各党の政策を比較する生徒たち

10月22日に投開票される衆院選に先立ち、東京の玉川学園では、中学3年生から高校3年生を主対象に比例東京ブロックの模擬投票を実施。一部のクラスでは、選挙公報などを生徒が読み解く授業も行った。17日に行われた高校3年生の選択授業「ワールドスタディーズ」では16人が2時間かけて各党の政策を比較し、投票の基準となる「争点」を考えたり、疑問点を出したりした。(文・写真 西健太郎)

本物の選挙公報にらみ政策比較

「選挙は大事だと言われる。なぜ?」

この日の授業は、担当の武居秀俊先生(公民)のこんな問い掛けで始まった。

「みんなの意見を聞かないと、不公平になる」と女子生徒。

先生が「選挙が無かったらどうなる?」と質問する。

「国民の意見が反映されない」

「権力者に有利になる」

先生は「選挙無しで国の仕組みを変えようとしたら、戦争になる」と明治維新を例に挙げて説明した。「選挙は、平和を守る仕組み」であると。

続いて、生徒16人(女子13人、男子3人)は5班に分かれ、学校がある東京都町田市に配られる選挙公報と、政治情報サイト「政治山」が作成した政策比較表を見て、各党の政策を読み解いていった。

パソコンで各党の政策を確認するグループもあった

初めてじっくりみる選挙公報にとまどう生徒も少なくない。

「レイアウトめちゃくちゃ見づらい」

「公認と推薦でどういう意味?」

ある党の比例区の選挙公報は、候補者の顔写真が並んでいた。

「顔で選ぶわけじゃないから」

そばにいた先生が「政党で選んで、この人たちが当選するんだよ」と仕組みを説明する。

公約についての意見を出す生徒たち。消費税や教育費がまず目につくようだ。

「消費税10%中止。中止してどうするのかが知りたい」

「子育てと福祉のために増税するのは違う」

「引き下げるのは無理。もっと大胆に上げて福祉とかに使ったら」

「私立高校授業料無償…その金はどこからくるの?」

「大学も無償化だよ。夢でかすぎ」

「残業代ゼロって何? 無理じゃね。残業ゼロじゃないの。過労死ゼロはいいけれど」

「脱原発って、資源どこからもってくる」

知らない政党もあったようだ。

「何この政党、はじめて聞いたんだけれど」

「支持政党なし…これっていいの?」

「誰が出しているの?」

政策比較表に書き込みをして、疑問点や争点を見つける

消費税・北朝鮮…高校生が選んだ「争点」は

各党の政党を一通り見た生徒たちは、「投票のための争点になりそうな問題」を挙げて白板に書き出し、優先順位を付けた。

5つのグループが最優先にした「争点」と理由はこうだ。

教育の無償化…「私たちにとって身近」

北朝鮮…「憲法改正と外交・安全保障がかかわっている。日本国民が一番身近」

増税ストップ…「(増税を)止めたとして、他に収入源があるのか。上げないと借金も増える」

消費税…「少子化対策などをするには、身を切る改革とかより実現性が高いのでは」

憲法改正…「9条だけでなく、合区とかいろいろな問題が含まれる」

グループで話し合った争点や疑問点などを白板に書き出した

公約「本当にできるのか」

各党の政策を読んで感じた疑問も添えて書き出した。

「すべてにおいて、本当にできるのか」

「増税したものが具体的に何に使われるのか」

「増税中止のメリット」

「教育無償化は可能か」

「教育無償化と増税中止を掲げている政党は、その財源をどうするつもりなのか」

「保育の無償化を行っても受け皿はあるのか」

「憲法改正は意味はあるのか」

「原発ゼロにしたとき、どこから資源をもってくる」

「どのように災害から守るのか」

グループで話し合った争点や疑問点を白板に書き出した

その後、16人は比例東京ブロックの模擬投票に臨んだ。

廊下には、地元の選挙管理委員会から提供を受けた投票箱や記載台が設置され、本番さながらの投票をする。

廊下に設けられた「投票所」で、模擬投票に臨む生徒たち

投票率を上げるには

席に戻った生徒たちに、武居先生が問い掛けた。「今日の授業で変化はありましたか」

「18歳になって投票しようと思っていたが、どう投票するかイメージがわかなかった。今日クリアになった」

「公約に今日だけ目を向けても…それより前にニュースとかに関心を向けないといけない。難しいけど、継続的にやらないと」

「今まではニュースとか見てても、自民党と希望の党がバチバチしているくらいしか分からなかったが、この紙(公約)を見ていると、どの政党も考えている。日本のためにやっていると分かった」

武居秀俊先生

先生は続けて尋ねた。

「若者の投票率が低い。どんな変化があれば投票するようになりますか」

生徒は次々に考えを話した。

「投票しにくいのが原因。インターネットにIDとパスワードを書いて投票できるようになったら」

「中学生の模擬選挙所があって、学校単位に(模擬投票を)やればいい」

「若者が見るテレビ(番組)のCMに流せばいい」

「大人から『投票しないとこういう悪いことが起きる』と授業とかでやらないと」

「みんな関心なくない。ないって言われても普通にあるから。学校とかでやってくれれば…」

生徒たちの意見を受けて、武居先生は最後にこう話した。

「(今日のような授業を受けられる)みなさんは恵まれている。公立(高校)だとなかなか政治を扱いにくい。今日の経験をいろいろな人と話してほしい」