【あらすじ】 上リ坂(のぼリざか)高校新聞部の3年生・篠田ヒロは、自分の学校がここ数年で進学実績を伸ばしている秘密を探るため、先生たちへの取材を始めた。学年主任に点を取る方法を取材し終わり、誰かから背中を叩(たた)かれて……。

まず無駄な時間を洗い出す

 

学年主任の村川先生の取材を終えて次のスケジュールを確認すると、トントンと背中を叩かれた。振り向くと、書道部顧問の珍念先生が立っていた。

「取材のスケジュールはきちんと立てているようですが、勉強のスケジュールも、きちんと立てられていますか?」

僕はあまり自信がない。次の取材まで少し時間が空いているため、その場で取材を依頼した。

――珍念先生、勉強のスケジュールの立て方を教えてください。

「まずはスケジュールを立てて意味があるくらい、勉強時間を確保することから始めてください。睡眠時間を削ってはいけませんよ。勉強の学習効率が落ちる上に、そもそも勉強の学習効率が落ちているということすら自覚できなくなりますから」

――勉強時間を確保するにはどうしたらいいですか?

「無駄な時間を削ることに目を向けましょう。勉強と関係ない時間を残したまま勉強時間を捻出することはできません。無駄な時間をリストアップし、どんどん削っていくといいでしょう」

――勉強時間が確保できたら、どうやってスケジュールを立てたらいいですか?

「定期テストに向けてスケジュールを立てるのが基本的なリズムとなります。テスト範囲の勉強を、定期テスト開始2週間前から開始してください。定期テストの範囲を問題集で最低3周できるよう最初の1週間で全科目を1周し、残り1週間で2周ずつできるようにするのがいいでしょう。計画通りはいかないので、14日ではなく12日しか無い前提でスケジュールを立てるべきです」

――定期テスト2週間前だけ勉強したらいいのでしょうか?

「いいえ、そうではありません。定期テスト2週間前を除く期間には、定期テストが済んだ範囲の復習と、無学年教材をします。定期テストが済んだ範囲の復習とは、前に受けた定期テストの範囲までの全分野の復習をすることです。問題集を解き、解答を見ずに解けるようになるまで繰り返しましょう。人間は忘れる動物ですから、たくさん忘れていても落ち込む必要はありません。忘れては復習する……を繰り返し、定着させていったらよいのです」

――無学年教材とは何でしょうか?

「学年に関係なく勉強できる教材のことです。英単語・古文単語の暗記が代表例でしょう。学校で習うことを待たずに勉強できるので、高校1年生のうちから、高校3年生までに必要な英単語暗記の先取りをすると、とてつもなく大きなアドバンテージになるでしょう」

ではこのへんで、と珍念先生は合掌し、静かにその場を立ち去った。先生の背中に一礼して顔を上げたとき、目の前に興味深い紙が貼られていたのだった。 (続く)

ふなと・よしあき 東京大学理学部化学科卒業。学習参考書などを多数執筆。著書に「高校一冊目の参考書」(KADOKAWA)、「高校の勉強のトリセツ」(学研プラス)など。