応募総数15,432作品が寄せられた國學院大學・高校生新聞社主催『第26回全国高校生創作コンテスト』。各賞ならびに学校賞が決定しました。応募数の詳細と各賞の結果は以下の通りです。                        

【応募総数】
15,432作品
・短篇小説の部:675作品 
・現代詩の部   :876作品
・短歌の部      :3,369作品
・俳句の部      :10,512作品

団体賞

【文部科学大臣賞】
神奈川・横浜雙葉高等学校
【特別学校賞】 
福岡・西日本短期大学附属高等学校
岡山・津山工業高等専門学校

 短篇小説の部

【最優秀賞】
  「ロックを止めないで
   西尾 実優北海道札幌啓成高等学校2年生)
   ★作品はこちら★
 
【優秀賞】
  「三文字」 吉田 璃子(京都府立東舞鶴高等学校 浮島分校1年生)
  「良心の優しさ」 小倉 遥香(千葉・二松学舎大学附属柏高等学校2年生)
 
【佳作】
  「金魚」 窪 ゆき(東京・潤徳女子高等学校2年生)
  「知らない世界」 戸倉 悠貴(広島県立呉三津田高等学校1年生)
  「左側の花灯り」  
   和田 七望(東京・精華学園高等学校 探究アカデミー東京校2年生)
  「一皮」 田代 蒼太(埼玉県立浦和高等学校3年生)
  「夢想画家」 近藤 聖斗(愛知・桜丘高等学校3年生)
 
【入選】
  「フリッカー」 津島 壮良(広島県立呉三津田高等学校2年生)
  「私の妹」 相原 光希(愛媛・愛媛大学附属高等学校2年生)
  「想い出」 高岡 千波(愛媛・愛媛大学附属高等学校2年生)
  「あの日、空は遠かった」 辻ノ󠄀内 色葉(奈良・智辯学園高等学校1年生)
  「肉の夢」 尾崎 加周(岡山・津山工業高等専門学校1年生)
  「「ただいま」の季節」 植松 はな(埼玉県立浦和第一女子高等学校2年生)
  「おままごと」 松木 乃安(東京・白百合学園高等学校3年生)
  「掃き溜めに鶴」 奥山 和奏(東京都立両国高等学校2年生)
  「群青泥棒」 戸澤 和貴(宮城県立仙台第二高等学校2年生)
  「恋雲」 西元 楓(愛知県立熱田高等学校2年生)
 

 現代詩の部

【最優秀賞】
   「夢見草」 泉 まいこ(神奈川県立湘南高等学校2年生)
   ★作品はこちら★
 
【優秀賞】
  「俳句を見られた」 髙橋 尚暉(群馬・東京農業大学第二高等学校3年生)
  「空蟬」 板東 ななみ(愛知県立大府東高等学校3年生)
 
【佳作】
  「ロンダンさんの見た景色」 上原 菜々陽(神奈川県立藤沢西高等学校3年生)
  「あたし性格わるい」 内田 心桜(新潟県立高田高等学校1年生)
  「秋巡る」 杉山 咲(秋田県立湯沢翔北高等学校1年生)
  「花車」 マーリー ネベヤ(神奈川・北鎌倉女子学園高等学校3年生)
  「ゆら」 木村 美月(東京都立大泉高等学校2年生)
 
【入選】
  「缶詰」 林 香澄(埼玉県立浦和第一女子高等学校1年生)
  「紅い檸檬」 辻 雄斗(海外・International School of Dusseldorf3年生)
  「海のわすれもの」 田口 瑛美莉(東京・田園調布学園高等部2年生)
  「キャッチューの魔法」
   若林 実里(海外・上海外国語大学附属外国語学校2年生)
  「鉄の海」 岡田 陽(奈良・西大和学園高等学校1年生)
  「花火」 豊田 隼人(東京・国際基督教大学高等学校3年生)
  「輪郭」 豊田 花奈(東京・女子学院高等学校3年生)
  「鳩の足、わたしの羽」 間宮 梨花(神奈川・横浜雙葉高等学校3年生)
  「ガラス瓶」 杉野 迅(岡山・津山工業高等専門学校3年生)
  「さがしもの」 菱沼 大生(山形県立山形南高等学校3年生)
 

 短歌の部

【最優秀賞】
早川 彰太郎(福岡・西日本短期大学附属高等学校3年生
「西短」の長き伝統守り抜くプライド懸けたストレート投ぐ
 
【優秀賞】 
  「「手」を「出」すなその人信じ歩ませろ手出しされると「拙」きままに」
   翁 謀業(東京都立墨東特別支援学校3年生)
 
  「戻りたいそんな時代があるのならより戻りたい未来を創れ」
   五十嵐 千華(埼玉県立浦和第一女子高等学校2年生)
 
