応募総数14,548作品が寄せられた國學院大學・高校生新聞社主催『第24回全国高校生創作コンテスト』。各賞ならびに学校賞が決定しました!応募数の詳細と各賞の結果は以下の通りです。                        ※ 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、表彰式は中止としました。

【応募総数】
14,548作品
・短篇小説の部:610作品 
・現代詩の部   :741作品
・短歌の部      :4,919作品
・俳句の部      :8,278作品

団体賞

【文部科学大臣賞】
埼玉・星野高校
【特別学校賞】 
茨城・結城第二高校  /  静岡・浜名高校
 
 

 短篇小説の部

【最優秀賞】
  「星空色の序章」 田中 望結 (埼玉・星野高校2年)
   ★作品はこちら★
 
【優秀賞】
  「桜彼岸」 一丸 日向子 (埼玉・浦和第一女子高校3年)
  「文通」 池田 愛生子 (千葉・二松學舍大学附属柏高校2年)
 
【佳作】
  「旅行」 磯部 美咲 (埼玉・星野高校3年)
  「さいごの日」 青山 琴和 (大阪・四天王寺高校2年)
  「月の裏に住む鯨」 須藤 春花 (千葉・大原高校2年)
  「ユウジンクラゲ」 田口 綾乃 (岐阜・恵那高校2年)
  「七つで一つ」 武藤 花依 (福岡・筑紫女学園高校2年)
 
【入選】
  「夕暮れの匂い」 福田 音愛 (福岡・北筑高校2年)
  「彷徨うリリー」 井上 瑞菜 (広島・呉三津田高校1年)
  「仔猫」 登 裕太郎 (東京・文化学園大学杉並高校3年)
  「蟻の責任。」 平井 華乃果 (岡山・津山工業高等専門学校1年)
  「海ガメ」 安曇 灯里 (北海道・帯広北高校2年)
  「山の哀歌」 山城 昌怜 (沖縄・那覇高校2年)
  「飛ぶか飛ばないか」 近藤 寧音 (海外・ポートランド日本人学校2年)
  「真紅」 川口 亮 (東京・麻布高校2年)
  「雪中紅梅」 高野 知宙 (東京・渋谷教育学園渋谷高校1年)
  「ある夏の日に」 山口 朋晃 (福岡・筑紫丘高校1年)
 

 現代詩の部

【最優秀賞】
  「尋常の季節」 熊谷 滋 (埼玉・大宮高校1年)
   ★作品はこちら★
 
【優秀賞】
  「あの瞬間の、藍。」 飯野 理奈子 (山梨・甲府第一高校3年)
  「ある夏にこころの観察」 岡田 奈美
  (東京・東京大学教育学部附属中等教育学校5年)
 
【佳作】
  「燭光」 中園 光 (東京・渋谷教育学園渋谷高校3年)
  「世紀末と糸電話」 小島 若菜 (神奈川・相模向陽館高校1年)
  「髪素麺」 増田 涼子 (大阪・北野高校1年)
  「火花と水風船」 今村 瞳子 (神奈川・湘南白百合学園高校2年)
  「dream」 草加 修宏 (岡山・津山工業高等専門学校3年)
 
【入選】
  「不定積分」 藤田 凜々子 (神奈川・平塚中等教育学校中高一貫 6年)
  「可愛いはつくれる、ただし」 菅野 夢夏 (青森・弘前中央高校3年)
  「うらやましい」 加藤 遥香 (北海道・富良野緑峰高校3年)
  「星空」 河端 琉夏 (神奈川・川崎高校3年)
  「貯金」 田野 美珠稀 (神奈川・川崎高校1年)
  「ゆれる悪夢」 杉野 迅 (岡山・津山工業高等専門学校1年)
  「子供」 渡邊 陽基 (茨城・土浦第一高校3年)
  「四日目」 香山 華奈 (鹿児島・鹿児島第一高校2年)
  「私の幸せ」 柴崎 萌加 (兵庫・西宮高校1年)
  「浴槽」 姉帯 凜音 (岩手・福岡高校3年)
 

 短歌の部

【最優秀賞】
副島 亜海 (福岡・西日本短期大学附属高校2年)
 残されし祖父の畑を守り抜く朝風の中鍬を打つ祖母
 
【優秀賞】 
  「古池や蛙飛びこむ暇もなく取り壊してはマンションが立つ」
   浦部 貴裕 (東京・大泉高校1年)
 
  「さやさやと風に吹かれて君思う色に染まらぬ百日紅かな」
   山野辺 幸太 (福島・白河高校3年)
 
【佳作】
  「落ちてゆく夕日の影を嘆くよりこれから昇る朝日の光」
   山田 実希 (東京・田園調布学園高等部1年)
 
