作家や出版社の許可なく複製された漫画や雑誌などを無料で読める「海賊版サイト」による著作権侵害を防ぐため、政府はプロバイダー(接続業者)による悪質なサイトへのインターネット接続遮断(サイトブロッキング)が適当とする緊急対策を打ち出した。著作権保護につながる半面、憲法が保障する「通信の秘密」や「検閲の禁止」に抵触するとの指摘もある。

接続遮断はこれまで、児童ポルノに限った特例措置として実施されており、初の適用拡大となる。政府は今回、「漫画村」「AniTube!」「MioMio」の3つの海賊版サイトを名指しし、プロバイダーの自主的な取り組みとして接続を遮断することが適当とした。

「漫画村」による被害額3000億円と推計

「漫画村」は2016年に開設された漫画が無料で読める海賊版サイトで、昨年後半から今年にかけて利用者が急増。違法だが公式サイトのような精巧なつくりで読者を誘い込んだ。コンテンツ海外流通促進機構は、昨年9月からの半年間で同サイト利用者は延べ6億2千万人。閲覧時間は平均約18分で、被害額は3192億円に上ると推計している。

今回の対策の背景には、漫画やアニメなどのコンテンツを日本の強みと捉え、海外展開を通じて経済成長につなげようという安倍晋三政権の考え方がうかがえる。

 

「通信の秘密を侵害」事業者や法学者が批判

ただ、法的根拠の議論は不十分だ。プロバイダーが接続を遮断するには、海賊版を見ようとしていない人も含め、ネット利用者がどのサイトにアクセスしようとしているかをチェックする必要がある。プロバイダーが加盟するインターネットコンテンツセーフティー協会は「憲法が禁じる検閲に当たる恐れがある」と反対する声明を発表。法学者らでつくる情報法制研究所も「通信の秘密の侵害に相当する」と批判を強めている。

実際の対応はプロバイダーの自主判断に委ねられており、政府の思惑通りに対策が進むかどうか不透明だ。