日本大学工学部は、人々の健康や地球環境に配慮した持続可能なライフスタイル「ロハス(LOHAS)」を工学に取り入れた「ロハス工学」を推進する。

次世代エコカーのコストダウン普及につながる材料研究

有機材料化学研究室が行っているのは、「材料」の研究・開発だ。「吸水と抗菌作用を同時に実現する紙おむつの材料」「レンズが曇らないようにする材料」といった、人々の日常生活を便利にする材料開発のため、学生たちは試行錯誤を重ねている。「気になる『材料』が見つかれば、それをとことん突きつめた研究ができる環境です」と話すのは同研究室の市川司専任講師。

「世の中にない新しい『材料』を自分の手で生み出したい!」市川先生自身も、高校時代は希望に胸を膨らませていたという。有機材料化学研究室が注力する研究の一つが、水素を燃料に走行する「燃料電池自動車」に利用可能な燃料電池の材料の開発。大手自動車メーカーが“次世代エコカー”として販売する同車だが、生産コストがかかり車両価格が高額となるため、一般普及にはほど遠いのが実情だ。

市川 司専任講師

「この車の燃料電池に使われる“白金”も高価なんです。そこで私たちは、白金よりも安価で同等の活性を持つ『非貴金属担持型炭素触媒(脱白金触媒)』の開発を進めています」。

この研究は、学生主体で行われており、企業との共同研究の段階に入ってきているという。同研究室の学生たちは、大学院への進学率が高いため、長期にわたって研究に携わり、成果を残している。市川先生は、「低コストの燃料電池が実用化されれば、自動車はもちろん、家庭用エネファーム(自宅で発電できるシステム)にも搭載でき、ひいては『低炭素社会』『ロハス』に繋がっていくと考えています」と、展望を話す。

入学後にどんなことをしたいかで大学選びを

また、市川先生は自らの専門である高分子(分子量の大きい化合物の総称)の研究を応用した「抗菌材料の開発」を進めている。コロナ禍により、感染予防対策や衛生的な生活環境に気を払う昨今、抗菌・抗ウィルスを掲げた製品の開発は、人々の生活を豊かにする取り組みの一つといえる。

「病院、老人ホームの手すりや床、スマホやタブレットのタッチパネルの表面に貼るフィルムなどに抗菌性を示す高分子材料を塗って菌の増殖を防ぐ。いずれはこの抗菌材料が医療器具にも使えないか構想しています」

理系大学を志す高校生に向けて市川先生は、「大学名だけではなく、入学後どのような研究をしたいかを思い描いてください」と、エールを送る。「研究は地道な日々の積み重ね。だからこそ、自分が面白いなと感じる研究内容で進学先を決めて欲しいと思います」

センパイVOICE

――燃料電池自動車などに使える「新しい材料」の研究・開発の中でやりがいを感じる瞬間は。

〈松本〉まだ世の中にない新しい材料を作りたい思いで、大学院生の今も研究を続けています。自分の作った材料が実社会で活用できるのか、「評価」を繰り返します。やはり良いデータが得られたときは嬉しいです。
〈灰谷〉私はこの研究を始めたばかり。新しい材料を一つ作るにも、多くの行程を経るため、とても時間がかかることに大変さを感じつつも、環境やエネルギー問題を解決するような材料の開発を目標に励んでいます。

――みなさんの研究室はどんな雰囲気でしょうか。

〈松本〉うちの研究室は、静かに黙々というより和気あいあい。行き詰まったとき
は、僕と研究内容が違う人でも気軽に相談や議論を交わせる雰囲気です。
〈灰谷〉一緒に考えてくれる仲間がいるのは心強いですよね。

――理系大学を目指す高校生にメッセージを。

〈灰谷〉自分の知らないニュースや用語を見かけたら、調べて自分なりに考えて
みるクセを付けておくと良いです。大学での研究や議論に役立ちます。
〈松本〉高校での数学の勉強が足りてないなと進学後に痛感しました。ですので、数学を頑張ってくださいと伝えたいです。
 
 
生命応用化学専攻博士前期課程2年 松本寛己さん(福島県立勿来工業高等学校出身)
生命応用化学科4年 灰谷典子さん(福井県立丸岡高等学校出身)
 
 

 

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提供:日本大学工学部