高校3年間は、過ごし方や選択で将来が大きく変わってしまう大事な時期。「勉強がうまくいかない」「進路が決まらない」など、悩みが尽きないでしょう。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、読者からの勉強や進路に関わるお悩み相談に答えてもらいました。

【お悩み】本当に私のやりたい進路か?

私は高校受験の際、肺炎で1週間ほど入院しました。その時、看護師さんが優しく対応してくださったので、看護師に憧れて苦手な理系を選択して頑張っています。ですが、最近気がついてしまいました。「これは本当に私がやりたいことなのか?」と。

「看護師になりたい」夢に迷いが……(写真はイメージ)

思えば、私が保育園の時パティシエになりたいと言っても、中学生の時に獣医になりたいと言っても、母にはずっと反対されていました。「パティシエになるのはいいけど働く場所がないよ。夢を見るのは勝手だけど現実見たら?」「獣医は頭良くないとね……。あなた自分の成績分かってるの?」などと言われ……。

母の言うことは正論だと思いますが、私には辛かったのです。無事、志望校の高校に合格した際、「私、看護師になりたい!」と言った時の、母のあの笑顔。今思い出しても気味が悪いです。これは本当に私が望んだことなのでしょうか? やりたくもない苦手な理系の勉強……いまさら後戻りはできず、悩んでいます。(たなか・高校3年女子)

夢を破壊する人は身近にもいる

自分の進路を決定することはなかなか容易ではありません。確かに、子どもの頃、病気をしてお医者さんや看護師さんの献身的な姿を見て、心が震え、自分も人を助ける人間になりたいという志をもって医者や看護師になる人はいます。しかし、一方で一時的な気持ちであったことに気づき、その後、別の進路に変えていくこともあります。

子どもの頃に描いた将来の夢が「一時的な気持ち」だと気づくことも(写真はイメージ)

しかし、たなかさんのお話を聞いていると、進路の問題というよりも、お母さんとの折り合いの問題であるように感じます。夢を破壊する人のことをドリームキラーといいますが、えてしてそれは身近な親であったり、先生であったります。もちろん子どもの夢を意図的に破壊しようと思っているわけではありませんが、結果として人の夢を壊してしまう人たちがいます。

これを防ぐ方法は一つ。「親も含めて人には自分の夢を言わない」ということです。聞かれた時は、はぐらかします。自分の思いは自分だけが知っていればいいので、それに向けてコツコツ進めればいいわけです。

高校生であれば、自分の進路は自分で決めていきます。もちろん親や先生の声は“一つの意見として”聞きますが、あくまでもそれは一つの意見であり、無理に合わせる必要もありませんし、従う理由もありません。あくまでも、自分の人生は自分で決めていきます。

看護師への思いはどれほど強い?

さて、ここからが本題です。たなかさんが今、心配していることは、看護師は自分が望んだ進路なのかどうかということですね。「苦手な理系」と書いてありますが、看護に進みたい気持ちが強いのであれば、理系が苦手ということは関係ありません。気持ちが優先されるため、何とか突破していくからです。理系と言っても看護師に向けての理系なので、いわゆる理工学部などの理系とは要求される科目の内容が異なるため、それほど大きな負担はないと思います。

ですから、問題は看護師に向けての思いがどの程度強いのかということです。お母さんのことや理系科目が苦手ということは一旦横においておきましょう。

「自分が」本当にやりたい道を目指して

もし、自分が本当にやりたいことが看護師であれば、そのまま正面突破していきます。しかし、そうではないとしたら、今まで自分が勉強してきた科目で受験できる大学のリストを調べてみてください。

今まで勉強してきた科目で受験できる大学を探そう

自分で調べることができないようであれば、進路指導の先生に相談してみてください。まだ自分が知らない学部や学科がたくさんあると思います。今の段階で新しい科目を勉強することは不可能であるため学んだ科目が使える進路を選んでみてください。

仮に現役で行きたい大学がすべて不合格であれば、もう1年やる方法もありますが、その際は偏差値ではなく、行きたい大学、進路を優先する方が、将来的に後悔はしないと思います。もう1年あれば、新しい科目を1つ追加して学ぶこともできます。

いずれにしても、まずは今まで勉強してきた科目が使える学部、学科を調べ、その中から行きたい進路を見つけてみてください。看護がその1つであれば看護に行けばいいと思います。

 
石田勝紀さん 
いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば
』(集英社)など著書多数

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