「桑都プロジェクト」は、創価大学文学部インターゼミのこと。大学のある八王子市の町おこしと地域交流をテーマとした、ゼミや専攻、学年を超えた学生プロジェクトだ。2021年度にスタートしたこの取り組みは、メンバーが40名程度まで増え、さまざまなチームを組み地域交流を行ったという。今回は、1期生の中で中心的な役割を果たした3名の学生に話を聞いた。

(左から) 佐々木 孝一さん(大学院2年) 中村 清美さん(4年) 橋山 千穂さん(4年)

コラボまんじゅう・SNS運営・ライター活動。学生がやりたいことに挑戦

―桑都プロジェクトは、どのようにして始まったのですか?

橋山さん 2021年の4月下旬頃から、大学コンソーシアム八王子※の「学生企画事業補助金」に申し込み、八王子の町おこしに取り組もうとしたのがきっかけです。初めは5~6人のメンバーでしたが、事業に採択されてからは徐々にメンバーが増えていきました。桑都とは、古くから養蚕や織物が盛んだった八王子市のこと。地域の人々との交流と町おこしが一番の目的です。

※八王子地域にある25の大学等が加盟する共同事業体。単位互換や情報発信、学生活動の支援を行っている

 

―プロジェクトの概要を教えてください

橋山さん かつて八王子に訪れたことのある考古学者のハインリヒ・シュリーマン(1822-1890)は、ちょうど2022年が生誕200周年と、ゼミの先生に聞いていました。それで、シュリーマンとからめて八王子を盛り上げようというところから考え始めたんです。私は、商店街にある老舗和菓子店・つるや製菓とのコラボレーションで、地元の銘菓「都まんじゅう」の焼き印をシュリーマンにした「シュリーまん」の開発に関わりました。

中村さん 参加したのは、昨年の8月から。SNSを活用して、プロジェクトの活動を発信するチームの一員として活動しました。

佐々木さん 私の場合はお二人とは少し入口が違い、もともと「学生ライター部」として活動していました。こちらも、プロジェクトの先生に後押ししていただき結成した集団で、地元のミニコミ紙などに記事を執筆していました。その後、気づいたら「桑都プロジェクト」に加わっていました。先生は初めから合流させようと思っていたみたいです(笑)。

 

中村さん プロジェクトの活動はほかにもあります。地元の書店と組み、シュリーマンの特設コーナーを用意。私たちが選んだ20冊ほどの書籍を、「学生選書コーナー」として展開しました。そのほか、イベントスペースで企画展示をしたり、SNSを活用した広報など、5つに分かれ、それぞれが役割を持って活動していました。

 

学生プロジェクトだからこそ。3人がぶつかった壁とは?

橋山さん 「シュリーまん」は、かわいいイラストの焼き型を学生が制作して、「都まんじゅう」に焼き印を入れます。当初はシェリーマン生誕時期の12月販売開始の予定でしたが、前倒しして10月にすることにしたんです。その1か月前の9月頃は大変でした。

メンバーが増えていく中で、それぞれが何をやっているのか見えにくくなり、さらには目的がわからないという人も増えていったんです。どうしたらみんなが同じ目的に向かっていけるのかという点ですごく悩みました。

それでも10月1日に販売を開始できた時はうれしかったです。SNSチームが、数日前から「発売まであと〇日」と、販売開始に向けたカウントダウンをしていたこともあり、反響がとても大きくて。新聞の取材も受けました。他学部の友だちからも「知っているよ」と声をかけられたり。お店の方からも、「おかげさまで売れているよ」との言葉をいただきました。みんなで進めることの大変さを知るとともに、大きな達成感が得られたと思います。

 

 

中村さん SNSチームは、TwitterとInstagramの投稿が中心です。どちらもフォロワー数ひとけたからスタート。発信してもなかなか広まらなかったり、最初は葛藤しながら活動していました。だけど、継続していくことによってフォロワーも増えていき、大学の広報の方にもアドバイスをいただきながら、軌道に乗っていきました。フォロワー数も増え、プロジェクトの広報をするという役割を果たせたかなと思います。

投稿は曜日ごとにテーマを決めています。例えば「都まんじゅうは何曜日」というように企画ごとに曜日を決めて、できるだけ毎日投稿しました。テーマや内容は各チーム員が考えて、それを私たちが投稿するという形です。こうした枠組みを私たちのチームで考えました。SNS上でコメントをいただくことも多くて、「まんじゅうを買ってみます」とか、応援してくれる言葉が届いたときはうれしかったです。

