駅や道端に捨てられたビニール傘が問題になっている。江戸川学園取手高校(茨城)の1年生6人でこの問題を解決するべく、ビニール傘をリサイクルした商品を製作し、ネットショップで販売した。活動にかける思いを、代表して相良優佳さんに聞いた。(写真・学校提供)

廃棄される傘からバッグとハンガーを製作

―みなさんは「サスティナブラザーズ」という模擬企業を結成し、ビニール傘をリサイクルし「アンブラザーズ」という商品を製作・販売したそうですね。一体どんな商品なのでしょうか。

傘から作ったビニールバッグとハンガー、ステッカーのセットです。バッグはビニール部分を、ハンガーは骨組み部分を再利用しました。3種類のセットを販売していて、一部商品には布の傘から作った巾着や、バッグ用のスカーフが付きます。バッグはビニール素材なので、雨にぬれたりお茶をこぼしたりしても問題ありません。

日本では、1年間に廃棄されるビニール傘が約8000万本あります。再利用することで、SDGsの目標のうち「つくる責任 つかう責任」「気候変動に具体的な対策を」「陸の豊かさも守ろう」の達成につながると考えました。

販売したバッグとハンガー

―どのくらいの数を販売しましたか?

販売セットは全部で3種類用意しました。バッグとハンガー、ステッカーの3点セット(税込み780円)が一番人気で、100個ほど販売しました。次いで人気だったのは上記3点と巾着のセット。他には、上記3点にバッグ用スカーフが付いたセットを販売しました。

285本の傘を回収

―なぜビニール傘に注目したのですか?

学校で学期末に廃棄される傘や、雨の日に電車に置き忘れられる傘を見て、傘の廃棄問題に関心を持ちました。中でもビニール傘は安価で手に入りやすく、使い捨てられることが多いです。なので、私たちはビニール傘の大量廃棄問題の解決のために行動を起こすことを決めました。

―商品は誰が、どうやって作ったのでしょうか。

メンバー6人で、全ての商品を手作業で製作しました。まずは回収した傘をビニール部分と骨組み部分に分解します。バッグになるビニール部分は水で汚れを落としてから重曹を使って消臭。水気をタオルでふき取ってから、バッグの形に折って熱で圧着し、持ち手用のひもを取り付けます。

骨組みはハンガーになります。ペンチを使って解体して、はんだや接着剤で組み合わせ、糸や針金で結びます。

製作中の様子。ビニールを折りたたみ、余分な部分をはさみでカット

バッグの耐久性を高めるために、ビニールは2枚重ねています。試作品を作る際には計2.1kgの辞書3冊を入れて振ってみましたが破れませんでした。

―6月、高校生が模擬企業を作り、自分たちで考えた商品をネットショップで販売する「リアビズ 高校生模擬企業グランプリ」出場したと伺いました。

企業名の「サスティナブラザーズ」は、「持続可能な」という意味の英単語「sustainable」と、「仲間」という意味の「brother(s)」を組み合わせました。おしゃれや「映え」に敏感な10代から40代の女性をターゲットにしていて、役職は社長、経理部長、仕入れ部長、仕入れ部、人事法務部、広報マーケティング部で分けています。

―商品製作のため、285本の傘を集めたと伺いました。どうやって集めましたか?

私たちが通っている学校の生徒や保護者に協力してもらい、不要な傘を回収しました。ほかにも鉄道会社や市役所、ショッピングモールにも声をかけて、廃棄予定の傘を集めました。

部活や勉強と両立して準備を進める

―開発にあたり苦労したことと、それを乗り越えた方法を教えてください。

製作方法を決定することが一番大変でした。委託せず、全て私たちで開発したので、初めは問題が山積みでした。例えば、傘が想定よりも汚れていてサビ取りの工程が必要だったり、ハンガーの耐久性がなかったり、商品の見た目が悪かったり……。実際に行動して分かる問題もたくさんありました。

メンバーの6人

解決のためのアイデアを皆で出し合い、試し、改善して、というサイクルをひたすら回しました。特に反省・改善を行うためのミーティングは、何度も何度も時間をかけて行いました。1つの議題で2時間を超える話し合いを行ったこともあるくらいです。

大会の1次審査を通過してから販売開始までの準備期間が3カ月しかなく、勉強や部活と両立しなければならなかったので、とにかく時間がありませんでした。その中で、使える時間を有効に使うために毎日タスク管理と進捗(しんちょく)確認を行いました。

―開発を通して身に付いた力はありますか?

開発は全て私たち自身で試行錯誤して行ったので、物事を自分で考える癖がつきました。さらに準備期間が短く、「販売開始までに間に合わせなければいけない」というプレッシャーがずっとありました。そのような状況だったので、「失敗に挫折せず、ミスをしたら必ず次に生かす」という考え方が身につきました。

―今後の展望を教えてください。

販売は期間限定だったため、10月いっぱいをもって終了しました。しかしこの経験を生かして、各自でまた環境問題、とりわけゴミ問題の解決に向けてアクションを起こしていきたいです。