高校生記者が気象予報官の竹川さんに聞いた

「この夏の気温は、東日本では暖かい空気に覆われやすく、平年並みか高いでしょう」。これは、今年2月に気象庁が発表した予報だ。真冬に、半年後の夏の天気を予測できるのはなぜだろう? 高校生記者4人が気象庁を訪ね、予報官の竹川元章さんに聞いた。
(聞き手・岩城正姫、佐藤友香、前田黎、峯村舞子)

気象予報は6種類

──予報にはどのようなものがありますか。
竹川 気象庁が「天気予報」と呼んでいるものは、2日後までの予報です。さらに7日先までを予報するのが「週間天気予報」です。より長期的な予報は「季節予報」と呼び、「1か月予報」「3か月予報」のほか、「暖候期予報」と「寒候期予報」があります(表)。
──季節予報と、毎日の「天気予報」などの違いを教えてください。
竹川 「天気予報」や週間天気予報では、日々の天気を左右する移動性の低気圧や高気圧に着目して予報をたてます。
 しかし、これらを1週間以上先まで予測することは困難ですので、季節予報では、地球規模で測定した大気の状態や海面温度などから将来の天候を予測します。
 このため、天気予報が「東京は明日晴れるでしょう」などと天気をピンポイントで予報するのに対し、季節予報では「関東地方では向こう1カ月間の気温が、例年よりも高い確率は40%」というように、地方ごとの大まかな天候を予報します(図)。

誤差を防ぐ方法は

──季節予報はどのように予測しているのですか?
竹川 気象衛星「ひまわり」や観測船などによる大気の流れや海面温度などの測定値とその時変動が大きい要素に誤差を加え「初期値」としてスーパーコンピューターに入力し、物理学の方程式を使って計算します。
 この結果から、予報官が大気の状態を予測することで、将来の天候を予報します。
──季節予報の難しさは?
竹川 予測期間が長いほど未解明の要素が増え、小さな誤差が結果を大きく左右することです。ブラジルのチョウの羽ばたきが、アメリカで竜巻を引き起こすといわれるくらいです。これを「バタフライ効果」といいます。
 このため、長期の予報を行う場合には誤差を加味した50種類ほどの異なる初期値を入力します。だから季節予報は大まかな傾向の予測になるのです。
(構成・山口佳子)

 
 
 

気象予報官になるには?
 気象予報官とは、気象庁で気象予報を担う人のこと。気象予報官になるためには、2つの方法がある。1つは、高校卒業後に気象大学校に入学し、気象に関する専門的知識や技能を習得する。卒業後は気象庁に配属される。もう1つは、大卒者程度対象の国家公務員採用試験を受験し、合格後に気象庁の採用面接を受け、採用される方法。受験資格は学部や学科を問われない。「気象予報士の資格は必要ないが、予報の仕事をする上で物理学に関する知識は必要」と竹川さん。