今年で12回目を迎えたお弁当甲子園(主催:鎌倉女子大学)。今回は全国333の高校から11,163作品の応募があり、校数・作品数ともに過去最多となった。最終審査会の結果、上位に入賞した作品を紹介する。

最優秀賞  長谷 波奈さん(東京都・東洋英和女学院高等部3年)

「視覚に障がいのある友人」へ 「全部食べられるバリアフリー弁当」

「幕の内弁当は闇」「プチトマト超ムズ」「おにぎり最強」と全盲の友人は言う。彼女は食べやすさを優先し、丼物やおにぎり、パンが昼食の常連だと気づいた。そこで、目が不自由な方でも安全に食べることができ、栄養バランスの良い「バリアフリー弁当」を編み出した。おかずと一緒に食べられる海苔のカップを使用し、ピックはパスタに代用させ、粉チーズで味わいを引き立てた。誤食のリスクを軽減し、楽しい食事となるよう心がけた。ゴミも出ず、お弁当箱も簡単に洗えるため、環境にも配慮した。このバリアフリー弁当を通じて、目の不自由な方々にとって日常の食事はいかに工夫が必要かを伝えたい。皆の理解が深まれば、友人も喜ぶこと間違いなし!

 

 

【受賞者コメント】

この度は、最優秀賞を受賞することができてとても光栄です。このお弁当のコンセプトは視覚障がい者の友人と一緒に食事をした時に思いつきました。お弁当に入っているバランやカップやピックのようなものは、私たちにとっては便利なものですが、視覚障がい者にとってはとても危険なものです。そのような危険なものを排除し、見た目より安全でかつ食べやすい機能重視のお弁当を作りました。視覚障がい者である友人に今回の受賞を伝えたら自分のことのように喜んでくれました。
視覚障がい者の友人が、普段お弁当を選ぶ時、食べ易さを優先していると聞き「こういうお弁当だったら嬉しい」とアドバイスを受けたことからこのお弁当を作りました。
「食べること」は誰にとっても「大きな楽しみ」であること。
食事のシーンでは見える人が視覚障がい者とコミュニケーションをとって、食事の内容をわかりやすく的確な説明をすることで、お互いに楽しい食事の時間を過ごすことができると思います。友人はお弁当を食べて、食べやすく、中身の説明も分かりやすく、何よりも安全だと言ってくれました。また普段のお弁当では、中身を取り出すのが難しかったり、誤食することがよくあったけれど、このお弁当なら安心して食べられるとも言ってくれました。

 

特別審査員賞  磯﨑 柚那さん(茨城県・水戸女子高等学校2年)

「天国にいる母」へ 「私も作れるようになったよ弁当」

小学校六年生の時、急に天国へ旅立った母。私に作ってくれたお弁当は幼稚園から小学校六年生の運動会までと短い期間でした。その期間で作ってくれたお弁当は一生忘れません。今回、今まで母が作ってくれた味を思い出して作りました。いつも必ず入れてくれた卵焼き、味はだしを入れて少ししょっぱめに。ウインナーも少し塩コショウをして。そしてお弁当に入っていることはありませんでしたが、家でよく作ってくれた、ささみ肉の衣焼きを入れてみました。あとは彩りや栄養を考えてトマトと枝豆を。トマトは幼稚園の頃のお弁当に入っており、当時は苦手でしたが今は大好きな野菜の一つです。実際に食べてもらえないのが悔しいです。ずっと見守ってね。

 

 

【受賞者コメント】

受賞したと知ったとき、自分だと思っておらず、「えっ、私?」と声に出してしまいました。家庭科の課題で行ったお弁当甲子園ですが、どういったものを作ればいいのかと悩みました。今回、5年前に他界した母に向けて作りましたが、作っているときに何度も「母が食べてくれたらな…」と思いました。直接食べること、そして今回賞をいただけたこと、母に伝えることが出来ないのがとても悔しいです。ですが、賞をいただいけたことに感謝しています。ありがとうございました。
夏休みの課題で行いましたが、作るなら、生前に母が作っていた料理を作ってみようと思いました。メニューは少しアレンジして考えました。
いままで、お弁当箱に詰めたことがなく、大きいとフタが閉まらない、ギュウギュウに詰めてしまうと食べるとき大変になるなど、基本的なことかもしれませんが勉強になりました。また、彩りは大切だと思いました。

