ちを払拭し、前を向くことに役立ったのが、JICAのエッセイでした。帰国後、現地でとったノートをぼんやりと見返していた時に、その団体の方の言葉が目に入ったんです。それが「教育は投資である」という言葉でした。それをきっかけにさまざまな感情や思いを整理し、エッセイとしてアウトプットしたことは、自分にとって大きな意味があったと思います。

高校2年のときカンボジアの小学校を訪問

結果、コンテストでは最優秀賞をいただき、さらに副賞として、1週間のベトナム海外研修にも参加。JICAの活動先を訪問し、日本の開発援助の取り組みを自分の目で見ることもできました。海外研修で感じたのは、たとえ大規模な支援でも、それを行っているのは1人の人間であり、1対1の人間関係が集まって国家同士の関係が成り立っているということ。これらの経験はすべて「自分はここからどう歩むのか」を考えるきっかけになったのだと思います。

東大初の推薦入試にチャレンジ→見事合格

東京大学の推薦入試では、海外派遣プログラムで考えたこと、その後リサーチしたことをアピールして合格しました。自分の経験をエッセイとしてまとめたこと、そのエッセイが最優秀賞を受賞したことが自信となり、僕を支えてくれたことは間違いありません。 

チャンスはつかもうとしなければないも同然。高校生の皆さんには、手当たり次第に情報を集め、これはというものがあれば一歩踏み出してみることをオススメします。それが「やりたいこと」につながることもあるのではないでしょうか。

東大を訪問したシンガポールの学生と交流
【笹森さんの過去・現在・未来】

〈過去〉

 進学校に通っていたこともあり、1年生のときから東京大学を目指して真面目に勉強していました。ただしカンボジアに行くまで、志望学部はコロコロ変わりました。

〈現在〉

 教育学部の通常のカリキュラムのほか、教育行政の第一人者として有名な教授の大学院生向けのゼミに参加させてもらったり、学術発表会に学生の立場で関わったりすることで、自分の進むべき道を開拓。国際学生カンファレンスの運営にも関わっています。実をいうと大学入学後は、なかなか海外に行く機会がなかったのですが、あるとき母に「あなたらしくない」と言われたことで一念発起。昨年は他大学の友人が所属している比較社会学のゼミの旅行に同行させてもらう形でスウェーデンに行きました。

大学入学後も海外へ(スウェーデン)

〈現在〉

大学院に進み、将来は国際的な教育政策にかかわる仕事ができたらと考えています。