【あらすじ】上リ坂(のぼリざか)高校新聞部の3年生・篠田ヒロは、自分の学校がここ数年で進学実績を伸ばしている秘密を探るため、先生たちへの取材を始めた。勉強の苦手意識について取材した記事を載せたところ思わぬ反響が寄せられた。

嫌なことから全力で逃げる、という前月号の特集への反響が大きく、新聞部にはこんな投書が寄せられた。

「志望校に合格しないことは嫌ですが、苦手科目の勉強をするのも嫌です。どうしたらいいですか?」

なかなかぜいたくな悩みだなぁと思いながらも、誰に聞いたらいいか思いを巡らせた。誰もが苦手なものといったら……ピーマン? そうだ、栄養士の佐藤先生に聞いてみよう。

 

――苦手科目はどうやって克服したらいいでしょうか? 栄養士である佐藤先生なら、苦手な食べ物を克服するノウハウを持っているんじゃないかと思いまして。

「まずは、苦手科目の克服こそが重要だと認識することから始めることね。少ない時間で伸びるのは得意科目じゃなくて苦手科目よ。苦手科目では、他の人が普通に解けている問題を自分でも落とす危険性がある……これは命取りになるわ」

――得意科目の点数でカバーするっていうのは難しいのでしょうか?

「得意科目でいくら難しい問題に取り組んだって、試験本番で時間内に難しい問題が解けるとは限らない。典型問題を解いたらちょうど終了時間になることも多々あるの。そうすると、難しい問題の対策をしていた時間が無駄になるわよね」

――やっぱり、苦手科目を克服するしかないんですね。

「大学受験に目を向けると、合否は総合点で決まるから全体のバランスがとても重要なの。志望校を決めるのは3年生になってからの人も多いから、なかなか苦手科目を克服する重要性を実感できないんだけどね。少なくとも言えることは、英語と数学はどんなに嫌いであってもきちんと向き合うべきね。対策も早いに越したことがない。最近、どの大学でも英語と数学の難易度が上がったり、配点が増えていたりしていると聞くわ」

――では、具体的な克服方法を教えてください。

「各教科の成績を伸ばす肝をつかむことね。肝を外した勉強をしていても成績は伸びず、余計に嫌いになるわ。勉強方法を間違えているからこそ、苦手科目になっているともいえるのよ。例えば、英語なら英単語を徹底的に暗記するのが肝よ。英単語を徹底的に覚えることで、英語の成績は格段に伸びるわ。数学なら計算練習用の問題集を徹底的にやることね」

苦手科目になってしまっているのは肝を外した勉強方法をしているから、という指摘はある意味希望だと思った。生まれつき、その科目が苦手な頭だからと諦めがちだが、勉強方法を知らないだけなのかもしれない。そう思えるようになっていた。
(続く)

ふなと・よしあき 東京大学理学部化学科卒業。学習参考書などを多数執筆。著書に「高校一冊目の参考書」(KADOKAWA)、「高校の勉強のトリセツ」(学研プラス)など。