 

特別審査員賞  阿部 咲也香さん(東京都・広尾学園高等学校1年)

「妄想彼氏」へ 「リア充には負けん!弁当」

家でスマホを見ていたら、友達が彼氏と遊園地デートの投稿をしていました。彼氏のいない私はそれが羨ましくて、なんだかモヤモヤしていました。そんな時、このお弁当甲子園を思い出し、「どうせなら、私の妄想彼氏にお弁当を作ってやろう!」と決意しました。最初はヤケクソでしたが、妄想彼氏の好物を妄想して献立を考えたり、オムライスに字を書く時に、水っぽいケチャップが出て崩れないように、まずラップの上で練習したり、彩りを意識して野菜を詰めたり、チーズをハート型に抜いたりと様々な工夫をしているうちに、いつの間にかモヤモヤした気持ちも忘れ、お弁当作りに熱中していました。16歳の夏、お弁当に込めたこの思い、届け!

 

 

【受賞者コメント】

この度はこのような賞を頂き、本当に感謝しています。何かの運で賞を取れたりしたらいいなぁと思っていたので、受賞が発表された時は、周りの友達や先生にツッコまれて、「えへへ…」という感じでかなり恥ずかしかったですが、やっぱりすごく嬉しかったです。鎌倉女子大学での表彰式で、特別審査委員の阿部了さん、直美さんや、今回一緒に受賞した高校生のみなさんにお会いできるのが楽しみです。
夏休みのコンクール一覧のリストの中でこのお弁当甲子園を見つけて、丁度その時に自分の友達が彼氏とデートしていて羨ましかったので、私も家で妄想の彼氏のためにお弁当を作ってあげようと思いました。
お弁当を詰めるのが意外と大変で、具が痛まないように、きちんと手を洗ったりしました。 

 

優秀賞  大谷 拓人さん(福岡県立東筑高等学校1年)

「ジビエを知らないみんな」へ 「特製ジビエ弁当」

私の母は罠猟師の資格をもち、猪肉や鹿肉の解体をしています。私はジビエは匂いが強く硬いと思っていましたが、母の作るジビエ料理は匂いはなく、とても美味しいです。また、ジビエは高タンパク低カロリーで、栄養価が高いそうです。猪や鹿は害獣として駆除されてしまうけれど、猟師さん達は処理施設で綺麗に精肉して美味しく食べることで、奪った命を無駄にせず、命を繋ぐことを大切にしています。
 しかし、こんなに美味しいジビエですが、実際にはあまり流通していません。もっとみんなにジビエを知って食べてほしいという思いを込めてこの弁当をつくりました。

 

 

【受賞者コメント】

この度は、優秀賞に選出していただき、ありがとうございます。ラグビー部の私には全く関わりのないはずの「甲子園」で賞を頂いたので、今、とても不思議な気持ちです。私は今回、正直に言うと佳作程度の自信がありました。しかし、優秀賞と言われたときには、周りの音が聞こえなくなるほど驚きました。今回、時間をかけて自分なりに頑張って作ったので、少しでも多くの人にジビエの素晴らしい魅力を伝えることができていたら嬉しいです。
母がある日を境にジビエ料理にはまり、それを母が家族や友人に広め、我が家や母の友人たちを中心にジビエブームが起こりました。その中、お弁当甲子園のお知らせが入り、「これこそ、ジビエの魅力を伝えるべきでは?」と考え、今回のお弁当をつくりました。
大変だったことは、どのようなジビエ弁当にするかを考えたことです。「どのようにしたらジビエの魅力が伝わるか」「お弁当の具材には具体的に何を入れるか」を何度も何度も考えました。