  「雨に濡れ平和を願う祈念像あの日と同じ空を指さす」
   馬屋原 朋季 (岡山・井原高校 南校地3年)
 
  「無軌道な楕円のボール捉えんと君は身を投ぐ堅き大地へ」
   細川 依蕗 (富山・高岡第一高校3年)
 
  「観客のいない舞台を棺桶に最後の夏を静かに看取る」
   島袋 乃碧 (沖縄・昭和薬科大学附属高校3年)
 
  「ミサイルの空を来たのか夕燕このただならぬコロナ禍の世に」
   吉井 文哉 (茨城・結城第二高校3年)
 
【入選】
  「雨の中同じ傘入る友の君僕の想いに気づかず帰る」
   須田 友雅 (東京・大泉高校1年)
 
  「道端に幾度も生える雑草の根気強さにはげまされたり」
   吉原 青空 (石川・寺井高校2年)
 
  「携帯をスクロールするだけの日々どれだけのもの得られるだろう」
   河合 美琴 (東京・学習院女子高等科3年)
 
  「知っている父が一人でつらいこと知ってるからこそ笑っていたい」
   岩崎 将英 (千葉・拓殖大学紅陵高校2年)
 
  「檻の中徐々に流れる睡眠ガス捨てられた意味も分からないまま」
  (捨てられた犬)
   山本 夕愛 (岐阜・恵那高校2年)
 
  「コギトエルゴスム疑いないものはあなたが好きこの気持ちだけです」
   村岡 花乃 (群馬・太田女子高校3年)
 
  「生意気でバカで気分屋で世間知らずでそんなおまえがほっとけなくて」
   中屋 朝陽 (石川・金沢泉丘高校1年)
 
  「車座になってランチを広げれば結城筑波は万葉の山」
   神原 彩那 (茨城・結城第二高校3年)
 
  「母の墓何度も洗ふ父の背の少し小さく夕暮れてゆく」
   植松 幹太 (福岡・西日本短期大学附属高校1年)
 

 俳句の部

【最優秀賞】
濵口 美咲 (山口・熊毛南高校2年)
 鈴虫や畳の上の回覧板
 
【優秀賞】
  「東へと翅一枚の蜂が這う」 鈴木 瑠華 (静岡・浜名高校3年)
  「さよならは詩語に成り果て冬木立」 勝井 七海 (三重・津高校3年)
 
【佳作】
  「夜濯のマスク干しつつ星仰ぐ」
   横溝 麻志穂 (宮城・聖ウルスラ学院英智高校1年)
 
  「本塗りの朱色のごとくトマト熟る」
   山本 理恵 (北海道・北星学園女子高校2年)
 
  「原爆の日や青空に殴らるる」 田中 望結 (埼玉・星野高校2年)
 
  「立春の静寂を吸い弓を引く」
   永松 優花 (福岡・西日本短期大学附属高校1年)
 
  「祖母はまた徘徊をして緑蔭へ」 鈴木 萌晏 (岩手・水沢高校3年)
 
【入選】
  「木登りの猿を見かけて風薫る」
   松田 星音 (埼玉・特別支援学校坂戸ろう学園1年)
 
  「蝉時雨眠れる人の喉を見る」 織田 桃果 (滋賀・東大津高校2年)
  「組紐を編みて蛙の目借時」 小久保 羽琉 (埼玉・星野高校3年)
  「若葉風休校校舎からチャイム」 粂内 大知 (三重・四日市南高校2年)
  「息切れの足をくぐりて青蜥蜴」 弘平谷 空 (東京・広尾学園高校2年)
  「朝蝉の祈り白亜の天主堂」 遠山 寧々 (静岡・浜名高校3年)
  「うららかや兄弟の手に塩むすび」 遠山 琴々乃 (静岡・浜名高校1年)
  「教会の庭にあさがほ満ちてをり」 武 元気 (群馬・高崎高校2年)
  「今日も空手明日も空手青嵐」 高島 光希 (茨城・結城第二高校3年)
  「晩夏光バッターボックスのへこみかな」
   多良 泰我 (福岡・西日本短期大学附属高校1年)
 
 

