エースナンバー「10」を背負い、好守において躍動した菊地泰智

全国高校総体(インターハイ)サッカーの男子決勝が8月4日にユアテックスタジアム仙台で行われ、流通経大柏(千葉)が日大藤沢を1-0で下し、9年ぶり2度目の優勝(9年前は2校優勝)。決勝で涙を飲んだ前回の雪辱を晴らし、初の単独優勝を果たした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

後半投入の熊澤、流れ変えゴール

前半は互いに譲らず、0-0。ハーフタイムを終え、初戦の遠野(岩手)戦と準々決勝の長崎総合科学大付(長崎)戦で後半途中から投入されてゴールを奪った熊澤和希(2年)が送り込まれた。

「チームの流れを変えようと思って入りましたが、ファーストタッチで『今日は調子が良いな』とわかりました」と熊澤。後半29分に決定機を相手GKに止められたが、その直後の同31分に再び巡ってきたチャンスで右足を振り抜き、豪快にネットを揺らした。

「1本目のシュートは余裕がなく、コースが甘かったのですが、2本目は余裕があったので、しっかりトラップしてから決めることができました」

アディショナルタイムを含めた残り数分間も、守備陣を中心に最後まで集中して日大藤沢の攻撃をしのぎ、タイプアップのホイッスルを聞いた。

後半31分、熊澤和希がチームを優勝へと導くゴールを決めた

「完璧な試合はない」初戦から映像見返しミーティング

本田裕一郎監督が「うちにはスーパーな選手はいない」と言うように、チーム全員で一丸となったここまで戦ってきた。なかでも中心となったのが、昨年度から主力を担う主将のMF宮本優太とMF菊地泰智(ともに3年)だった。前回、準優勝の悔しさをピッチで味わった2人は、その雪辱に誰よりも燃えていた。

「常に自分たちが強い印象をチームに与えながら、今回は絶対に優勝しようと、きついことも言い合いながらやってきた。個人としても結果を出さないといけないし、キャプテンとしてもみんなをまとめないといけないのは大変だったけれど、優勝できたということはチームに何か力になれたのかなと思います」(宮本)

今大会、チームは試合を重ねるごとに成長を遂げた。1試合が終わるたびに映像を見返してミーティングを行い、反省点を洗い出した。それは4-0で快勝した遠野戦後や5-0で圧勝した長野(長野)戦後も変わらなかったという。

「完璧な試合なんてない。たとえば、『失点しなかったからよかった』ではなく、『こういう状況なら失点していたかもしれない』ときちんと整理しました。小学校からサッカーをやってきて、大会では1回戦から成長していくチームが優勝したり、良い結果を残したりできるとわかっていたので、その都度、課題を次の試合で生かすように心掛けました」(菊地)

宮本と菊地の経験がチームのレベルを引き上げ、優勝という大きな勲章を手にした流通経大柏。しかし、ここが終着点とは思っていない。これをステップに、次は冬の全国高校選手権で10年ぶりの頂点を目指す。

インターハイサッカー男子で9年ぶりに優勝した流通経大柏
インターハイサッカー男子で9年ぶりに優勝した流通経大柏