今回の受賞作品に対し、審査委員から寄せられた講評コメントをご紹介。作品の魅力や選出の理由など、審査の視点から語られるポイントをチェックしよう。

 

 
審査委員の皆さま
 
 
 
 
 
 

審査委員長

 鎌倉女子大学 家政学部長
 大石 美佳 教授

 

最優秀賞

酒井 しい さん(愛知県立岩津高等学校3年)
「ムスリムの友人へ JAPANのハラール弁当」

 酒井しいさん 最優秀賞おめでとうございます。
 まず、ちらりと写っているビニール袋に目が留まり、富士山のおにぎり、日の出を模した梅干し、三食のお団子、紅葉、梅の花型のにんじん——日本的な美を感じる完成されたお弁当とビニール袋のギャップに興味を惹かれました。
 マレーシアにインターンで長期滞在したこと、温かい人たちとの素敵な出会いがあったこと、文化の違いに衝撃を受けたこと、お弁当を通じて、酒井さんの高校3年生の春のワクワクドキドキを追体験させていただきました。
 日本の街中でもハラールフード対応のお店やメニューをみかけることが増えてきましたが、料理をして提供するとなると、ハラールに対する正しい知識と理解が必要になります。酒井さんはスラヤさんのことを想い、たくさん調べ、勉強したのだろうなと思いました。
 日本の食文化とマレーシアの食文化が手をつないだ、おいしそうなお弁当。スラヤさんにTerima kasih!の気持ちとともに届く日が訪れますように。

 

 
 
 
 

特別審査委員

阿部 了 (写真家)
ANA機内誌「翼の王国」人気エッセイ「おべんとうの時間」著者。NHK「サラメシ」にてお弁当ハンターとして出演。

 

特別審査委員賞

瀬戸 のどか さん(東京都・東洋英和女学院高等部2年)
「戦後80年。幼なじみを失い元気のない93歳のじぃじへ
 じぃじの大好物笑顔いっぱい長生き弁当」

 「小学生の思い出甘い大学芋(戦中)」、「お婆ちゃまの絶品きんぴら牛蒡(10代)」、「戦後初びっくり激うま牛肉玉ねぎカレー炒め(20代)」、「じぃじ大好物の薬味〜」と献立名が続く感じがとても良いのだ。いいぞいいぞと何度も読み返す。それだけで口の中がどうしようも無くなって来た。そして「93歳のじぃじ」さんの歩まれたそれぞれの時代を想像しながら考えさせられる。「ばぁばにリサーチ」とあるが、エピソードがいろいろ出て来て、知っている様で知らなかったことを聞き逃さずちゃんと書き記したのではないでしょうか。とても重要な事です。貴重な記録でいつか振り返ってみる時があると思います。祖母と孫のとても大切な時間。その様子を想像してしまう事の出来る作品になりました。弁当の写真の笑顔はおじいちゃんとおばあちゃんでしょうか、のどかさんでしょうか?なんだか私も嬉しくなってニヤけてしまってます。のどかさんの素直さや家族の優しさを感じるいい弁当ですね。元気を頂きました。ごちそうさまです。

 

 
 
 
 

特別審査委員

阿部 直美(ライター)
ANA機内誌「翼の王国」人気エッセイ「おべんとうの時間」著者。近著「おべんとうの時間がきらいだった」(岩波書店)

特別審査員賞

平木 一佳 さん(静岡県立焼津中央高等学校1年)
「母へ カツ丼弁当」

 「私の母は父が再婚した人です」で始まる文章に、どきっとしました。どういう展開が待っているんだろう。まずはお弁当の写真を眺めると、カツ丼がどーん。さらに、もう一つの弁当箱にはから揚げやウィンナー。ん? ボリューム満点。お父さんへじゃなくてお母さんへの弁当ですよね。唐揚げの隣にトンカツを入れるのではなくて、わざわざ手間をかけて卵を絡めたカツ丼にしたのはなぜかな? 文章を最後まで読んで、胸が熱くなりました。
 後にお母さんになる人との初対面の日、彼女が買ってきてくれたのがカツ丼弁当だったのですね。当時中学生だった一佳さんが食べてくれるか、いや、自分のことを受け入れてくれるのか、お母さんは胸をどきどきさせながらお弁当を持って行ったでしょうし、受け取った一佳さんも揺れる思いがあったはずです。あの日の「カツ丼」がその後もずっと一佳さんの心に残っていたこと、そして今、母に作ってあげたいと思う気持ちにぐっときました。もうひとつの弁当箱の中身は、カツ丼にプラスアルファしたくなる今の一佳さんの気持ちを表しているのですね。そこもいいな、と思いました。

