返還不要の「もらえるお金」である、「日本学生支援機構」の給付型奨学金。自分は対象なのかどうかや、申し込み方法が分からないという高校生は多いはず。奨学金に関する最新の情報とともに、奨学金アドバイザーの久米忠史さんが詳しく解説します。(中田宗孝)

申し込み方法は2種類

―「日本学生支援機構」の給付型奨学金ってなんですか?

「給付型奨学金」は、返還する必要がない、もらえる奨学金です。貸与型と同じく給付型も、高校3年生のうちに申し込む「予約採用」と、大学や専門学校に入学後に進学先を通じて申し込む「在学採用」の2つの申込み方法があります。予約採用の申し込み時期は、高校3年生のうちに「高校を通じて3回」です。

貸与型と同じく「予約採用」と「在学採用」がある(『もらえる! 借りる! 奨学金の完全活用ガイド2022』(合同出版)参考)

在学採用の場合、申し込み時期は、春(一次募集)と秋(二次募集)の年2回です。

―採用基準を教えてください。

給付型は「成績」「収入」「資産」の3つの基準によって、奨学金をもらえるかどうか判断されます。

成績基準は、「高校の成績が5段階評価で3.5以上」「将来、社会で自立して活躍する目標を持って、進学しようとする大学等における学修意欲がある」という基準です。収入基準は、学生本人と保護者の収入を合わせて審査されます。収入に応じて「第一区分」「第二区分」「第三区分」に分けられ、区分ごとに支給される金額が異なります。

資産基準は、預貯金や株といったすぐに現金化できるものを指し、土地や建物などの不動産は含まれません。

給付型のみだと金額が不足するケースも

―給付型の支給額や注意点は?

給付型は、国立・公立・私立か、通学環境によって支給金額が異なります。

給付型奨学金の支給額は採用区分によって異なる(『もらえる! 借りる! 奨学金の完全活用ガイド2022』(合同出版)参考)

給付型だけでは、学生生活を過ごす金額としては不足するケースが多いです。貸与額奨学金や入学時特別増額貸与奨学金との併用が可能なので、これらの「借りる奨学金」も給付型と一緒に申し込むべきかどうか、きちんと検討してください。

国による無償化政策もチェック

―「高等教育の修学支援新制度」とはなんですか。

同機構の給付型奨学金に加えて、進学先の入学金と授業料の減免支援を行う国の取り組みを「高等教育の修学支援新制度」と呼びます。つまり、給付型奨学金と学費の減免はセットと考えてください。

ただし、それぞれに手続きが必要となることを理解しておくことが大切です。予約採用の採用候補者は、大学などの入学直後に「進学届」を行えば、奨学金の支給が開始されます。そして、学費の減免を受けるには、進学届で給付型奨学金の権利を確定させた後、入学した大学や短大・専門学校で「学費の減免申請」を行う必要があります。手続きの詳細は、進学した学校に確認してください。

―2024年度から変更点があると聞きました。

これまで世帯年収などに応じて3つの採用区分を設けていましたが、2024年度から「第四区分」が設定されます。高校3年生のみなさんは、現行の区分で申請が通らなくても、もしかしたら第四区分の条件を満たしている可能性も。来年春の入学後に自分が対象になるか調べてみましょう。

 
久米忠史さん 
奨学金アドバイザー。株式会社まなびシード代表取締役。奨学金制度のスペシャリストとして、高校・大学で講演、全国各地での進路相談会を年間150回以上行う。最新共著『もらえる! 借りる! 奨学金の完全活用ガイド2022』(合同出版)。ホ―ムペ―ジ「奨学金なるほど!相談所」(https://shogakukin.jp/