しみず・りょう 1976年新潟県生まれ。UEI代表取締役社長兼CEO。電気通信大学在学中に米マイクロソフトのゲーム機開発に携わる。

AI(人工知能)が急速に進化している。囲碁でAIが世界トップ級のプロ棋士に勝利したニュースは世界に衝撃を与えた。AIは未来をどう変えるのだろうか。AIの研究開発の専門家である清水亮さんに話を聞いた。
(秋山千佳)

──そもそも、AIとは何か教えてください。

 AIは英語でArtifical Intelligenceです。インテリジェンスとは何か。ある英英辞典によると、知能とは「知識と技能を獲得して適用できる能力」となります。そう考えると、AIはかなり実現できています。ただ、この1世紀以上、人間の知的作業・知的労働の機械化は進んできましたが、今までのAIには最後のピースが欠けていました。それは「技能の獲得」、つまり「ただ見ているだけで学び取る」ような能力です。

今年3月、グーグルの人工知能のアルファ碁がプロ棋士に勝利したのは、技能の獲得の大きな進歩です。以前は、人間と互角に戦うだけでもすごかったのです。

さらに先日、米グーグル社の研究チームが、ほとんどの質問に答えられるAIを発表しました。人間の言葉を聞いて頭で想像して答えが出せるようになったわけです。文章化されている知識なら全て吸収して、関係性を答えられる。日々、AIの知性が高くなっているのです。

飲食業に革新が起きる

──AIが仕事をどう変えるのでしょうか。

AIの効果が最も高いのは(これまでなら人間が認識能力を使って手を動かす作業の多かった)漁業や農業などです。AIを理解しているエンジニアが農業に関わり、世界的に戦える強い産業にできる可能性があります。

ほかには飲食業もAIによる革新が大きい。冗談のように聞こえるかもしれませんが僕は今、うまい焼き鳥屋の職人が焼く様子を映像に撮って、AIに学習させられないか実験しようとしています。焼き鳥の焼き方はAIが学習可能な技能です。

日本の食文化の水準は日本人が考えるより非常に高いものです。どの店に行ってもうまいラーメンが食べられる日本のような国は、ほかにないんですよ。つまり、日本の水準で店を出せれば、世界中どこでもトップを取れます。

AIに作り方を学ばせて、日本食のうまさをただ輸出するだけで、仕事になる日が来ると思います。仕事にどうやってAIを適用できるかを考える。それができないと、これからの社会で活躍することは難しいでしょうね。

今学ばないと将来不利に

──5〜10年後に、私たちの生活で具体的に変わる点はありそうですか。

今後のターニングポイントは「仮説を立案できるAI」でしょう。どれくらい革命的かというと、高速な人工知能エンジンを使って人間が思いつかないような仮説の立案・解析が高速でできるようになり、がんを克服して寿命を延ばせるようになる可能性がある。「10年以内にAIが不老を解明する」という研究者もいるほどです。それは大げさにしても、多くの病気が治せるようになるはずですよ。

──AIの急速な進化で、高校生の今後に影響はありますか。

AIに関することなら、何でもできなきゃいけない。じきに小学生でもAIを使えるようになります。プログラミングから実行まで。そうなると学習のスタートが遅れる今の高校生は不利な状況です。AIを使わない人や使いこなせない人は、使える人に負けてしまいます。

──今の高校生も使いこなせるようになれますか。

興味さえあれば、できると思いますよ。実はAIのプログラミングは難しくありません。いまやプログラミングの世界では一番簡単な部類に入ります。だからやった方がいい。AI自体は独学で十分勉強できます。

 著書紹介 

よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ(KADOKAWA、税込1,836円)

 

自らもAIの研究開発に携わる清水さんが、AIや深層学習(これまでの機械学習技術に比べて格段に層が深く、より複雑で高度な概念を扱えるAIの学習手法)について解説するとともに、最先端の日本人研究者8人と対談。「農耕革命に匹敵する発明」とまでいわれる深層学習が切り開くAIの可能性を探る。