ホーキング博士(2002年、Liang Z h e n = G e t t y Images)

難病、21歳で余命宣告

全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病と闘いながら、ブラックホールなどに関する独創的な宇宙論を発表し続けた英国の宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士が3月14日、英南部ケンブリッジの自宅で死去した。76歳だった。

21歳の時に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され「余命数年」と宣告された。手脚などの自由を奪われ、声も失い、車いすでほとんど動けない状態で科学者、思索者として発信を続け、「車いすの天才科学者」といわれた。

最先端の宇宙論で業績

巨大な重力であらゆる物質や光を吸い込み成長し続けると考えられていたブラックホールが、実はエネルギーを放出しながら縮んでいくとした「ブラックホール蒸発」理論が有名。ほかにも、アインシュタインが打ち立てた一般相対性理論が成立しなくなる「特異点」が存在すると提唱、量子力学を物理学と組み合わせて宇宙の起源に迫ろうとした。

1988年に出版された「ホーキング、宇宙を語る(邦題)」は、宇宙の謎の面白さを多くの人に伝えようと、難しい理論を分かりやすい言葉で説明して世界的ベストセラーになった。

音声合成装置で講演

音声合成装置を使って日本など世界各地で講演、2012年のパラリンピック・ロンドン大会の開会式では「いかに人生が困難と思っても、人には必ず成功できるものがある」とスピーチした。16年には、光速の5分の1で飛ぶ小型探査機で太陽系外の惑星や生命体を探す計画を発表し、世界を驚かせた。