新型コロナウイルスの感染拡大により、以前よりも体温を測る機会が増えた人は多いのではないだろうか。体温が1℃下がると免疫力は30%下がると言われている。では、なぜ免疫力と体温は関係しているのだろうか。東京情報大学 看護学部の宮野公恵助教に、免疫力を高める方法を教えてもらった。

免疫力と身体の反応

「免疫力と体温の関係。重要な役割を担っているのは白血球です」と話す東京情報大学 看護学部の宮野公恵助教。白血球はリンパ球と顆粒球、単球(マクロファージ)に分かれ、血液を介して体内をパトロールし、細菌やウィルスなどを撃退する。体温が高い方が白血球は活動しやすい。風邪をひいたときに出る熱も同様で、ウィルスの侵入を察知した身体が内因性発熱物質を出して体温を上昇させ、白血球が働きやすくしている。また、風邪ウイルスの増殖も体温が上がることで抑制することができる。そのため、熱が出たからと解熱剤でむやみに熱を下げることは必ずしもよいとは言えないのだ。咳や痰なども、白血球が貪食した異物を排出するため。「そう考えると、病気の全ての症状は身を守ろうとする反応とも言えますよね」と宮野先生は話す。

自然治癒力を高めるには? 

「本来、人間には自分で自分の身体を治す『自然治癒力』が備わっています。身体からの生体反応(情報)を的確に受け止め、人間の持つ自然治癒力を高めるように生活を整えることが看護の基本です。つまり、自然治癒力を高めるために生活を整えることこそ、私たち一人ひとりが、自分の健康のために実践できることなのです」と宮野先生。

では、自然治癒力を高めるにはどのように生活を整えていけばよいのだろうか。白血球のバランスは自律神経と連動している。自律神経のうち、交感神経は活動時や緊張、興奮時に働き、副交感神経は身体を休めてリラックスしたときに優位となる。これらのバランスが取れている状態が、免疫機能が働きやすい状態だと考えられる。しかし自律神経
は、自分の意思ではコントロールできない。

「バランスをとるためには、ストレスをため込まず、適度な運動とバランスの取れた食事、睡眠をとること」。これが「生活を整えること」であり、自然治癒力に繋がるのだという。

 

 

体温は簡単に状態を推し量る情報

白血球のバランスは採血検査をすればわかるのだが、時間もお金もかかり、痛い思いまでしなくてはいけない。「そう考えると体温は簡単に自律神経の状態を推し量ることができる情報と言えます。まずは、自分の体温を測定してみましょう。理想の体温は36℃台後半とされますが、それ以下の人も多いのではないでしょうか」と宮野先生。体温は年齢を経るに従って下がる傾向にあり、また最近では若い人でもエアコンの完備や無理なダイエットなどで低い人がいる。

自分の生活を振り返り、仕事や人間関係などで過剰なストレスはないかを考えて、あまり頑張り過ぎないようにすること。そして、「筋肉を増やすための適度な運動」「栄養バランスの良い食事」「質の良い睡眠、休息」を生活に取り入れていくことが大切だ。

特に昨今、注目されているのが筋肉である。筋肉は体内で最も熱生産が行われる器官なので、体温を上げるためには筋肉を増やすことが効果的だ。筋肉は一朝一夕には増やすことが難しいので、まずは体温を上げるために、入浴や常温以上の飲み物を飲む、湯たんぽで身体を温めるといった外から熱を補う方法を活用することも効果的である。

平常時の体温をはじめ、指先が冷たくないか、顔色が青白くないか、呼吸が浅くなってないか…etc、自律神経が示す情報を大切にすること。「身体はたくさんの情報を発信しています。それらをしっかりキャッチして、自然に働きやすい状態に生活を整えることで、免疫力アップに繋げていきましょう」。

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