千葉工業大学の「高度技術者育成プログラム」は、1辺が10㎝、重量約1㎏の立方体サイズからなる「キューブサット」(超小型衛星)を学生が自らつくり、宇宙空間での運用までに関わるという学部不問のプロジェクトだ。2021年に始まり、現在は5期目となる学生も活動を始めている。5号機MOMIJIのプロジェクトマネージャーを務める学生に話を聞いた。

海外の学生との共同作業も
高度技術者育成プログラムでは、2021年から2030年までに最大9機の超小型衛星を製造し、打ち上げ、運用するというプロジェクトで、僕らはちょうど折り返しを終えた5号機に関わっています。
今回は、これまでの4号機までと異なり、いくつかの変更点が加わっています。
その1つが、ブータンとの共同開発。千葉工業大学がブータンと縁があり、そこの学生たちが用意したパーツを搭載し、ブータン学生のミッションも同時に行うというものです。ほかにも、学内のさまざまな研究室から要望をもらったり、外部企業からの要望も加えたりと、4号機までは3~4つだったミッションが、今回は合計で10に増えているんです。さらにこれまでは、1学年でメンバーをそろえて取り組んでいたのを、5期生は2学年が混在する形に。僕ら現3年生と2年生が混じったメンバー構成になっています。
ちょうど一昨日まで、ブータンの学生たちが日本に来て、初期モデルであるBBM(ブレッド・ボードモデル※)のインテグレーション試験を実施していました。彼らが用意してきた基盤と僕らが用意している基盤を合体させて、正しく機能が確立されているかを確認するという作業です。
- ※設計の実現性を確認するために制作・試験されるモデル
卒業までに「運用」を経験したい
これがとても大変でした。そもそも僕らもブータンの学生たちも来る前に単体試験は実施しています。それが組み合わせてみたら、なぜか全然動かない。
そこでインテグレーションチームを組んで、彼らが帰国するまでの数日間で成功を目指すという体制を作りました。そこからは毎朝9:30には集合し、夜まで続けていました。原因をどんどん分解して、ホワイトペーパーに書き出して。手当たり次第に、同時進行で全部試していきました。
最後の2日間は、それだけでは足りなくて、1日終わったら車に積んで、先輩の家で次の日までの準備をするということもやりました。
何とかなったのは本当に土壇場で、ブータン学生が帰国する1日前。そして飛び立つ当日には、プラスアルファのおまけのテストもしました。
最初のうちは、「6日あるからなんとかなるだろう」と思っていましたが、残り3日になってからは焦ってしまい、気が気じゃなかったです。
彼らが来日するより以前から、週に1回のミーティングをオンラインで実施していましたし、日本に来た当日は、日本科学未来館でやっている「深宇宙展」や秋葉原に連れて行って、そのなかでコミュニケーションを取ったり、話したりして、お互いの感覚をつかんでいました。今思うとこれが良かったのかもしれません。
ようやくBBMが終わりましたが、この先にはさらにEM(エンジニアリング・モデル)、FM(フライト・モデル)まで作る必要があり、まだまだ先は長いです。
今のところ打ち上げ予定は、来年2026年の11月。当初は2027年3月だったので、僕ら3年生は卒業までに打ち上げが間に合わないという可能性がありました。衛星の運用までを行うということがこのプロジェクトの趣旨なので、スケジュールを前倒しにして、今の3年生メンバーがちゃんと運用を経験して卒業していけることを目指しています。