風邪やインフルエンザ予防に「ヨーグルト」などの乳酸菌食品を食べると良いといわれるが、それはなぜだろう。牧野記念病院(横浜市)の内科医・建部雄氏さんに効果を聞いた。

腸内の環境悪化が免疫低下につながる

 

――ヨーグルトと風邪予防、一見すると結びつかなそうに見えますが……。

近年、消化管に関する機能についてさまざまな研究が行われ、以前には考えられなかったヨーグルトの全身への作用や機能が明らかになってきています。簡単に言えば、腸内善玉菌と悪玉菌が存在し、悪玉菌のほうが増えれば当然、腸の機能が低下します。腸内環境が悪化することで、免疫力の低下や老化の進行、便秘、肌荒れ、果ては抑うつ症状まで、さまざまなトラブルが体に出現する可能性があると考えられているのです。

乳酸菌が作り出す物質が腸の免疫を活性化させる

――腸の環境を整えることは、全身の健康を保つことにつながるのですね。

はい。さらに、研究の中で毎年、秋から冬にかけて流行するインフルエンザについて最近、次のようなことが分かってきました。

乳酸菌(善玉菌)の摂取が、インフルエンザに対して予防効果を発揮し得ることです。簡単に言えば、腸内の免疫担当細胞である「ナチュラルキラー細胞」を活性化してウイルスを撃退するということです。

また、動物実験レベルではあるものの、先述の効果は「生きた乳酸菌が腸内に届き腸内環境が改善した結果ではなく、乳酸菌が作り出した物質や菌体成分(乳酸菌生産物質)が腸管免疫を直接活性化したためである」と推測されています。

つまり、「生きた乳酸菌が腸まで届き、かつ、その乳酸菌が生存してゆくのに必要なオリゴ糖類という“エサ”を与えて増殖させれば腸内環境が改善し健康になれる」というのは、どうやら真実とは異なるようだ、ということが分かりつつあります。

ヨーグルトが苦手ならぬか漬けやキムチでもOK

 

――生きた乳酸菌自体が効果を与えているわけではなさそうなんですね。

実際、ヨーグルトなど食品中に存在する乳酸菌などは、胃や小腸での消化液によって殺菌されてしまい、大腸に届く前に90%以上が死滅します。また、ごく少数の菌は生きて大腸まで届いたとしても、元々、腸内に存在する細菌群から異物とみなされて、ほどなく体外に排除されてしまう事実もあります。

ヨーグルトの摂取で風邪やインフルエンザを予防したい場合などでも、特定の乳酸菌株からできているヨーグルトにとらわれることなく、普通のヨーグルトでもさまざまな健康作用・感染症予防効果が期待できると考えられます。まずはおいしく毎日適量のヨーグルトを召し上がってみてください。

ヨーグルトがどうも苦手……という方は、発酵食品で乳酸菌が意外にも多く含まれているぬか漬けやキムチなどを、毎日適量食べるようにしてみましょう。

建部雄氏さん  たてべ・たけし 京都市生まれ。2001年、昭和大学医学部卒業。大規模総合病院の救急科で経験を積み、急性期病院・クリニックの勤務を経て現職。