 

 
 
 
 

審査委員

 鎌倉女子大学 家政学部
 髙橋 ひとみ 教授

 

優秀賞

白井 晴菜 さん(広島県立広島皆実高等学校3年)
「家族へ 我が家弁当」

 美しい盛りつけやテーブルコーディネートも含め、工夫を凝らしたすてきなお弁当です。
 おかずはパイナップルのベーコン巻、ビスケットの天ぷらとちょっと個性的です。それが家庭の味となり、おばあさまからお母さまが継承し、次の世代であるあなたが調理する。今日では、おいしい調理済み食品や加工食品が手軽に手に入るようになり、それだけで食事を済ませることもできるようになりました。しかし、そのような便利さだけでは満たされない「家庭の味」を大切にしている点こそが、このお弁当のすばらしさだと思います。
 食は文化です。文化は守り、伝えるという意志がなければ消えていきます。家庭の味に込められた思い出や絆を大切にしているあなたは、この味を未来へと受け継いでいかれることでしょう。若い世代に家庭の味が伝承されていくことを期待しています。

優秀賞

井田 仙太郎 さん(群馬県立沼田高等学校1年)
「家族へ いつもありがとう弁当」

 6つのお弁当が並ぶ、圧巻の作品です。よく見ると、弁当箱の大きさも、入っているおかずも1つひとつ異なっています。コンテストは「思いをお弁当の形で伝えること」がテーマとなっていますが、かわいらしい顔のおにぎりが3つ、3人の妹さんのためのお弁当であることが伝わってきます。おにぎりの大きさも、3つともそれぞれ違いますね。また、プチトマトが苦手な人には、代わりにカニかまぼこで彩りを加えるなど、家族一人ひとりに合わせた工夫が見られます。毎日一緒に暮らし、好きなものも嫌いなものも知り尽くしている人だからこそできる、家族への愛情があふれたお弁当だと感じました。
 また、計画を立て、朝5時から2時間30分かけてお弁当作りに取り組んだとのこと、本当によく頑張りました。実際に手を動かして調理することは、とても貴重な経験ですし、調理を繰り返すことで料理の段取りが良くなっていくことも研究からわかっています。ぜひ、これからもお弁当作りにチャレンジしてください。

 

 
 
 
 

審査委員

 鎌倉女子大学 家政学部
 山口 真由 准教授
 

優秀賞

向井 真凛 さん(青森県立八戸高等学校1年)
「整頓が大好きな妹へ きっちり整頓弁当」

 妹さんの「整理整頓好き」という個性を、お弁当という形で表現したお姉さんの発想力と優しさに心を打たれました。きっちり区分けされたオムライスは、まるで棚に整然とファイルが並んでいるようで、美しくまとまっています。
 お弁当を美しく盛り付けるのは難しいこともあり、妹さんが納得するように仕上げるのは大変だったのではないでしょうか。
 特に、“お弁当”という食の場面と“整理整頓”という日常の行動を結びつけたアイデアが見事で、単にきれいに詰めるだけでなく、「妹が喜ぶ姿を思い浮かべながら整える」という思いやりが、一つひとつの配置や彩りにまで感じられます。
 整理整頓の美しさとお弁当の丁寧さが見事に融合した、見ても食べても幸せになれる素敵な作品です。

優秀賞

松本 藤乃 さん(愛知県立安城高等学校3年)
「海上保安官の兄へ 好きなものだけ弁当」

 文頭にお兄さんを「世界一かっこいい」と心から尊敬し、お弁当甲子園という全国に発信される場で堂々とその深い愛情を綴っていることに、まず感動しました。
 受験勉強という厳しい時期を懸命に頑張るお兄さんに、好きなものだけを詰めたお弁当でエールを送る――その優しさと、言葉では表しきれない応援の気持ちは、お弁当を通してお兄さんに伝わったことでしょう。
 そして、その甲斐あってお兄さんは成果を実らせ、今は誇り高き海上保安官として活躍されているのも、あなたの支えがあってこそだと思います。
 お弁当は単なる食事ではなく、作り手の思いや人柄がにじみ出ます。相手を思いやるあなたの温かい心と、それを形にする行動力は、何よりも尊い財産です。
 今度はどなたの気合を注入されるのでしょうか。あなたの志を、心から応援しています!

 

 

最終審査会の様子

 

今年もたくさんのご応募、誠にありがとうございました。
来年も開催を予定しております。素敵なお弁当に出会えることを楽しみにしております。