【佳作】
  「卵とか風船だとかこころとかあえてわられず居るもの達よ」
   古田 弘珠(広島県立広島高等学校3年生)
 
  「「正しい」を目指し前向き行進し他者の正義を踏むことなかれ」
   阿部 海音(宮城県仙台第三高等学校1年生)
 
  「怪我重ねナインに託す最後の夏かける言葉はだれより熱く」
   重松 龍也(福岡・西日本短期大学附属高等学校3年生)
 
  「黒土と汗を纏ったユニフォーム洗う母への感謝の一打」
   矢野 颯大(徳島・徳島市立高等学校2年生)
 
  「言の葉を薬にするか刃にするかはの使い道誤る勿れ」
   植野 寛子(静岡県立富士東高等学校2年生)
 
【入選】
  「兼六園枝や葉一つに込められた庭師さんの想いが伝わる」
   山本 凜子(埼玉県立浦和第一女子高等学校1年生)
 
  「薄桃に染まる大きな雲みれば優しいあの人の声が聞こえる」
   若林 ありさ(静岡・静岡雙葉高等学校2年生)
 
  「「ヤッテマレ」市内を周る立佞武多燃え盛りゆく津軽魂」
   松元 雄仁(青森県立五所川原高等学校1年生)
 
  「波間にも土にも風にも還れない海原のプラスチックの孤独」
   鈴木 つくし(千葉県立千葉女子高等学校3年生)
 
  「知らないと割り切るわけにはいかなくて不器用なりに折る千羽鶴」
   新田 冬和(東京・國學院大學久我山高等学校1年生)
 
  「仕事して学校に行く我なれば沁み沁みと読む啄木の歌」
   大沢 瑞希(茨城県立結城第二高等学校4年生)
 
  「腕相撲今の俺なら勝てるのに超えられぬまま逝きし父親」
   渡部 龍馬(福岡・西日本短期大学附属高等学校3年生)
 
  「父だけが抱くかなしみは毎年の逝きし母との結婚記念日」
   植松 幹太(福岡・西日本短期大学附属高等学校3年生)
 
  「「好きです」をのどから胸へ押し留む貴女とあたしは親友だから」
   小田長 心花(神奈川・横浜雙葉高等学校2年生)
 
  「喧騒に殺されそうで逃げ込んだ弱冷房の銀河鉄道」
   上田 杏(群馬県立高崎女子高等学校2年生)
 

 俳句の部

【最優秀賞】
宇都宮 駿介(愛媛県立松山東高等学校3年生)
      囀や襖絵の山遥かなり
 
【優秀賞】
  「両翼にひかりを集め巣立ちゆく」
   池松 碧海(福岡・西日本短期大学附属高等学校3年生
 
  「切り株のごとき猪闇濃き夜」
   横溝 惺哉(宮城・クラーク記念国際高等学校 仙台キャンパス2年生
 
【佳作】
  「八月が氷のように溶けていく」 橋本 梨音(埼玉県立深谷商業高等学校2年生
 
  「霜焼の指で星座の線を引く」 戒能 李咲(福島県立安積黎明高等学校2年生
 
  「人形の曇る紫眼に忘れ雪」
   和田 七望(東京・精華学園高等学校 探究アカデミー東京校2年生
 
  「若葉してクリアファイルを新しく」
   福山 航生(埼玉・慶應義塾志木高等学校3年生
 
  「夏草ゆらり平和主義者の寝言」
   菅原 響(福島・第一学院高等学校 郡山キャンパス2年生
 
【入選】
  「稲妻や闇夜に浮かぶ父母の顔」 佐々木 藍里(秋田県立秋田高等学校2年生
 
  「むきだしの鉄骨錆びて原爆忌」
   新野 みちる(埼玉県立深谷商業高等学校1年生
 
  「山々に簪さして藤の花」 松川 洵子(山口・柳井学園高等学校2年生
 
  「トロンボーン炎えたつ空を貫けり」
   遠藤 千浩(福岡・西日本短期大学附属高等学校3年生
 
  「壮絶な吹雪の中の道を行け」 金 壮道(東京・東京朝鮮中高級学校1年生
 
  「憧れはかじかんだ手の行き所」 大谷 咲桜(千葉県立成田国際高等学校3年生
 
  「入道雲ごくり唾飲む模擬試験」
   村松 奏哉(東京・東京大学教育学部附属中等教育学校1年生
 
  「白銀の荒野を駆ける狐かな」 松本 悠佑(兵庫・雲雀丘学園高等学校2年生
 
  「殿様バッタ優先席にドシン」 松枝 栄樹(山形県立山形南高等学校3年生
 
  「太刀風で風邪を断たむと竹刀振り」
   小山 涼(埼玉県立浦和第一女子高等学校2年生
 
 