 

優秀賞  島田 哲平さん(山形県・日本大学山形高等学校2年)

「将来の彼女」へ 「初めての彩りおにぎり弁当」

彼女居ない歴=年齢の私が少し先走って愛情たっぷりなおにぎり弁当を作りました。私の未来の彼女は食べることが大好きな人だと思ったので、卵焼きにカニカマを入れたり、鶏の照り焼きのタレにしょうがを入れたりして食べごたえがある弁当になっています。栄養バランスや彩りも考えて白ゴマをかけたり、アスパラやほうれん草を肉類と調理したりしました。実は自分一人で料理するのが初めてで不安もありましたが、楽しい彼女との未来を想像して頑張ることができました。いつ彼女ができてもいいように料理の腕を上げておきます!!ちなみに弁当をわたす理想のシチュエーションは公園に二人で行ったときサプライズで持っていく場面です。

 

 

【受賞者コメント】

この度はこのような栄誉ある賞をいただきましてありがとうございます。選んでいただけると思っておらず正直驚いています。今回のお弁当は将来の彼女という実在しない相手に送っています。私は食べることが大好きなので一緒に食を楽しめる彼女という設定です。そんな彼女への初めての手作り弁当のつもりで作りました。色合い、栄養、食べ応えのバランスを意識し、楽しく作ることができました。残念なことにまだ彼女はいないので感想は貰えませんが、喜んでくれたと思います。改めて大変貴重な機会をいただきありがとうございました。
家庭基礎の夏休み課題で作ったのですが、弁当箱のスペースは限られているため、その中で栄養バランスや味、見た目の華やかさを兼ね備えているおかずの組み合わせを考えるのが難しかったです。

 

優秀賞  牧野 心汰さん(山梨県立上野原高等学校1年)

「姉」へ 「応援ありがとう!無事受かったよ弁当」

去年受験生だった僕に、お弁当甲子園で姉が、「頼むから受かってくれ弁当」を作ってくれました。そのお礼に、今年は僕が姉にお弁当を作りました。そのお弁当のだるまおにぎりには、片目が入っていませんでしたが、今年は両目を入れることで合格できたことを表しました。玉子焼きとアスパラベーコンは姉が作る定番のおかずで、姉に作り方を教えてもらい初めて作りました。 また、酢には過酸化脂質の上昇を抑える働きや、美肌効果があります。その為、女子力をアップしてもらいたいと思い、酢豚を入れました。姉ちゃんいつもありがとう、喜んでもらえたら嬉しいです。

 

 

【受賞者コメント】

この度は、優秀賞に選出して頂きありがとうございました。先生から受賞を聞いた時は、驚きと嬉しさでいっぱいになりました。去年姉が受験に受かるように僕にお弁当を作ってくれたのでそのお礼がしたいと思い、姉に作りました。姉には、普段から心配をかけお世話になりっぱなしです。そんな姉が去年作ってくれたお弁当がとても嬉しかったことを思い出し、日頃の感謝の気持ちをお弁当に込めようと思いました。そこで去年姉からもらったお弁当を完成させようと思いつきました。しかし、いざ作る側になるとお弁当作りの大変さが分かりました。この貴重な経験は、お弁当の有難さを改めて考える良い機会になりました。
また、栄養バランスを考えたおかずを選ぶ時に、食材の持つ栄養素を知ることが出来ました。また、色合いにも気をつけることで美味しそうに見えることに気づきました。

 

優秀賞  奥田 羊歩さん(群馬県立高崎女子高等学校1年)

