決勝ゴールを決めた澁川鈴菜(15)

全国高校総体(インターハイ)サッカーの女子決勝が8月4日にユアテックスタジアム仙台で行われ、日ノ本学園(兵庫)が前回覇者の藤枝順心(静岡)を1-0で下し、2年ぶり5度目の優勝を果たした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

V奪還へ情熱サッカー追求

5連覇を目指した前回は準決勝で藤枝順心に敗れて3位。昨年12月下旬から行われた全日本高校女子選手権では準々決勝で敗退した。近年の高校女子サッカー界をけん引してきた名門も、昨年度は全国のタイトルを手にできなかった。

女王の座を奪還すべく、田邊友恵監督が求めてきたのは「情熱的なサッカー」だったという。

「冷静に試合を運ぶだけでなく、もっと闘う姿勢を見せること。そうした気持ちの面と、今まではボール扱いばかりにこだわっていましたが、しっかり走った上でボールを動かせるように練習してきました」(田邊監督)

ただ、その狙いはチームにすぐに浸透したわけではない。主将のMF牛島理子(3年)は「みんな『勝ちたい』と言うけれど口だけで、それを行動に移せていなかった」と振り返る。そんな中、インターハイに向けてチームが1つになるきっかけがあった。兵庫県大会の真っただ中だった6月のある3日間、田邊監督によれば「選手からサッカーを取り上げた」のだ。練習を一切できなかった選手たちは、ミーティングでとことん話し合ったという。

「メンバーに入る17人だけじゃなく、それ以外の選手も含めて部の全員でどれだけ優勝したいと思えるか。そういう結論になって、練習でもそれまで以上にみんなが声を出すようになりました」(牛島)

主将としてチームをまとめてきた牛島理子(5)

「応援のみんなの思いこもったゴール」

決勝の相手となった藤枝順心は、初戦で4-0、準々決勝が4-0、準決勝も5-0と、圧倒的な強さで勝ち上がってきていた。ただ、MF澁川鈴菜(2年)は「正直、手ごわいなと思ったけれど、今の日ノ本なら勝てると思って試合に臨んだ」と話す。

前半の日ノ本学園は藤枝順心の速いプレスに手を焼き、シュートは1本しか放てなかったが、DF宮崎音々(3年)らが体を張ってゴールを死守。FW宮本華乃(3年)は「後ろ(の守備陣)が頑張ってくれていた」と仲間の奮闘を感じながら、隙あらば鋭い出足でスペースへと飛び出した。

前線で体を張ってチャンスを作った宮本華乃

均衡が破れたのは後半18分だった。前線で粘った宮本がサポートに来た伊藤美玖(3年)にバックパス。伊藤が右足で丁寧にゴール前に上げたクロスを澁川がヘッドで豪快に押し込んだ。

「自分はフリーだったので『これは入るな』と。蹴ってくれたクロスも良いボールだったので、当てるだけでした。応援のみんなが大会前から自分たちメンバーのためにいろいろやってくれて、その人たちの思いがすべてこもったゴールだったと思います」(澁川)

王座奪還を成し遂げた日ノ本学園。優勝の瞬間こそチーム全員で喜びを分かち合ったが、「3年生にとっては日ノ本で戦う最後の大会。もうスタートだと思うので、これからこつこつ積み重ねてチームとして大きくなりたい」(牛島)と、冬の選手権での全国制覇を見据えていた。

インターハイサッカー女子で優勝した日ノ本学園