主に理系分野のユニークな研究の成果をたたえるイグノーベル賞。28回目となる今年の受賞研究が9月中旬に発表された。受賞した独創性あふれる研究の中から、思わず笑ってしまうような研究内容をピックアップして紹介していこう。
(中田宗孝、取材協力・日本科学未来館)

唾液は洗剤になるか

「化学賞」には、ポルトガルの研究グループが選ばれた。人間の唾液に洗剤と同等の働きがあることを測定。美術品や絵画の表面に付いた汚れを人間の唾で拭くと、他のクリーナーよりもきれいになることが分かった。唾液の洗浄力は、洗剤と比べても劣ることなく、むしろ優れていると発表した。

呪いの人形の効果は

カナダの大学の研究者たちが取り組んだ「平社員がブードゥー人形(呪い人形)を使ってパワハラ上司に報復できるか」が「経済学賞」を受賞。約200人の労働者をモニターに、ブードゥー教の黒魔術で用いる呪い人形をパワーハラスメント上司に見立て、人形を燃やしたり針で突き刺したりしてもらった。すると、上司への不満や仕事のストレスが軽減する効果が得られる結果となった。

トリセツ、ちゃんと読む?

「文学賞」に輝いたのは、オーストラリア人らの研究グループの「複雑な製品を使う際、たいていの人は製品の取扱説明書を読まない」。実験モニターによる検証の結果、操作がややこしい製品でも、正しい使い方を記した取扱説明書をきちんと確認する人は少なかった。男性よりも女性、高齢者よりも若者の方が説明書を読まない傾向も見受けられた。

ディズニーで実験

「医学賞」には、米国の研究者2人による研究が選ばれた。「ジェットコースターに乗ることで腎臓・尿管結石を取り除くことができるか」を調べたもの。実験は米ディズニーランドで行われた。偽の結石を入れた腎臓模型を持った実験モニターがジェットコースターに60回乗車して効果を検証すると、後方席では64%、前方席では17%の確率で結石が取れる結果が得られた。後方に座れば、適度な振動を受けて腎臓や尿道から結石が取れると結論付けた。なお、結石が取れたのはビッグサンダー・マウンテンのみで、同園の他のジェットコースターでは実験は失敗に終わったという。

 

日本の高校生へ

イグノーベル賞主催者 マーク・エイブラハムズ氏

 学校の先生が教える内容は、ほどほどに聞いておくことさ(笑)。先生でも理解の及ばない科学にこそ発見があるからね!

【memo】イグノーベル賞
 ノーベル賞のパロディーとして1991年に米国のユーモア科学雑誌が創設し、今年で28回目を迎える。審査基準は「人々を笑わせ、そして考えさせる」「誰もまねできない、むしろすべきでない」と思える、ユーモラスな研究かどうか。日本の研究者の活躍が目覚ましく、今回も医師・堀内朗さんによる「大腸の検査を容易にするため、座ったまま自らの大腸に内視鏡スコープを挿入する研究」が「医学教育賞」に選ばれ、日本人の受賞は12年連続となった。