短篇小説の部 最優秀賞作品 

星空色の序章
「星空は何色か、考えたことはあるか?」
 隣でそう零した彼の声の響きは、気まぐれな口笛の一節か、もしくはのどかなあくびの音階にも似ていた。下校中の寄り道の先で、高校生が口にするには奇抜な発言だったけれど、彼はそんな浮世離れした言葉が似あう人でもあった。
「無いかな。生憎クイズは苦手なんだ」
 彼と目線があうように、僕は通学鞄を脇に置いてから、彼の隣に腰をおろして空を仰いだ。まだ星空と言えるほど暗くもなかったし、街灯が光の主張を繰り返すから星はみつけられなかった。
「これはクイズじゃない。比喩みたいなもので、どちらかというと心理テストに似てる」
 星空の色を想像する。深い藍か群青に、白、赤、あるいは青白い光が控えめに明滅する。光る砂をぶちまけたようでもあるし、ビーズを星座の形に縫いつけたようでもある。でもそれをうまく表現する言葉は僕の中の辞書にはなかった。
「うまく表現できない。群青色に、白や黄色かな」
「そう、だいたいの人がそう答える。黒にキラキラなんて表現する人もいる」
 静かに相槌をうち、彼の次の言葉が紡がれるのを待った。沈黙は肯定、という風潮がありがたい。
「星には白のほかに、赤い星や青白い星があることは知ってるだろう?」
 もういちど首肯する。小中学校の理科で習う話だ。星の色は表面温度によって変わる。
「でも、幼児が真っ黒に塗りつぶした紙に赤い斑点を描いていたら、もしかしたら親は止めるかもしれない。それが、当たり前に宇宙にある、正しい星空だったとしても」
「つまり、正解がない問い、ということかな」
 数秒の間、彼は黙った。首をどちらに動かすべきか迷っているようだった。
「少し違う、ほんのニュアンス分だけ」
「なら、これはなんの話だろう」
「題名をつけるとすれば、星空は星空色でいい、そういう話だ」
 星空は星空色、と反芻した。詩的な響きだ。でも、いささか意味がなさすぎるようにも聞こえた。
「当たり前にも思えるね」
「それは、君の視野が広いからだよ。誰もがそれを当然だと思えるわけじゃない」
 もう一度空を見上げた。公園の、背の高い木々に切り取られた空はその透明度をあげ、薄い紫色に藍色がさしていた。
「水は水色で桜が桜色ならば、星空が星空色だというのは当たり前だけれど、その当たり前をおかしいという人がたくさんいる。たとえば、もし今俺たちの会話を聴いている人がいたとして、君のことをだいたいの人が男性だと思うだろうね」
「僕は男だよ」
「そうだけど、そうじゃない。君が男であることと、君を男だと決めつけることは全くの別物だ」
「それはそうだね」
「なんだって、型にはめるのはよくないんだよ。星空にはたくさんの色を持つ星があり、空の色すら移り変わる。ただの夜空とも少し違う。それをそのまま受け入れるためには、星空色という概念が必要なんだ。昔からある既存の色を組み合わせるのは簡単だけれど、それはあくまでも色の集合体であって、その色ではない」
「それがわからない人が、たくさんいるということかな」
「そういうことだ」
 彼は穏当な言葉を探して、それを丁寧に磨いて使っているような印象を受けた。言の葉を扱うのは難しい。これが花であれば、人が触れる場所から丁寧に棘を取り除いて花束をつくれるけれど、実体のない言葉はそうはいかない。差別や誤解を防ぐために、彼は慎重に言葉を使う。それはきっと、少なからず彼の過去が関係しているのだろうけれど、そんなの誰だって変わらない。今の人物像をつくるという点においては、誰の過去でも平等だ。
 だから僕は、いつも彼に深くは干渉しない。
 でも今日は、少しばかり彼のことを知りたかった。彼が纏う空気が、いつもと違ったからかもしれない。それは微妙な変化だった。たった一度ピアノの白鍵と黒鍵を弾き違えたような、肌で感じる種類の違いだった。
「もしかして、怒ってる?」
「君は、俺が怒ってるように見えるのか?」
 そう尋ね返され、僕は数瞬言葉に詰まった。
「見える」わけではなかったのだ。彼は感情を隠すのが上手だった。
「いや、しいて言うなら怒ってるように『聞こえる』」
「そうか」
 その声音に、驚きが混じった。
「君、よく生きづらさを感じるだろう?」
「よくわかったね」
「優しい人は生きづらいからね。気づかなくていいことに気づくのはときに短所にもなる」
「僕は優しくないと思うよ。ただの普通の高校生だ」
「今まで、俺なんかにここまで『普通』に接してくれた人はいない」
 その言葉に、僕は眉を顰めた。
「……つまり」
 彼の横顔を見やった。端正な顔つきだ。ひとつ欠点があるとすれば、人間味がないことくらいだ。その怖いくらいの顔つきに、僕はしばしば無責任な憤りを感じる。
「君は自分のことを『既存の色を組み合わせた』存在だと思っているわけだね」
 彼が僕の方を見た。その顔に、ばつの悪そうな表情が浮かんだ。まるで、涙が結晶化したような表情だと感じた。いびつな顔なのにひどく自然だ。一度皺がついたら直らない折れ曲がった画用紙みたいに。今まで、何度こんな顔をしたら顔の歪みが癖になるのだろうか?
「もしかして、怒ってる?」
「ああ、それなりに怒ってる」
「悪かった」
「わかってくれればいい」
 空は群青色に染まりつつあった。おとなしい一番星が、ひそやかに夜を告げていた。
「そろそろ帰ろうか」
 そう、隣に座っていた彼が吐いた声を合図に、僕は立ち上がって砂をはたいた。それから、先に公園の出口に向かっていた彼を追いかける。
「おいてけぼりはひどいな」
 冗談めかしてそう言って、僕は彼の車椅子を押した。前から軽めのためいきが聞こえて、四五度くらい彼がこちらを振り返る。
「毎日介抱めいたことはしなくていいんだよ」
「君がこれを親切心だと思っているなら、君は少し優しすぎるかもしれない」
「じゃあ、君はどうして毎日俺の車椅子を押してくれるんだ?」
 公園から出たタイミングで、僕はほんの少し彼に顔を寄せ、微笑みながら言った。
「僕はいつも、こうやって君に少しだけ体重を預けてるんだ。だから、これは友達同士で手を繋いでいるようなものなんだよ」
 しばらく、彼は返事をしなかった。
「そうか」
 ぽつりとそう言っただけで、そのひとことは流れ星のように一瞬で透き通った空気に溶けた。
「そうだよ」
 さっきの、彼の話を要約しようと思えば、きっとひとことでこと足りるだろう。世間への恨み言一節で、彼の怒っていた理由も、僕が怒った理由も、星空の色もすべてきっちり明るみに出るだろう。でも、星空の話をしたこと自体が彼の誠実で臆病な優しさなのだとしたら、この話は彼が語った瞬間に、真理以上の価値を帯びる。
 だから、完結しないこの話はこれでいい。ピリオドはうたれなくても、これは星空色の序章でいい。僕が「優しい」と形容されない日が来たとき、もしかしたら星空色という概念がはじめて世界に浸透するのかもしれない。
 それと同じ意味で、この星空にはまだ夜明けは来ない。