「花屋を目指すいとこ」へ 「常に前進弁当」

花屋を開くことを目指し、今はフラワー装飾技能士の資格を取るため勉強しているいとこへのエールです。お弁当全体で花壇を表現するためパンは全粒粉、彩りと栄養のためにレタスとトマトも入れました。いとこの一番好きな花はガーベラで、その花言葉「常に前進」もいとこが教えてくれました。それ以外にも、お弁当を作るにあたって色々な花言葉を調べ、デイジーの「希望」やムスカリの「明るい未来」などを知りました。花のこと以外にも、昔から一緒に遊んだり出かけたりとお世話になってきたので、感謝と応援の気持ちを込め、それらの花をいとこの好きなサンドイッチにして渡しました。いとこはどの花も当ててくれ、「ありがとう」と言ってくれました。

 

 

【受賞者コメント】

このような大きな賞をいただき、驚きとともに喜びでいっぱいです。今まであまり料理をしたことがなく表現の仕方に悩むところもありましたが、やるからには全力でと、試行錯誤を重ねました。思いを詰め込んだサンドイッチはとても食べやすいとは言えず、いとこはいくつかに切り分けて箸でつまんで食べていましたが、応援の気持ちが伝わったようだったので良かったです。また、作る側の視点に立ち、料理一つひとつが「作品」であることを実感しました。今後も作ってくれた人への感謝を忘れずにいたいです。
学校の課題でお弁当を作ったのがきっかけですが、そのうえで誰に贈るか考えたとき、幼いころからお世話になっているいとこに少しの恩返しをしたいと思い、作りました。
誰かに何か、伝えたいことを伝える方法は様々ですが、その一つにお弁当があることを知りました。また、毎日作ってもらっているお弁当の有難さを知りました。

 

第12回お弁当甲子園入賞者

【最優秀賞】
長谷 波奈(東京都・東洋英和女学院高等部3年)
【特別審査員賞】
磯﨑 柚那(茨城県・水戸女子高等学校2年)
阿部 咲也香(東京都・広尾学園高等学校1年)
【優秀賞】
大谷 拓人(福岡県立東筑高等学校1年)
島田 哲平(山形県・日本大学山形高等学校2年)
牧野 心汰(山梨県立上野原高等学校1年)
奥田 羊歩(群馬県立高崎女子高等学校1年)
 
【入選】
勝本 茉優(東京都・目黒日本大学高等学校1年)
府川 眞凛(福岡県立東筑高等学校1年)
山本 龍雅(福岡県立東筑高等学校1年)
木下 大悟(愛媛県立松山南高等学校1年)
安宅 夏音(広島市立美鈴が丘高等学校2年)
辻 莉央音(東京都・早稲田実業学校2年)
長谷川 仁康(東京都・早稲田実業学校2年)
木村 歩美(東京都・早稲田実業学校2年)
酒井 しい(愛知県立岩津高等学校1年)
三浦 羽泰(宮城県泉高等学校1年)
 
【佳作】
山崎 栞奈(山形県・日本大学山形高等学校2年)
安達 唯真(山形県・日本大学山形高等学校2年)
許斐 千鶴(神奈川県・慶應義塾湘南藤沢高等部1年)
清水 幹太郎(東京都・早稲田実業学校高等部2年)
西山 太智(群馬県立沼田高等学校1年)
宮田 望花(神奈川県・三浦学苑高等学校1年)
柚木 麻央(東京都・かえつ有明高等学校2年)
覚張 優花(東京都・かえつ有明高等学校2年)
中野 茉莉衣(神奈川県・カリタス女子高等学校1年)
萩原 実和(群馬県立高崎女子高等学校1年)
松尾 来海(福岡県立小倉東高等学校2年)
黒岩 莉稀(群馬県立吾妻中央高等学校1年)
村中 みなみ(北海道・立命館慶祥高等学校2年)
酒井 菜穂里(静岡県・静岡雙葉高等学校1年)
齋藤 莉子(東京都立立川国際中等教育学校)
 
【文部科学大臣賞】
群馬県立高崎女子高等学校        
【学校賞】
東京都・早稲田実業学校       
福岡県立東筑高等学校        
愛知県立春日井高等学校        
【鎌倉女子大学賞】
埼玉県・本庄東高等学校        
東京都・目黒日本大学高等学校        
神奈川県・湘南学院高等学校