地球の時代区分の一つに、千葉の名前が付くかもしれない。時代区分の基準となる地層として、日本の研究チームが千葉県内の地層を国際機関に申請する。イタリアも名乗りを上げて競っており、日本が認定されれば「千葉時代(チバニアン)」と名付けられるという。研究チームの1人である国立極地研究所の菅沼悠介先生に研究内容などを聞いた。
(野口涼)

 

基準の地層は世界1カ所

──時代区分はどのように名付けられるのですか。

地球の46億年の歴史を、岩石が形成された年代などによって区分したものを地質時代と呼びます。地球の環境が劇的に変化した時や、その時代を代表する生物が絶滅した時などのタイミングで「中生代」「新生代」などに大きく区切っています。それらをさらに「ジュラ紀」「白亜紀」などに分け、現時点で100以上に区分されています。

区分の名称は、その時代の始まり(前の時代と次の時代の境界に相当)の地層がある場所にちなんだラテン語の名前が付けられます。その地層は世界に1カ所だけで、「国際標準模式層断面および地点」と呼びます。

認定されれば日本初

──どの時代の名前を決めようとしているのですか。

まだ名称が決まっていない約77万年前から約13万年前までの時代の下限に相当する地層が千葉県市原市の養老川沿いにあるとして、国際標準模式層断面および地点の候補になっています。認定されれば日本初です。

イタリア南部の2カ所の地層も候補地です。今後は両国の研究チームが申請書を提出し、国際機関が申請内容を審査して、どれを国際標準模式層断面および地点にするかを決めます。

──千葉の地層が候補地になった理由は。

約80〜70万年前に海底にあった地層が活発な地殻運動によって隆起して山になった地層で、「千葉セクション」と呼びます。候補地の一つになったのは、第四紀更新世前期と中期の境界で、氷河期と間氷期の繰り返しが顕著になったタイミングの地層だからです。

「地磁気逆転」で有利?

──認定される条件は。

「海底下で連続的に堆積した地層であること」「地層中に過去の地磁気の逆転が記録されていること」「過去の環境変動を詳細に記録していること」のほか、「誰でも見られる場所にあること」も重要な基準です。

磁石のN極は北を、S極は南を指します。しかし地球の歴史をさかのぼると、N極とS極の逆転が数多く起きていることが分かっています。直近の地磁気逆転は、千葉セクションが形成された77万年前。このため地層中に地磁気の逆転が記録されていることが条件になるのです。

──イタリアに勝てそうですか。

地磁気逆転は、現時点で千葉と、イタリアの候補地の1カ所で確認されていますが、特に千葉セクションでは火山灰の年代測定により、地磁気逆転の正確な年代を求めることに成功しました。これが決め手になる可能性はありますよ。

 
菅沼悠介先生

菅沼悠介先生
 国立極地研究所助教。博士(理学)。第四紀地質学、古地磁気学、岩石磁気学などが専門