訪日客3000万人台へ

訪日外国人客は急増を続けており、2018年は通年で初の3千万人台に達する見通しだ。一方で、住民生活や自然環境、文化財保護などに悪影響が生じる「観光公害」も目立ち始め、観光庁が初の実態調査に乗り出した。交通混雑や民泊トラブルなどの詳しい状況と有効な対策事例を把握し、平穏な住民生活との共存を図るための対策を講じるのが目的という。

既に有名観光地がある50自治体にアンケートを実施、さらに約150自治体への調査をする。有識者らの研究会を立ち上げ、結果を踏まえた政策提言を行う。

交通混雑や民泊トラブル

観光公害は「オーバーツーリズム」とも呼ばれ、京都や鎌倉などでは観光シーズンに電車や路線バスが混み合い、通勤通学に支障が出ている。世界遺産の白川郷がある岐阜県白川村では空き地への無断駐車、住宅やマンションを有料で提供する民泊では騒音やごみ放置が問題化している。

このため京都市は、宿泊客に課税する宿泊税を10月から導入。税の一部を公共交通の混雑緩和や違法民泊の対策に充てる。宿泊税の導入は他の自治体でも検討されており、訪日外国人客の受け入れ体制を整備する動きが広がっている。

観光庁はまた、無届けの違法民泊物件を見つけやすくする新システムづくりに着手、20年をめどに試験導入を目指す。取り締まりを強化することで近隣トラブルの防止につなげたい考えだ。

持続する観光、世界で模索

政府は訪日客を20年に4千万人、60年には6千万人に増やす目標を掲げているが、住民の反発が強まれば旅行者の満足度も低下し、目標達成の妨げになることを警戒する。スペインのバルセロナでは行政の観光振興政策に住民が抗議行動を起こした例もあり、「持続可能な観光」は世界的な課題となっている。