中学よりも授業の進度が速く、日々の積み重ねが重要な数学。内容を理解するためには、どうやって勉強すればいいのだろう。おすすめの参考書を塾講師の綿引和巳さんに聞いた。(木和田志乃)

おすすめの数学の参考書は?

数学はつまずく生徒が多い

―数学の参考書はいつ購入するのがベストですか? 

塾で指導していると、数学は学校指定の教材についていけない生徒が、他の教科に比べて圧倒的に多いです。多くの学校で指定されている参考書は問題のレベルが生徒と合っていないだけでなく、解答・解説が略されている場合も多い。だから「なぜその答えになるのか」がわからず、生徒にとってはあまりにも難しいのです。

授業の進度も速く、十分理解する時間もない。これでは数学が苦手になってしまいます。数学だけは高校入学時、あるいはできるだけ早い時期に指定以外の参考書を買った方がいいと考えています。

【苦手な人】薄い参考書がおすすめ

―数学が苦手な人におすすめの参考書を教えてください。

レベル別になった、1冊のページ数が少ない参考書を積み上げていく方法で学習を進めていくことが多いです。説明も講義形式や会話形式など、わかりやすく親しみやすいように工夫されているものが増えています。

講義形式で薄い参考書の代表格は『初めから始める数学I』(マセマ出版社)のシリーズ。各項目で基礎知識や注意点などを十分に説明してから練習問題に取り組むという構成です。説明の冒頭は「おはよう」という呼びかけから書き始められているので、授業を受けているかのような参考書です。『やさしい高校数学(数Ⅰ・A)』(学研出版)は先生と生徒の会話形式で説明が進み、つまずきやすい点も生徒が質問する形で取り上げて、先生がやさしく解説しています。

数学が苦手な生徒の中には問題が解けないと答えをひたすら写したり、まったくわからなくて放心状態になってしまったりする人がいます。この2冊は解き方を省略せずに手順を踏んで説明しているので、解くためのポイントがわかりやすく、解いてみようという気持ちになるようです。

【得意な人】白チャートで基礎固め

―難関大志望者や、数学が得意な人におすすめの参考書を教えてください。

ロングセラーの「チャート式」シリーズは難易度別に4色に分かれており、白、黄、青、赤と難易度が高くなります。「白チャート」と呼ばれている『新課程 チャート式基礎と演習数学Ⅰ+A』(数研出版)はチャート式の中では簡単ですが、他のシリーズにはない公式の証明が載っているほか、レクチャーや質問コーナーが充実しています。隅から隅まで読み込んでやってみると、難関大学志望者の基礎固めになります。

数学が得意な人には『大学への数学 1対1対応の演習/数学I』(東京出版)をおすすめします。「こんな発想があるのか」と驚かされ、数学をより楽しめるようになるひねった問題が集められています。説明は不親切でわかりにくいですが、わかりにくさと格闘するのも勉強になります。

綿引和巳さん 

わたひき・かずみ Seras学院学院長。1987年生まれ。三重高校(三重)、京都大学理学部卒業。同大学院理学研究科生物科学専攻修士課程修了。通信系企業にて医療情報のシステム構築に従事した後、2019年高校生専門学習塾Seras学院(大阪府茨木市)開校。これまで高校生に1000冊以上の参考書を提案。