短篇小説の部 最優秀賞作品 

ロックを止めないで
 二年ぶりの通常開催となった学校祭は異例の盛り上がりを見せていた。
 私と先輩が体育館に行くと、観客の生徒はもう席についていた。見た限り満員だ。私と先輩は体育館の後ろの方に立ち、意味もなく壁にもたれた。ステージ部門のたび放送委員が数人配置されるのは、機材トラブルに対応するためらしい。一枚百円のチケットを買わずに見られるというのは些か得をした気分だった。
「あのギターボーカルの子、友達なんだっけ?」
 先輩はそう言って、まだ薄暗いステージの上を指さした。意識の外側から飛んできた言葉にどきりとして、肩が少し震えた。
「え、なんで知ってるんですか?」
「前に言ってたじゃん。同じ中学だった子が有志バンドやるんです、って」
 そんなこと言っただろうか。全く記憶に無い。言っていたとして、どこまで話したのだろう。
 ギターボーカルの子、流香とは確かに同じ中学からの友達だった。三年間同じクラスで、きっとお互い、親友と言っても差し支えないような関係。否、関係「だった」と過去形を補うのが適切だろうか。
 私と流香はもう一年以上まともに会話をしていない。
「ロックだなぁ、お前の友達。金髪だし、ピアスもバッチバチに開いてるし。痛くねえのかな、あれ」
 先輩は呟く。私は袖に見える流香の、米粒よりも小さくしか見えない耳朶に目を凝らしながら、
「元々、周りの目とか気にしない子なんです。私とは真逆のタイプで」
 とマウントじみた言葉を添えた。
「お前はロックに生きなくていいんだ?」
 先輩は私をからかった。言い返そうと口を開いたが、途端、体育館の照明がふっと落ちた。それと入れ替わるように、後方にセットされた特設のスポットライトがつく。円形の光が交差し、ステージに立つ暗闇の中に楽器を持った男女の姿が浮かび上がった。流香を含めた四人のメンバー。私は息を飲む。
「学校祭、盛り上がってますかーっ⁉」
 マイクを通して聞こえてきたのは流香の声だった。生徒たちは、うおおっと大きな拍手でそれに応えた。ペンライトみたいなものもちらほら見える。
「じゃ、早速一曲目、行きまーす!」
 今度は手を叩く間も無く、流香の手にしたギターが一度だけ鳴る。それからドラムスティックのカウントの後、体育館は突然ビリビリと揺れた。
 曲は一曲目から飛ばしていた。激しい曲調に、圧倒的なその熱量はステージ下にいる私たちにまで十分に伝わる。
「……上手いな、ギターも歌も。まだ一年生なのに」
 先輩がぼそりと呟いたのを、私は聞き逃さなかった。黙って頷く。
 流香のギターボーカルは、素人目から見ても上手かった。声はよく出ているし、指も忙しなく動く。私から見た流香はせいぜい「運動神経抜群」くらいだったので、こんな特技があったのかと呆気に取られた。
 でもそれ以上に驚いたのは、流香の顔つきだった。あんな顔をする奴だったろうか。まるで別人のようだ。前までの彼女からは想像できないほど凛々しく、それでいてどこか艶めかしい。その視線の先には誰がいるのだろう。少なくとも私ではないことは確かだ。
「眩しいですねえ」
 ね、先輩。私は斜め上にある瞳を見上げ、共感を求めた。先輩はそれを鼻で笑った。
「憎いんだろ?」
「まぁ、そりゃあ。一番の友達でしたから」
 自分から聞いてきたくせに、先輩は興味なさげに顔を背けた。
 私は先輩の、こういう、ひねくれているところがとても好きだ。良くも悪くも飾り気のない人というのは、彼のような人を現すのだと思う。恋愛感情とは違う、人間的に真っ直ぐな好意を持てる。
 私は笑って、ぐっと伸びをした。体の力が抜けて床に座り込む。流香の歌声が、ギターが、体育館をビリビリと揺らす。床越しの振動で体が痺れそうだった。
 体育座りで膝を抱え、呆然とステージを眺める。その姿勢は、私の記憶を一年前の夏へ無理やり引き戻した。炎天下、じゅわっと熱されたタータンの熱さ。日差しがうなじを突き刺す感覚。汗と涙とで訳の分からなくなった、私と、流香の顔。
 中三の最後の大会だった。
 突如として流行り始めたウイルスに人々は多くの当たり前を奪われ、それは私たちの所属していた陸上部も例外ではなかった。
 「流香みたいに走ってみたくて」。
 大きく削減された大会出場枠の中で、私はギリギリその枠へ滑り込んだ。流香より半年遅く入部した私が勝ってしまった。
 私は流香の努力を何より分かっていたし、正直な話、彼女ほど陸上に本気では無かった。だからこその後ろめたさがあった。彼女に何度もアドバイスをしてもらった。顧問の期待や記録など、そんなものは何にもならない気がした。
 あの夏から何となくお互いギクシャクしてしまって、高校生になった途端、関わりはパタンと絶えた。高校も同じところを選んで受けたわけではない。高校生になったら離れられると思っていたのに。
 璃子は辞めないで。走るの、辞めないで。才能があるんだから。私はここまでだけど、璃子はまだどこまでも走っていける。
 引退式の後、二人きりの帰り道で泣きながらそう言った流香を、私はまだ覚えている。
 流香が言った通り、本当にどこまでも走っていけたらどんなに良かったか。私はまだあの夏から立ち止まったままだ。結局、流香の方が私より幾分か進むのがはやかった。
 生徒たちは熱を上げていく。流香も他のバンドメンバーも喉を軋ませながら声の限り歌い続ける。
 変わったなぁ、流香。
 悔しかった。走る流香を初めて見たとき以上に。けれど、今の方が輝いているとも思った。髪の毛は明るい色に染められて、スポットライトを受けて光るそれは金糸のようだった。
 流香は変わった。挫折の夏を抜け出して、彼女が手に取るのはもうタスキでは無い。
 それでも流香は私の前を走り続けていて、私はいつまでも、その背中を追っている気がする。タイムとか順位とかそういったものの外側で、流香は私のずっと先を行っている。私の行動の根元には必ず彼女の姿がある。
「……やっぱり、憎いな」
 流香のことが、心底羨ましい。
 私はきっと一生、この人には追いつけないだろう。
 そう思うと、胸の奥がチクリと痛む。この気持ちを誰かに分かってもらいたくてたまらなくなる。気がつけば、一曲目は既に終わっていた。体育館全体、余韻が尾を引いている。誰かが何かを喋る熱気の中で、私はひたすら自分と向き合っていた。
 お前はロックに生きなくていいんだ? ──私はこのまま生きるのか。変わらない、変われないまま。
 私は自分の足を見下ろし、勢いよく立ち上がった。
 諸行無常という言葉があるように、誰もがずっと同じであるわけが無い。そうして変化を経た流香の姿も私は十分に好きだ。だからこそ、次にスタートを切るのは私だという気がしてならない。
 まだ大丈夫だ。走れる。そう自分に言い聞かせてみる。 
 流香と話し合う機会は、分かり合う機会はもう無いかもしれないけど。中学生の頃みたいに笑い合うこともないかもしれないけど。
 そんなことを考えていると、耳を劈くギター音と共に二曲目が始まった。
 熱を持つ何かが私の胸の中でじくじくと燻っていた。本当は叫び出したい気分だったが、ウイルスの四文字により制限されているのがもどかしかった。立ちくらみを抑え、他の生徒と一緒になって手を叩く。
 流香のピアスが、汗が、小さな飛沫のように光るのが見えた。ラメみたいだ。キラキラ、なんて言葉では足りないほど。
 音の渦に身を埋めながら、私は流香を追い続ける。中学生の頃の自分が、少しだけ救われる音がした。

