医療の進歩とともに日本は世界トップクラスの長寿国になった。人々の健康的な生活を支える看護師に憧れる高校生は多いだろう。看護の仕事を紹介しよう。 (木和田志乃)

看護師の仕事とは

看護師は主に医師の指示に基づいて、診察や治療の補助、入院患者の看護や援助をするのが主な仕事だ。具体的には血圧・体温などの測定、注射、点滴、採血や、食事や入浴などの手伝い、担当患者の記録を付けて医師や同僚の看護師への報告など多くの仕事がある。患者の家族への対応も看護師に任される。医療スタッフの中で患者と接する時間がもっとも長いため、責任もやりがいも大きい仕事だ。

需要が高まる看護師の仕事

2025年には1947~49年の第1次ベビーブームに生まれた人がすべて後期高齢者になる超高齢社会を迎える。国の「社会保障・税一体改革の試算(2013年)」ではこの時期、医療費削減のために患者1人当たりの在院日数が短くなることで訪問看護の必要性が高まり、約200万人の看護職員が必要になると見積もられている。2016年末の看護師、准看護師、保健師、助産師を含めた看護職員就業者総数は約156万人であり、現状ではこの差をどのように埋めるのかが大きな課題となっている。

看護系大学は1991年度に11校、入学定員は558人であったのが2018 年度には263 校、2万3667人に増加。

また厚生労働省も都道府県に「ナースセンター」を設置し、看護師・准看護師・保健師・助産師の免許を持ちながら今はその仕事に就いていない人(潜在看護師)に連絡先等をナースセンターに届けてもらう制度を作った。復職に向けて働きかけ、求職者と医療機関をつないでいる。

この結果、看護職員は毎年およそ3万人ペースで増えているものの、このままでは必要とされる人手を確保することが難しいのが現状だ。

技術の進歩で看護の負担減

そこで看護師の負担を減らすための方策の一つとして、医療ロボットやAIの活用が検討され始めている。米テキサス州では昨年10月、病院で医療品をピックアップして運ぶロボットの試験運用が3つの病院で始まった。患者と対面しない業務を肩代わりし、看護師を助ける役割を果たす。国内の大学病院でも自律走行型ロボットが検体や薬剤を運ぶ実証実験が昨年末から今年初めにかけて実施されるなど、新たな技術が開発されている。

またIT技術の進歩により、将来、例えばスマートフォンのアプリと血圧計などの健康機器を連動させて、データを大量に集めることができるようになると言われている。大量のデータをAIが分析することで、病気の診断や予防につなげることが可能になる。こうしたテレナーシング(遠隔看護)が注目され、特に人手不足に悩む過疎地や離島で期待が大きい。

いろいろな看護関連の仕事

 

看護師の活躍場所は病院・診療所が中心だ(図1)。さまざまな診療科で幅広い知識と技術を身に付けたり、専門分野を極め、キャリアを積んで認定看護師や専門看護師へとステップアップする道もある。

社会の高齢化に伴い介護施設や訪問看護ステーションなど活躍の場所が広がり、医療と介護をつなぎ在宅ケアを支えるために、ケアマネージャーの資格を取る看護師も増えている。

保健指導や健康相談など人々の健康を守るための取り組みを行う保健師や、主に妊娠から出産後までの周産期にある女性と赤ちゃんのケアを行う助産師という仕事もある。

准看護師は看護師と同様に患者のケアをするが、医師の指示を受けるのは看護師と同じだが、看護師の指示を受けて業務を行う点が異なっている。

 

看護師になるには

看護師として働くには、看護大学、看護専門学校といった看護師養成課程のある学校で3~4年間学んだのち、看護師国家試験に合格し、看護師免許(国家資格)を取得しなければならない。一度取った免許は一生涯にわたって有効だ。なお、専門学校は3年制で3分の1の時間が実習に充てられるため就職後は即戦力として働ける。逆に大学では高度化・多様化する医療に対応するために的確な判断力や実践力を養う学習をするのが特徴だ。

また保健師も助産師も看護師の資格を取得した後に国家試験に合格しなくてはならないが、4年間で保健師や助産師の受験資格を取得できる養成課程を設けている大学もある。学校内で児童・生徒の保健・予防・安全管理を担う養護教諭の一種免許状などを取得できる大学もある。将来のキャリアを考えて進学先を選ぼう。

看護師に求められる資質とは

看護師は、人の生命を預かるという責任の重さから、さまざまな資質が求められる。仕事量が多い上、夜勤などの不規則な勤務やストレスに耐えられる体力、気力、そしてどんな状況でも的確に対応できる冷静さや判断力が不可欠だ。年齢・性別問わず多くの患者と接し、最近では、医師や薬剤師、理学療法士らと医療チームを組んでスタッフがそれぞれの専門性を発揮しながら仕事をする機会も増えているため、どんな人ともコミュニケーションを取れる協調性も大切だ。さらには医療の高度化に合わせて知識や技術を学び続ける意欲や日々の努力が欠かせない。

近年は男性看護師も増えている。2016年に看護師として働いていたのは115万人。そのうち男性看護師は8万4000人にすぎないが、この10年で2倍以上に増えた(平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況)。患者の移動や体位の変換といった重労働も多く、同性の看護師を望む男性患者も少なくない。男性看護師は今後ますます必要とされるだろう。

看護師の待遇とやりがい

 

厚生労働省の調査によれば2018年の看護師の平均年収は男性492万円、女性478万円、全体で480万円(平均年齢39.3歳)。男女を合わせた全労働者の平均年収の約497万円をやや下回るが、女性全体の382万円より100万円近く高い(図2)。また他の職種と比べると景気による収入の変動も少ない。看護師は慢性的に不足しているため、いったん離職しても復帰しやすい。勤務スタイルにはバリエーションがあるため、結婚や出産などでライフスタイルが変化しても、それに合わせた働き方ができるのも魅力だ。保育施設を設けている病院も増え、子育ての環境も整ってきた。また、看護師として働くなかで得た知識やスキルは自分自身や家族の健康管理に役立てることもメリットだ。1つの職種でキャリアを積みたい人に向いている。

看護師の魅力は給与面、雇用面の安定だけではない。担当していた患者が病気やけがを克服し健康を取り戻したとき、医師をはじめ他の医療スタッフとうまく連携できたときなど、誰かの役に立てた、自分の成長を実感できたなど、やりがいを感じる場面が多い。退院する患者から「ありがとう」と笑顔で感謝の気持ちを伝えられた時には苦労も吹き飛ぶだろう。人の役に立ちたいと思っている人には達成感の感じられる仕事だ。