大変だったのは毎日投稿することによるネタの不足。それと、応援とともに少数ですが厳しいお言葉をいただくこともあり、投稿する責任を感じたこともあります。

 

 

佐々木さん 学生ライター部の執筆先は、朝日新聞ASA八王子中央店で毎月発行している「ASAメール」というミニコミ誌。もともと八王子の地域の方々に向けて魅力を発信していこうというのがはじまりで、プロジェクトが盛り上がってからは、シュリーマンなどの記事を書くことが多くなっていきました。反響が大きくて、読者の方のコメントは励みになりました。たくさんの方に読んでいただけるということが貴重な経験です。

私たちライター部は、月に1回のミーティングで「何を取り上げるか」といった話し合いをして、取材を進めていきます。テーマは自由で、私は競馬が好きなので、八王子にあった競馬場の話を書かせていただいたり。

大変だったのは、やっぱり部員間の個人差が大きいこと。今の大学生は、新聞記事を読む機会も減っていますし、レポートは書いていても、文章ってどういうものかわからない人も多い印象です。販売店の方からも、学生の中で文章力に差があるといわれていました。そこで西川先生と相談して部内に記者養成塾を開き、それぞれのレベルの底上げを図っています。

 

 

授業や部活、サークルとも違う新しい学びの形

中村さん プロジェクトのメンバーは、最初は5~6人でしたが、現在は40人ぐらいに増えています。

佐々木さん 各チームでLINEグループがあって、チームリーダー同士のグループもあったり、連絡グループが6つか7つあります。自分も全体像が良く分かっていない部分もあるんです。

橋山さん チラシやイラストを手掛けるデザイン部もあり、人によっては兼任しながらやっていたりもします。40人みんなで集まるという機会は少なかったですね。昼休みにミーティングを開催して、学校にいる人は集まり、外にいる人や、学内にいてもオンラインでつないで参加するという人もいました。できるだけ気軽に参加できるように工夫したんです。

佐々木さん プロジェクトを通して、学外の方々と多く関われたのは良かったです。大半の人は、卒業して働きながら社会と関わっていくのが普通だと思います。地域の方や取材先の方と接することは、これまで経験できていなかったことだなと思いました。

橋山さん 普段、限られた友人だけと話していると、どうしても偏った考え方になってしまいがちですが、実際に地域に出ていろいろな人と話をすると、「こういう考え方もあるんだ」と新しい発見があります。広い視点で考えることで、さまざまな人の想いに、より気づくことができると学びました。

中村さん 私は、目標や理想に向けて継続することで、道が拓け、結果につながるということを学べたと思います。プロジェクトのためにもなるし、自分のためにもなりました。

 

 

桑都プロジェクトで取り組んだことの一部を紹介!

【シュリーまん】
ハインリヒ・シュリーマンのキャラクターイラストが焼き印された「都まんじゅう」を地元和菓子店のつるや製菓と共同制作。2021年10月1日~2022年2月15日の期間限定販売。
 
↑桑都プロジェクト公式Twitterより
 
【シュリーマン生誕200年記念 学生選書コーナー】
地元書店のくまざわ書店と組み、学生が選んだシュリーマンに関する書籍を特設展示。紹介文が書かれたPOPも学生たちの手作り。
 
 
↑桑都プロジェクト公式Instagramより
【オリジナルLINEスタンプ】
学生が作ったシュリーマンのキャラクターと、プロジェクトでコラボした店舗とのLINEスタンプ。実際に販売をしている。
 
 
↑桑都プロジェクト公式Instagramより

 

3人の目から見た大学の魅力

中村さん 挑戦したいという気持ちや思いがある学生には、先生方から「こんなことをしてみたら」と提案してくださいますし、サポートしてくださることが多いと感じています。学生の自主性を重んじて、挑戦したい思いは行動に移すことができる。そんな大学ですね。

佐々木さん 私自身は、西川先生のゼミ生ではありませんが、ライター活動も先生とのつながりから始まりました。西川先生に限らず、先生方は学生の意見を踏まえて、後押ししてくれ、さらに地域に還元していこうという思いを持っているなと感じました。

橋山さん 今回のプロジェクトでは、地域の方々が私たちを受け入れてくださいました。それは、私たちのプロジェクトの前にも、先輩方が地域で活動していたという土台があったからこそだと思います。学内で学ぶだけではなく、地域に出て活動したいと思っている人には魅力だと思います。

★次回のオープンキャンパスは7月30日(土)、31(日)、8月21日(日)。詳細はこちらから!

 

提供:創価大学