4年前は地区大会で敗れていたチームが、埼玉県でベスト8へ。昌平(埼玉)男子バレーボール部は、Vリーグの東レ・アローズでプレーした掛川厚志監督の就任後、サーブレシーブやスパイクレシーブなどを磨き上げ、守備力を大きな武器に躍進を続ける。ボールがコートに落ちるまで諦めない努力の集団は、全国大会出場を目指す。(文・田中夕子、写真・中村博之)

 

フェイントレシーブ
どんなボールも落とさない。監督が放ったボールの行方をしっかり見極めて、床に落ちる前に飛び込んで上げる

監督は元Vリーグリベロ

監督自らサーブやスパイクを打ち、そのボールを選手たちが追いかける。リベロとしてVリーグで活躍した経験がある監督だけに、飛んでくるボールは簡単には取れないものばかり。エースの大谷匡哉(2年)は「最後までしっかりボールを見ないと、どこに来るか分からない。でも、そのおかげで苦手な守備が少し上達しました」と笑う。

全国大会出場経験のある選手は多くないが、中学で全国大会に出たリベロの手塚陸斗(2年)は「掛川監督に教わりたくてこの学校に来た」と、毎日2時間かけて通う。強打レシーブやフェイントレシーブ、サーブレシーブなど、普段からレシーブ練習の時間が長く、時には1日の練習が対人レシーブだけで終わることもあるほど。「守備は絶対、他のチームには負けない」と力強く語るのも納得だ。

仲間の存在が励み

選手の多くは選抜アスリートクラスに在籍するが、T特選クラスという特別進学コースに在籍しながら、部活動に励むのが塩川凛人(2年)だ。他コースと比べて授業時間が長く、「勉強時間を確保するために、睡眠は毎日4時間」という過酷な生活だが、「一緒に頑張る仲間がいるから励まされる」と胸を張る。

主力は2年生。劣勢になると一気に崩れてしまう弱点を克服するために「日頃から気分を上げるように声を出し合っている」と、3年生で唯一のレギュラーである木本皓介(3年)は明かす。その言葉通り、練習時は常に大きな声が響き渡る。選手は、それぞれの役割を果たし、念願の全国大会出場を目指す。主将の壇太郎(3年)は「チーム力は上がっているので、全国でも勝てるチームになりたい」と目を輝かせた。

 

スパイクレシーブ
近い場所から監督(左端)が打つ、スパイクに見立てた強打を体全体で上げる練習。相手の攻撃を封じてチャンスに変える最初のプレー

 

トランジションアタック
ブロックに跳んだ後、つながったボールで攻撃する練習。跳んだ後でもしっかり助走を取る(左から5人目)のがポイント

諦めずにボールを追う(掛川厚志監督)

 

就任当初はパスも続かなかった。チームも私も、まさにゼロからのスタートでした。勝った経験がない選手たちに、自信をつけさせるためには練習するしかない。助走の大切さや、レシーブの精度、地味なことばかりですが、基本を重視して取り組んできました。

長身選手もいませんが、このチームだからこそ新しいことにも積極的に取り組んでいける。エリートではない選手たちですが、どんなボールも諦めずに追うようになり、「全国へ出たい」と自然に口にするようになりました。努力次第で人は変わります。このチームで、最高の喜びを味わいたいです。

 
 
【TEAM DATA】
1979年学校創立、創部年不明、部員17人(3年4人、2年6人、1年7人)。練習は水曜を除く週6日。2015年は県高校新人戦でベスト16、同年の全日本高校選手権(春高)県予選、16年の県高校新人戦は共にベスト8。部訓は「努力」「心」「工夫」。今年度は全国高校総体(インターハイ)出場、春高出場を目標に掲げている。