 

現代詩の部 最優秀賞作品 

【夢見草】

つぼみが緩めば、うっすらと色づきはじめる
淡桃色と表せば、不貞腐れてしまうだろうか

同じ時期に満開になる花は可哀想
いや、得なのか

「まだ咲かない」

その花が目に映る違和感、既視感
つぶつぶと、しゅわしゅわとした

振り向いて気がつく
こんなに美しい道を通って来たのかと

「その並木に信号機はあまりにも映える」

手を伸ばせば届きそうなのに、決して届かない位置に咲くのがもどかしい
でもそこが、ずるがしこくて好きだという

届かないのに手を伸ばす子供は滑稽か
ただその姿は美しく、彼らはいつかきっと届く

「何が誇らしくてこんなに満開になるのか」

暖かい風に一心不乱にその花を散らし
春を降らせる

交差点の真ん中で踊る花びらの気持ち
ホームの線路上で遊ぶ花びらの願い事

「その木の影は青いという」

その花は拾いたくなる
花びらは指の間をほろりとぬける

散りゆきはしないと想うだけ
光の粒のように舞いゆくだけ

「桜を殺せるのは曇天だけ」

ご応募いただき誠にありがとうございました。            
本コンテストは来年も実施予定です。詳細は2023年4月以降に発表いたします。


國學院大學ホームページにも受賞結果を掲載しています。こちらからご覧いただけます。