サンゴ礁に住む魚の中には、性転換する魚がいるって知っているかな?

ホンソメワケベラはその一種。直径約50㍍の縄張りの中で、オス1匹と5匹程のメスが暮らす、一夫多妻の魚だ。オスはどのメスよりも体が大きくて、縄張り内を見回りながら、毎日満潮時に5匹のメスと順々に産卵行動を行っているそうだ。

ところが、オスが死ぬなどして見回りが行われなくなると、縄張り内で一番大きいメスが、オスの代わりにすぐさま見回りを始めるようになる。3週間程度たつと、このメスの卵巣は小さくなり、体内にあった精巣の細胞が発達して、本物のオスになってしまうんだ。

体が大きいメスがオスになるのは、「多くの子孫を残したい」という習性が強く関係しているそうだ。メスのままだと自分1匹分の受精卵しか、わが子にならないけれど、オスになれば縄張り内のメスの受精卵すべてをわが子にできるわけだから、オスになったメスにとっては満足できる性転換なのかもしれないね。

 

最近では、ホンソメワケベラの〝独身〟になってしまったオス同士が出会うと、体の小さい方のオスがメスに戻る場合があることも確認されたそう。

ほかにも、クマノミはオスからメスに、ダルマハゼはオスにもメスにも性転換できるんだって。こうした魚たちは、自分の子孫を多く残すため、それぞれの習性や置かれた環境によって性転換し、生き延びているんだね。(山口佳子)

●取材協力 桑村哲生先生(中京大学国際教養学部教授)理学博士 沖縄に通い、自らサンゴ礁の海に潜って魚の行動や生態を観察し、進化の要因を探っている。