世界に向けて未来を提案しよう!
2030年に向けて──「守るもの」、「壊すもの」、「創るもの」

 2015年12月25日、「NRI学生小論文コンテスト2015」(主催:野村総合研究所・略称NRI)の表彰式が行われた。10回目の節目となった今回、全部門応募総数2,622件のうち、高校生から2,443件の論文が集まった。予備審査、一次審査を経て、特別審査委員である池上彰氏と最相葉月氏を交えた審査委員8名によって選ばれた上位入賞の高校生4名が、表彰式に臨んだ。

表彰式は東京ステーションホテルで開催。NRIの嶋本正会長兼社長が登壇し、「野村総研の企業理念は“未来創発”です。変化の激しい中で新しい価値を見出し、新しい未来を切り拓いていこうというもので、未来の人づくりを目指す本コンテストと主旨を同じくします」と挨拶。

 その後、受賞者に表彰状が贈られた。家族や先生が見守る中、緊張と誇らしさが混じる表情で、一人ひとり賞状を受け取った。

堂々たる論文発表で自らの提言を披露

1人5分間の時間が与えられ、受賞作のプレゼンテーションが行われた。トップを飾ったのは大賞受賞の橋本康平さん(宮崎県立宮崎大宮高等学校1年)だ。現在の二院制のあり方を「無意味」と一刀両断し、民主主義と地方を守るために新たに「地方院」を誕生させようと提案した。

 優秀賞は3名だ。江橋朱里さん(The Hills Grammar School 2年)は、自身の留学生活での経験を生かし、グローバル人材の育成に必要なこととして、日本的な思いやりをあえて「壊す」ことの必要性を提言した。金道慶さん(神戸朝鮮高級学校3年)は、いろいろな働き方をチョイスできる「バイキング式社会」を提案。近藤柚香さん(市川高等学校2年)は、「世界問題」の授業を行うことを主張した。

 特別審査委員による講評後は、祝賀会が行われ、特別審査委員やNRI社員、過去の受賞者も交え、にぎやかな歓談のひとときとなった。

 特別審査委員:池上 彰氏 
作者に会ってみたくなる、そんな小論文を選ぶ

池上氏はまず「どの作品を選考するか、いつも議論が白熱します。応募者の属性は伏せられているため、男女もわからないまま、筆者に会ってみたいと思える作品を選んでいます」と審査の過程にふれた。「今回は高校生の応募が増え、レベルも上がりました」として、それぞれの受賞作について語る。

 大賞を受賞した橋本さんの小論文については「無意味な議会を壊すというのが、過激で素敵だなと。ただ、アメリカでも上院は地方の代表と言われ、その意味では(橋本さんの提言する)地方院と似ています。また、本当に実行するなら、憲法改正も必要。地方の代表として地方院を選ぶと、すべて与党議員になるかもしれないので、そのあたりはどう考えているのかな?」と問題点についても指摘。「今後は、規範的な面についても考える必要がありますね」とアドバイス。

 江橋さんについては「小学校から段階に分けて(グローバル人材育成の)プロセスを具体的に述べたところがよかった」と評価。金さんには「プレゼンがおもしろかった。“平和とは明日を信じること”というコメントが印象的でした」と振り返った。近藤さんには「『世界授業』は私も教鞭を執る大学でやりたいと思っています。“知る”と“わかる”は違い、わかるだけでは世界は変わらない。行動に移すことが大事ということですが、さらにその飛躍を考えてほしい」と今後の考察への期待を述べた。

 特別審査委員:最相 葉月氏 
大学生の文章かと思った大賞の小論文

「プレゼンがすばらしく、私が高校生の頃、こんなに話せたかなと思いました」と最相氏。その一方で、「プレゼンでパワーポイントを使うと行間にある沈黙や相手の気持ちを読むということができなくなります」とパワーポイントを使う弊害についてもふれた。

 大賞について「橋本さんは、この間まで中学生だったのにすばらしい。論点がしっかり書かれていて、最初、大学生の文章かと思いました」と絶賛。「地方の声を届けることに特化した議院を作るということですが、国民一人ひとりが政治に関心をもち、成熟することを提案している点がよかったです」と語りかけた。

 優秀賞の3名については、「江橋さんは、思いやりを壊さずに、議論を戦わせることはできないのかなど、もっと深めてほしかった」とし、金さんには「セカンドキャリアの構築を40歳とするのは、高齢化社会にあって中だるみの年齢と考えると、よい発想ですね」とコメント。近藤さんには「世界中の同じ年の子のことを知ることで、社会の問題を解決しようという提案は、ネット社会だから出てきた発想。今の時代だから可能であり、2030年の教育は、まだまだ変わるんだと思いました」と講評した。

 
 
 

 

 

 

 

 株式会社野村総合研究所 「NRI学生小論文コンテスト2015」事務局
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
TEL.03-6270-8200
E-mail:contest2015▲nri.co.jp(▲を@に変えてください)
コンテストの詳細はこちらへ。http://www.nri.com/jp/event/contest/
2016年度も同コンテストを実施する予定です。 詳しくは4月末にご案内します。