 

現代詩の部 最優秀賞作品 

【尋常の季節】

夏休みが来ましたね、って、魚に言われないとわたしは気づけなかった
二時間ちょっと勉強をして、ひたすらに偉くなったわたしは
ときどき川をおよぐ、およいだあとは決まって片腕をパンくずのようにちぎっては
それに唐辛子をまぜて魚たちの泣き顔をさそうのですが(これって恋でしょうか!)
わたしってまだ右脳派で、辞書にはなにも文字が書き込まれていません

(蝉、じりじりと、言うね うるさいね。光って暑くって体が変形してゆくゆく抜け殻のように
なって、うん それがほんとうのわたしだったんだよってかさばる言い訳、が
かってに足を生やして川を下っていった蝉がうるさい、季節は科学で誤魔化すことが可能な世界です)

川をおよぐと、昔好きだった人に、会うね (唐辛子がもうない)アイス をとりだして
お前も、けっきょくはこれだろうそうだ、ろうアイスを とかしたい のだろう と吐き捨て魚を愛でる
海馬のうえにまたがり、はしってゆくひとかげ、
あのころからずっとかわらない死体がわたしのからだにはぽつんとうかんでいて
70%のえきたいを湛えていますが それは命の証明ではなく まだ
さみしそうで こちらもかなしく

 あの、
わたしは愛せますよ
あいせ、愛せま、愛せまメン ヘラメンヘラですがヘラってますが人並みに
他人を愛する能力があ、
あるのですよ(おまえにはないのだろうけど)
あるのですよ(おまえにはないのだろうけど)

叫ぶと、騒音だと、もうすでに録音はしてあると、警察に突き出してここ
から追い出してやるぞと隣人に怒鳴られ、わたしはその意見をもっともだと思いました
とくに平日の昼間の音がうるさいそうで、
わたしはそのために学校を休み、音の出ないようずっとこの部屋を監視していた
隣の家の人のことを思うととちゅう怖くて怖くて泣いてしまって、
そのためにこんどは水漏れがひどいと下の階から苦情がきて、わたしはまた監視を強化する

   ことば
畳の上で這いまわっていて、肌が赤くなっていく(恋でしょうか!)わたしは
意外と敏感肌で、アレルギーもあるのでかみさまには向いていない体質です
ことばを吐き出そうとすると(扇風機から出るくしゃみのように!)喉で過剰な拒絶が起きるので
3歳の時から、殴ることでしか人を傷つけられなかった
処女のままこどもうみたいな♪
わたし、れんあいが嫌だから処女のままこどもを産みたいんだけど、むりだよって わたし

たすけてください、どなたか
(あいさないでいいのでなつやすみのばしてください)
のばしてください、どなたか

あー、話が長い女って、嫌ですか……(そのうえちみどろなんです)

 

ご応募をいただき誠にありがとうございました。             本コンテストは来年も実施予定です。詳細は2021年4月以降に発表いたします。