東京農業大学の厚木キャンパスで実施された「厚木キャンパスを食べる朝ごはん」は、農学部の学生に朝食を100円で提供する期間限定イベントだ。発案者である馬場正先生(農学部長)に、今回のプロジェクトの経緯や学生への思いを聞いた。
学生の1食あたり費用は「???円」未満
大学生を対象にした、とある食生活アンケートを見ると、1食あたりの費用が300円以下なんです。ペットボトルの飲み物を買ったら、あとはおにぎり1個買えるかどうかという額ですよね。さらに、それが毎年減っているという話も聞いて。農大でもなんとかしたいという思いはずっとありました。
農学部は一人暮らしの学生が多いですし、昨今、食品の値上げも進んでいます。こうしたことが重なって、今回のプロジェクトを思いついたんです。
12/12(火)~15(金)に実施された「レストランけやき」の100円朝食の模様はこちらでチェック!
学生・教員・職員が一つになれた
第1弾として実施された「レストランけやき」では、鯖の味噌煮定食・豚生姜焼き定食・カレーの3種類(メインの肉と魚は日替わりメニュー)を100食限定で提供。すべてのメニューが「豚汁」付きで、具材の大根とにんじんはキャンパス内で栽培したものを使用した。
初日はオープン前に行列ができるほどの盛況となり、1時間足らずで販売終了となった。
実は、最初のアイデアは私が出したのですが、その話をしたところ厚木キャンパスの若手職員のみなさんがチームを作って動き出してくれたんです。キャンパスで栽培した野菜を使うというアイデアも、当初私は知りませんでした。
「自ら動く」が学部のポリシーとなっているのですが、職員たちがまさにそれをやってくれたんです。素晴らしい組織だと思います。
今回のプロジェクトが成功した要因は、彼らの「学生に何かしてあげたい」という気持ちが一番だったと思います。私たち教員は研究室で学生たちと接していますから、自然と濃い関係になります。それと比べると、職員のみなさんは学生一人一人との結びつきは、薄くなりがちなんです。それが今回は、みなさんが自ら率先してプロジェクトを進めてくれたので、学生に対する思いを共有できたのではないかと思います。
また、コロナ禍を経験し、オンラインでも一定程度の教育ができることがわかったことで、「実体のあるキャンパスで学ぶこと」の意味を、私自身考えていたというのもプロジェクト発案の理由の一つでした。これは東京農業大学に限った話ではなく、「キャンパスの意味」を大学教育界全体が問い直されているのです。
それに対する一つの解答が今回のプロジェクトだったと思います。
農学部の強みを再認識
物があることの強み、というのが農学部、厚木キャンパスの特徴です。何かを作る作業って楽しいですよね。野菜を育てるのは、そりゃあ面倒くさいことだってあります。水やりもしなきゃいけない。草取りだってそう。だけど、それらを共同で作業することを学生たちは本当に懸命にやってくれる。効率だけではなく、ちょっと余計なことをするのは、人生にとっては大切だと思うし、そういうところに進んで参加してくれるというのは、うちの学生・教員・職員たちの良さだと思うんです。
自分たちが作った野菜を使った朝食メニューは、ほかでは真似できないこと。それが農学部らしさであり、厚木キャンパスだからできることなんです。自分たちが作ったものが形になって、学生が喜んで食べる様子をみることができました。実現してくれた職員、そして学生に本当に感謝しています。
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★★★教授DATA★★★
東京農業大学 農学部長 馬場正 教授
- 専門はポストハーベスト学研究。収穫した青果物の鮮度保持に関する研究で、作り手と食べる人との関係が希薄になる中で、食べ物が届けられるまでの間にかかる工程に着目。農(生産者)と食(消費者)の懸け橋として、ポストハーベストテクノロジー=収穫後技術を開発している。SDGsにおける食品ロスとの関係で、近年注目が高まる研究となっている。
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提供:東京農業大学