教育改革が進められ、先生の仕事も変わりつつある。東京学芸大学副学長の佐々木幸寿教授に聞いた。(安永美穂)

Q.教育改革により、教員の仕事はどう変わるのでしょうか?

 

A.学び方そのものを教える役割に加え、学校運営のためのコーディネート力も求められるように。

 

一方通行の授業はNG

教育改革では、主体的・対話的で深い学びを実現するための「アクティブ・ラーニング」の視点がどの教科でも求められるようになります。これは、教員が一方的に教える「講義形式」の授業ばかりを行うのではなく、子どもたち自身が調べる、話し合う、取り組んだことを振り返るといった時間を設けながら、問題解決能力を育んでいこうという取り組みです。

教員に求められる役割は、すぐに「正解」を教えることではなく、どうすれば自分の知りたいことに到達できるかという「学び方」を教えること。子どもたちに問いを投げかけ、共に学びながら授業を運営していくことが、今まで以上に重視されるようになります。

チームをまとめる力が必要

また、小学校では3・4年生で外国語活動、5・6年生で教科としての外国語(英語)の学習が始まり、プログラミング教育も導入されます。外国語に関しては、小学校では外国の文化や言葉に親しむことを目的としているため、教員自身も英語を楽しみながら教えられると理想的です。プログラミング教育では、プログラミングやICT(情報通信技術)の活用に必要な論理的な考え方を身につけることが重視されます。そのため、専門的な技術を教えるというよりは、さまざまな教科の学習の中でICTを活用して学びの幅を広げていくことが求められます。

そして、教員個人ではなく学校というチームとしてさまざまな問題に対処できるように、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、図書館司書、部活動指導員、地域の方々などと連携していくことも重要です。教員には、これらのチームをまとめるコーディネーターや、問題解決のための道筋を示すナビゲーターとしての役割が求められます。教員自身も広く社会のことにアンテナを張り巡らせながら、教員同士はもちろん、学校外の人とも積極的にコミュニケーションを取ることが重要になると言えるでしょう。

 

佐々木幸寿教授 (東京学芸大学副学長)

ささき・こうじゅ 水沢高校(岩手)卒業。東北大学経済学部卒業。東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専攻は学校法学、教育行政学。岩手県内の公立高校で地歴・公民を教え、野球部の監督を務める。岩手県教育委員会に勤務した後、信州大学にて准教授、東京学芸大学にて准教授・教授を経て現職。